表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第八章 俺様、勇者と対立する
165/212

3

 4号が来てくれたおかげで、円満にアスーの勇者達と別行動を取ることができるようになった。

 野営をする時にも、4号が1号経由で谷岡に夜間動き回るのは危険だから今いる場所で野営をすると伝えてくれた。もう少し文句の一つや二つ言ってくるかと思いきや。先生がそう言うなら、と素直に合流しないことで納得してくれたのだそうだ。さては谷岡、優等生ってやつか?


「あぁ、谷岡君はクラス委員だったからね」

「生徒会に入るつもりだったらしいわよ」

「顔も良くて、勉強もできて、まさにエリートって感じよねぇ」

「えー? あんたああいうのがタイプなの? 私は嫌。なんて表現すればいいかわからないけど、なんか日本にいた頃から怖くなかった?」


 谷岡ってどんな奴だっけ? と誰に言うでもなく考えていると、本庄がクラス委員だと教えてくれた。それに続いて女子達がキャイキャイと情報をどんどん出してくる。

 怖い、か。確かに、にこやかにしているけれどどこか作りものというか、計算でやっている腹黒さはあるよなぁ。そもそも、本当に良い奴だったら、本庄のリストには載らんだろ。


『ところで、もうすぐ日も暮れるが、どうやって帰すんだ?』

「ん? ああ、古典的な手を使おうと思ってる。まぁ、初日ならほぼ間違いなくうまくいくだろう」


 魔法で草を刈り大地を均し、野営の準備を進めているベルナルド先生達を眺めながら、やる事のない俺は4号に尋ねる。

 本庄のヤバいやつリストは今、ルシアちゃんが持っている。まさか本人達と行動している1号に持たせるわけにもいかないしな。リストは1号も確認済みで、忘れたら4号経由で確認するんだと。

 で、そのリストによると一番手は五十嵐、次が谷岡、本田の順になっている。


『五十嵐?』

「科学部の女子だな」


 誰だっけ? と思ったらすかさず4号から説明が。

 名前を聞いただけで誰かわかるとか。


『先生みたいだな』

「先生だからね?!」


 あ、念話切ってなかった。

 今日帰すのは五十嵐という事は分かったが、どうヤバいのかとか、どうやって帰すのかとか具体的な話はまだ何も知らない。

 聞こうとした時、ルシアちゃんが呼ぶ声が耳に入ったからだ。


「リージェ様~。ごはんですよ~」

『ご飯!』

「お前なぁ……」


 4号が何か言いたげだが、美味しい食事が全てにおいて優先なのだ!

 ルシアちゃんが渡してくれたのは、野菜と揚げ鶏を薄く焼いたナンのようなパンで包んだもの。サンドイッチというよりはトルティーヤの方が近い味だろうか? パンは米粉で焼いたのだそうだ。

 素揚げの鶏皮はパリパリしているが、塩がかなりしょっぱい。野菜やパンと一緒に食べてちょうど良い感じだ。肉の方は逆にあまり味が浸透していなくて薄味になっている。

 そうか、これは本来皮と身を一緒に食べるものか。俺はついいつもの癖でパリパリの皮だけ先に食べてしまった。


『おかわり……』

「ごめんなさい、リージェ様。揚げ鶏はこれで全部なんです」

「食料も谷岡達と分配したからね」


 そうだった。くそう。

 忘れていたが、別行動を取る際に荷物を一旦全部出させられて、それで買い込んであった料理のほとんどは谷岡達が持って行ったのだった。

 ルシアちゃんが購入したものだと俺が主張したら、一応はこちらの人数分は残してくれたが。


「栗栖、足りない分はこれを」

「カツキ様、お料理がとっても上手でいらっしゃるの。私驚いてしまいましたわ」


 本庄はいつの間にかシチューを作ってくれていた。

 いつぞやのエミーリオが作ってくれたシチューが、もどきとかクラムチャウダーとかとにかく別物だと思ってしまうくらい、濃厚でこっくりしていた。


「食材だけはたっぷり置いて行ってくれたからね。あっちは料理しないつもりなのかな?」


 そうなのだ。せっかく料理ができるエミーリオをつけたというのに、奴らは荷物が増えるのが嫌だというだけの理由で食材のほとんどを置いて行ったのだ。

 エミーリオが機転を利かせて岩塩だけは持って行ったけど。あれだと苦労するだろうなぁ。

 おかげで、こちらは食材には事欠かない。料理をまともにできる人間が、と不安に思っていたが本庄が見事なシチューで払拭してくれた。

 小麦粉とジャガイモを入れたからじゅうぶん腹に溜まるだろうって。凄いなぁ。


「うーん、まぁ、留守番をすることが多くて、子守に来てくれてたお姉さんと一緒によく料理をして待ってたんだよね」

「これ本当に美味しいよ! 凄いね、本庄君」

「今度料理教えて!」


 む、本庄が女子に囲まれている。

 やはり今の時代、料理男子がモテるのか。男子たちから少し哀愁が漂い始めていたが、本庄が男子たちにも次の食事を一緒に作ろうと誘っていたので大丈夫だろう。

 殺意に近い感情を持たれない限りは、本庄は自力で人間関係を修復できるみたいだな。う、羨ましくなんかないぞ! 俺にはルシアちゃんがいるからな!



 こんな感じで賑やかに食事をしている間も、1号達の方では密かに計画が進められていた。

 そして、俺は谷岡達の方がどうなったか何一つ気にすることなく、夜は更けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ