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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第八章 俺様、勇者と対立する
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 この村を最初に見た時にここは天国か、と叫んでいた宮本はこちらが説得するまでもなく残ることを選択した。きのこでは教えてやることのできない狩りなんかを中心に面倒を見てやりたいのだそうだ。

 ある程度技術をあの子らが身につければ日本に帰ることも了承するだろう。


「宮本、急にどうしたんだ?」

「だって、こんな可愛い子が野菜ばっかりってかわいそうじゃねぇか。こんなガリガリでよ。俺が明日から美味い肉いっぱい獲ってきてやるからな!」


 1号のツッコミに、宮本が幼女達に良い笑顔を向ける。

 いきなりキャラが変わって爽やかスポーツマン風になった宮本の堂々としたロリコン発言に、小島が微妙な顔をしている。1号相手なら遠慮なく虫けらを見るような目を向けられるけど、宮本相手じゃね。犯罪って言うほど年齢も離れてないしね。


「じゃあ、俺も残るよ。この子が妹にそっくりなんだ。宮本一人じゃ手を出さないか不安だ」

「ちょ、谷岡さん?!」

「なるほど、谷岡はシスコンと」


 食事担当だった一番小さい子の頭に手を置いて残る宣言をする谷岡。そんな谷岡に要らん一言を放った1号が部屋の反対側に吹っ飛んでいった。まぁ、3秒後には戻ってきているのだが。

 頭を撫でられたちみっこは嬉しそうにはにかんでいて、なかなか可愛らしい。その笑顔に宮本が対抗心を顕わに乱雑に撫で回して嫌がられていた。

 逃げられて項垂れている宮本をスルーして本田が口を開く。


「俺は断固アルベルトさん達について行く」

「ダメよ! 最初から、ここで待機って話だったじゃない」


 本田はまだ冒険者として世界を回りたいらしい。止めようとする小島と揉め始める。

 と、その時、外で何か爆発するような音がして、続いて家が大きく揺れた。

 壁の丸太が砕けて室内に飛び込む。大小の破片が丸太と共に顔面に迫る。

 あ、これヤバイ。


「浮かべ」


 咄嗟に目を瞑ったが、いくら待ってみても衝撃は襲ってこない。

 恐る恐る目を開けると、無数の木片が宙に浮かんで止まっていた。

 木片に向けて手を翳すようにした本庄がヒラリ、とその手を回すと、一瞬で木片は消えてなくなった。そういや、本庄は重力操作スキルも持っていたな。スキルで木片を止めてインベントリに回収したってことか?


「大丈夫?」


 何ともなかったかのような本庄の声に、止まっていた時が動き出す。

 辺りを見回すと、宮本と谷岡がそれぞれ傍にいた幼女に覆いかぶさるように庇っていて、アルベルトがルシアちゃんを抱きかかえている。本田でさえ小島を庇っていた。

 え? 俺? 俺は勿論、ルシアちゃんに抱きしめられてたよ。くそ。早くアルベルトのようにルシアちゃんを庇えるようになりたいぜ。


「きゃっ! ちょ、ちょっと! いきなり何なのよ!」

「あぁ? 庇ってやったってのに、可愛げのない女だな!」

「はぁ、ビビったぁ。一体、何が起きたんだ?」


 顔を赤らめ合い場違いなピンクの空気を飛ばす二人をよそに、1号が暢気な声と共に床の隙間からにゅぅっと出てくる。正直木片が飛んできた時よりビビったわ! どんな隠れ方してるんだ貴様は!

 1号の言葉に答えるように、壊した壁から犯人が乗り込んできた。


「あら、この程度で倒せるとは思ってなかったけど、傷一つ負わせられていないなんて。私もまだまだね」


 スラリと伸びる細い足が壁の穴から音もなく入り、続いて黒いローブに身を包んだ体が穴から入ってくる。

 声の高さからして女性だ。背は小島より少し低く、ルシアちゃんと同じくらい。子供、か?

 その顔はローブについているフードで覆い隠され、背の低さもあって見ることはできない。


「誰だ!?」

「あら、酷い。私のこと、忘れちゃったの?」


 谷岡が幼女を庇いながら誰何すると、笑いを含んだような声で谷岡を詰りながら声の主がフードを取った。


「!」

「天笠?!」

「遙ちゃん!? な、何で?!」

「さっきの台詞……お前が俺達を襲ったってことか?」


 顕わになった顔に、谷岡と小島が驚き、本田が庇うように小島の前に出て問い質す。

 天笠……確か昨夜聞いたまだ居場所がわからない4人のうちの一人、だったな。

 名前を呼ばれた天笠は満足気ににんまりと嗤うと、感情の読めない声で答えた。


「そうよぉ。こっちも驚いたわ。いと慈悲深きアミール様を手にかけようとしている輩の仲間がここに集結していると言われて来てみたら、まさかあなた達だったとはね」

「アミール様?」

「誰だそれ?」

「何の話?」


 話が見えないと首を傾げていると、天笠の胸元から軽快な音楽が聞こえた。

 その音に、何かの術か、とアルベルトが剣を抜き、エミーリオ達も警戒をしつつ幼女達を後ろに庇う。

 天笠はちょっと失礼、とローブの胸元に手を入れる。そして取り出された聞き覚えのある音楽を鳴らすものは、どう見てもスマホだった。


「もしもし? 今忙しいんだけど。……そうよ。……全員無傷。そっちは? ……そう。じゃあ、先にこっちを手伝ってくれない?」


 急いでね、と電話を切ると、天笠は顔を歪めた。

 何故電話が通じるのか、とか、電話の相手は誰なのか、とか、何故俺達を狙うのか、とか。聞きたいことはたくさんある。

 が、俺が口を開く前に天笠の方が俺達に向き直って口を開いた。


「ねぇ、本当はあなた達を殺したくはないの。私達と来ない? あなた達、きっと騙されて利用されているのよ。アミール様は素晴らしい方だわ」

「ねぇ、遙ちゃん、さっきから一体何を言っているの? アミール様って誰?」

「とぼけないで!」


 小島の呼びかけに苛ついたように大声を上げる天笠。

 どうにもさっきから話が噛み合わない。俺達がそのアミール様を手にかけようとしていると何らかの確信をもって言っているようだが……。


『女、もしかしなくても、アミールとかいうのは暗黒破壊神を名乗る不届き者か?』


 俺の言葉に、それまでは微笑とも困惑とも取れる表情を浮かべていた天笠が怒りを爆発させた。

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