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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第八章 俺様、勇者と対立する
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11

 アスーの勇者達はもう他のメンバーをレベルだけで見下したりせず、俺や1号、アルベルトの指示に従うと誓った。ベルナルド先生に言われたから、って時点でまだレベル重視なのだが、まぁ良いだろう。

 実際、ノルドへの行軍を再開したが、大人しく周囲を警戒しながら進んでくれている。時折怯えたような態度で1号の視線や動きに注意を向けている気がするのは気のせいだろうか?

 暫くは様子を見つつ、好戦的な性格の彼らがストレスを溜めないよう適度にモンスター狩りに連れていった方が良いだろうか。



「リージェ、ちょっと」


 夕方になり、野営の準備を始めたところで1号に手招きをされた。

 やはり谷岡達アスーの勇者がこちらを、というより1号を見ている。そんな谷岡達に1号がチラ、と視線をやると思いっきりビクっと体を震わせていた。一体何したんだこいつ?

 1号はそのまま小島にも声をかけ、ルシアちゃんとアルベルトも呼ぶとルシアちゃんが普段使っている馬車に乗り込んだ。呼ばれた俺達も続けて乗り込むと、いきなり本題に入る。


「谷岡達に日本へ帰れることを説明しようと思っている」

「態度を改めたから、でしょうか?」


 ルシアちゃんが聞き返すと、1号はそうだ、と頷いた。


「五十嵐がいなくなったことを気にしていてな。俺が何かしたんだろうと思っている。それから、実際に手を下したとでも思っているのか、エミーリオのことも警戒しているな」

「黙っていれば、このまま大人しくしいているのでは?」


 なるほど、それで怯えたような態度だったのか。

 1号の言葉に、小島は教えたらまた助長するのではないかと心配しているようで反対だと言った。

 アルベルトは……難しい顔で黙り込んだままで何を考えているかわからないな。


「リージェは? どう思う?」

『好きにしろ。万が一暴動が起きても俺様やアルベルト達で抑えられる』

「そうか……うん、今みたく恐怖や力で押さえつけるのは簡単だ。だけど、それだと面従腹背な奴だっているだろうし、何かの拍子に足を掬われることになる」


 アルベルトは俺の言葉に同意をした。異世界云々のことは自分にはわからないから、一番わかっている奴の判断に委ねると。

 1号は小島に、何故谷岡達にきちんと説明するつもりになったのかを語り出した。


「日本では、お前達がいなくなったことで大騒ぎになっている。死者も出ている。警察は威信にかけて犯人を見つけなければいけない。たとえそれが冤罪であってもだ」

「でも、犯人も何も、異世界の召喚士や王様達なんて捕まるわけないじゃないですか」

「そう。そこで犯人に仕立てる最有力候補が俺なわけ。現場にいたのに失踪しなかった唯一人の人間としてね」

「じゃあ、先生捕まっちゃうんですか? でも、それとこれに何の関係が?」

「うん、谷岡達がこのまま事情も知らずに日本に帰ったら、どうなると思う? 警察に事情を聞かれて、思い出せる範囲で説明するだろうね。俺が彼らを監禁したと。一人ずつ殺すと脅したと」

「!」


 小島の顔色が悪くなった。ようやく事情が呑み込めたらしい。

 異世界云々なんて常識外のことはスルーされて、きのこが生徒達を監禁していたという証言だけが真実として採用される。そうなれば、きのこは立派に誘拐殺人事件の犯人だ。

 小島も頷き、彼らにはきちんと説明して、納得した上で帰ってもらうことになった。



「話し合いは終わりましたか?」

『ああ』


 皆の所に戻ると、食事を配り終えたエミーリオが俺達の分の食事を渡しながら聞いてきた。

 渡された器には醤油で煮込まれ茶色く染まった肉とジャガイモと大根が入っていた。肉は少し薄いから、干し肉を戻したんだろう。そういや、生の肉はなくなったって言ってたっけ。

 本庄がいるんだし、そろそろ狩りとかしたいなぁ。


『……美味い!』


 薄い肉と大根とジャガイモなんて、あまり食欲をそそられない見た目なのに、ジャガイモは口の中で溶け、肉もまた溶けるようにホロホロと崩れ、大根もよく味が染みている。

 醤油のしょっぱさと仄かな甘み、そして生姜のような僅かな辛さ。肉の厚みこそ違えど立派な角煮に仕上がっていた。

 思わず勢い込んで口に流し込む俺を、本庄がニコニコと笑いながら見ている。


「良かった、口に合って」

「角煮に大根とジャガイモって珍しいな」

「そう? うちも入れるよ?」


 嬉しそうな本庄に、口々に感想を言い合う子供達。

 昼間までいがみ合っていたとは思えない、賑やかな食事風景がそこにはあった。

 余った汁を固いパンに染み込ませて余すことなく食べきったところで、1号が「注目!」と大声を出し土魔法で自分の足元に小さなステージのような円柱を生み出した。地面に座る皆の視線の高さになると、全員の注意が自分に集まっていることを確認してから話し始めた。

 ……どうでも良いが1号最近自重するのやめたんかな。前はあんなに嫌がっていたのに、ここにきてスキルをばんばん使ってやがる。


「お前達に知ってほしいことがある。今、ここにいない生徒達の話だ」


 数名が周囲と顔を見合わせ始める。だが、誰も声を発したりしない。1号は大事な話をする時は全員が黙るまで話し始めないことを、これまでの学校生活で知っているからだ。

 1号は、今ここにいない五十嵐、ではなく生徒達と言った。それはつまり、オチデンやノルドで召喚された者達のことも話そうとしているのだ。

 誰かがゴクリ、と喉を鳴らした。

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