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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第八章 俺様、勇者と対立する
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 怪我を負って倒れるルシアちゃん。そういや今までルシアちゃんが自分を治療しているところを見なかったんだが、自分に回復魔法をかけられるのだろうか? すぐにでも駆け付けたいが、それを阻むのは蛇みたいな細長い体躯に手足が生えた巨大な二頭の竜。

 隷属の首輪で南海に操られているらしいその竜は、本来の大人しい性格とは反対に俺達に牙を向けている。

 暗黒破壊神の欠片を取り込み切れていないという鑑定結果が示す通り、その体躯は所々に青銀色のメッシュを入れたかのような斑模様になっている。


「風よ、吹き荒れろ。鋭い刃となりて我が敵を切り刻め!」


 蛇の尾につけられた隷属の首輪を外すには、所有者である南海を倒さなければならない。どうしたものかと悩んでいるとふいに後ろからそんな大声が聞こえ、ゴウ、と風が蛇に向かって集まり小さな竜巻が蛇を包み込んだ。

 そして、見えない刃に切り裂かれて蛇の血が噴きあがり、花びらのように風に舞って上へ上へと舞い上がっていく。

 こんなことができるのは……。


「すまない、リージェ。油断したわけじゃないんだが」

『やっぱりベルナルド先生だったか』


 勇者を除けば攻撃魔法を使えるのは先生くらいなものだ。そして、現在残っている勇者は本庄以外剣士で魔法を使わない。

 ベルナルド先生のレベルは高いが無詠唱では攻撃魔法を練るのが難しいらしく、俺達を追いかける蛇を止めることができなかったそうだ。

 竜巻の中でのたうち回る蛇から意識を逸らさずに先生は言う。


「もう少しだけなら押さえておける。今のうちにルシア様とドナート達を頼む」

『わかった』


 鑑定で蛇を見た時、そのステータスは意外と低かった。暗黒破壊神の欠片をわずかでも取り込んでいるにも関わらずだ。そもそものステータスが相当低いのだろう。

 そんな蛇達は体を切り刻んでくる風の檻から抜け出そうと身体を打ち付けてはまた傷を増やしていく。あれならば確かに任せてしまって大丈夫だろう。


「反転せよ」


 ルシアちゃんはやはり自分を回復することはできないのか、倒れて意識が朦朧としている様子だった。慌てて回復させると、一瞬光に包まれたような感じがした後意識を取り戻した。


「リージェ様……申し訳ありません」

『気にするな。それより、ドナート達を』

「は、はい」


 とは言ったものの、視界に入る範囲にはいない。どっちにいったものか。

 ここを離れるべきか、ベルナルド先生の手助けをするべきか迷う。


『先生、そいつらはまだ欠片を取り込み切っていない。隷属の首輪によって操られているだけだ』

「だが、モンスターだ。人間相手と違って、助ける道理はない。早くドナート達を」


 ベルナルド先生の言うことももっともだ。何で俺助けようなんて思ったんだろ? やっぱり竜仲間だから?

 ベルナルド先生は蛇を押さえるので手いっぱいで次の魔法を練る余裕はないみたいで、早くドナート達を回復させて加勢に来させろと言う。


「話は聞かせてもらった!」

『な、何だ?! 誰だ!』

「俺だ!」

『だから誰だ! いや、今はそんな問答している場合じゃない!』


 ドナート達を探そう、とした時、突然そんな声が聞こえた。誰何すると地面からにゅっときのこが生えてくる。だから、どこから出てくるんだよ!

 1号は本庄といたから除くとして、何号なのか全く見分けがつかない。お前らたくさんいすぎるんだよ。


「だから4号だって! あぁ、そうだった。南海は1号が何とかする。ドナートの所へ案内するからついてこい」

「こっちだよー」

「こっちー」

「こっちこっちー」


 ついてこい、と4号が言った途端、点々と等間隔できのこが地面から生えてきて道しるべを創り出す。

 喋るきのこの道なんて字面だけならファンシーだが、手足顔がついて一緒になって走ってる光景はちょっとしたホラーだ。



 そして、そんなきのこの道を走り抜けた先、外堀に一番近い畑でドナート達が倒れていた。

 その周囲では庇われたらしい幼女達が地面にへたり込んで泣き崩れていた。


「リージェ様、ここは私が」


 俺はまだ戦う余力を残すべきだとルシアちゃんが治療を始めたので、俺は泣き崩れる幼女達を慰めながら話を聞く。

 混乱する幼女達が言うには、村の中を案内していたら突然襲われたのだという。あいつらがどこから入ってきたのかはわからないそうだ。

 問答無用で小さい子から狙われ、それを庇ってほぼ無抵抗の状態でやられたのだという。


「ありがとうございます、ルシア様」

「助かったぜ」


 ルシアちゃんに回復してもらったドナート達が少しだけふらつきながら立ち上がる。

 俺の反転と違って、流れた血までは戻らないようだ。まだ若干青白い顔をしている。


『ん? 貴様ら、武器はどうした? チェーザーレの盾も』


 きのこが作った安全地帯ということもあり、服装こそ胸当てなどを外した楽な物だったが、武器だけは持っていたはずだ。それが見当たらない。


「あぁ、それなら」

「捨てさせられてな、水の底だ」


 すぐにでもベルナルド先生の援護に駆け付けたいが、無手のまま行かせるわけにもいかない。

 捨てさせられたという堀を覗き込むが、暗くてよく見えない。満月だけが水面に映り輝いていた。


「水よ、俺様に従え。其の内に呑み込みし異物を全て俺様に献上せよ」


 ここはやっぱり魔法の出番でしょ!

 堀をなみなみと満たす水に腕をつき出して水魔法スキルを発動。すると、生き物のようにせり上がり、奔流のように溢れる。その勢いに転び流されたところをエミーリオにキャッチしてもらった。ちぇ、ルシアちゃんにカッコイイところ見せようとしたのに。カッコ悪い……。


『まぁ、それはともかく。狙い通り! 出たな、皆の武器……と、骨……?』


 いやいやいや、あれはきっと月の光が反射して白っぽく見えるだけのただの木の枝! こびりついている何かなんてきっと気のせい。葉っぱとかヘドロとかに違いない!


「ちゃんとモンスター避けになっているんですねぇ」

「白骨化してるわりに水は綺麗だったし、何か棲んでいるのかね?」


 ちょ、やめてエミーリオ、ドナート! 俺あそこの水飲んじゃたんだから!

 耳を塞いで聞こえないふり見ないふり。さぁ、武器も取り返したし反撃開始だ!!

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