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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第七章 俺様、南方へ行く
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 本庄が一緒に来ると言った。じゃあ早速皇帝に言って出発の準備を、と部屋を出ようとしたら尻尾を掴まれた。


「ギャッ」

「あっ、ごめん!」


 痛くはないけどびっくりして声を上げてしまったら、慌てたように謝ってくれたけど。あれ? 本庄少し震えてる?


『何を恐れている?』


 戦う必要はないと伝えた。日本に帰すとも。

 それでも部屋を出ることを戸惑うのは……皇帝、か?


「違うよ、皇帝陛下が怖いわけじゃない。……いや、ちょっとだけ怖いけど。僕が怖いのは、勇者として召喚された他のメンバーだ。僕は、人間が怖いんだよ、栗栖」

「!?」


 あれ? 今俺声に出てた? つーか俺の前世が栗栖だって言ったっけ?

 思わず1号を見ると、俺の視線に気づいた1号はブンブンと頭を横に振っている。


「栗栖は平気。ルシアさんも。言動がほとんど一致しているし、僕を騙してどうこうしようって考えてないから信じられる。でも、他のメンバーは……」

「香月、お前もしかして力が?」


 1号の言葉に本庄が頷くけど何が何やら全く分からん。

 ルシアちゃんも同じようにキョトン顔で説明を待っている。


「えっとな、気持ち悪がらないでやってくれるか? たぶんさっきのやり取りで気づいたかもしれないが、香月は人の心が読める。物に込められた想いや過去も」

『サイコメトリーってやつか』


 それが本庄の授かったスキル?


「違うよ。これは元々僕が持っていた能力。お父さんに引き取られてから消えたはずだったんだけど、こっちに来てから戻っちゃったみたい」


 おお、本当に思ったことが伝わるのか。

 MPを使ってまで会話しなくて済んで便利だ。


「……栗栖だけだよ。便利なんて言うの。普通は気持ち悪がる」

「俺や要だって気持ち悪がらなかっただろうが」

「それは楓が普通じゃないから?」

「要もか?」

「お父さんは変じゃない」

「それは俺が変だって言いたいわけ?」

「きのこになる奴のどこが変じゃないって言うのさ?」


 あ、笑った。

 日本にいた頃の穏やかな微笑みと違う、心からおかしいと思っているような笑い方。

 そうか。日本でのあれは、何らかのきっかけに能力が戻った時に拒絶されないように一定の距離を開けていたのか。必要以上に関わらないように。傷つかないように。

 俺みたいな奴に構うくらいには人が好きなくせに。それは、周囲に馴染めなかった俺以上に辛い生き方なんじゃないか?



「それで、他の勇者様が怖いと仰るのは?」

「……うん、皆、こっちに来てから変わっちゃったんだ」


 ルシアちゃんの言葉に我に返る。

 ポツリポツリと本庄が語り始めていた。

 元々アスーに召喚されたのは、クラスの中でも尖ってるような、いわゆる不良が多かったらしい。んん? いたっけ? そんなん。


「いたよ。ほら、栗栖を虐めてた奴ら」

『い、虐められてなどいない! あれは俺様があ奴らと遊んでやっていたのだ!』

「こら、話の腰を折るんじゃない。香月、続けて」


 俺を虐めていた、という発言に一瞬ルシアちゃんが凄い顔をしたような……うん、俺は何も見なかった。

 で、本庄が言うには、皆こっちに来てから妙に好戦的になり、訓練にも積極的。

 それどころか、皇帝の指示も聞かず城を抜け出してはモンスターを狩ったりしているらしい。


「そのくらいならまだ、僕もそこまで皆を避けようと思わなかったんだけどね」


 スキルを悪用してこの世界の人に暴行を加えるようになってしまったらしい。他にも盗みとか恐喝とかやりたい放題。

 当然、本人はそのことを隠しているつもりなのだが、心の読める本庄には何をしてきたかもこれから何をするつもりなのかもわかってしまったそうだ。


『ん? じゃぁ、他のメンバーのスキルとかも知ってるということか?』

「ああ。様々な薬品を創り出すとか、ある特定の条件を満たすと人を意のままに操れるとか、けっこう物騒な奴が多いよ」


 何と。

 ルシアちゃんも口元を押さえて顔を青褪めさせている。

 梅山だけでもかなりアレだったのに、更にヤバイのがいっぱいとか。

 食事の時は皆良い子を演じていたってことか。


「栗栖のそれは、竜に変身するスキル? とは違うのか」

『ああ、俺はこっちの世界に生きたまま来れなくてな。気づいたら竜に転生していた』

「そうか……」


 俺が自分の死体や他の死んだ連中の顔を思い浮かべてしまったせいか、それが伝わってしまったらしく辛そうな顔をしていた。本庄が悔やむことではないのに。

 ルシアちゃんまで申し訳なさそうな顔をしている。ルシアちゃんのせいでもないのに。


『ルシア、気にするな。俺様はルシアと出逢えて幸運だった』

「リージェ様……」


 頬を染めて嬉しそうに微笑むルシアちゃん。

 うん、可愛い。やっぱりルシアちゃんは笑顔が一番だ。


「話が逸れちゃったね。それで、訓練を拒否したり皆を止めようとしてたから、皆僕が邪魔だと思っちゃって」


 食事に毒を盛られるようになったらしい。

 器に触れればどれに毒が入っているかわかるから、それを避けて食べるようにしていたのだと。そして、皆の自分に向ける思考が禍々しくなっていくのに耐えられず、引きこもるようになったんだと。


『そういうことなら、他のメンバーとは別行動の方が良いだろう』

「そうですね。私達と常に一緒に行動しましょう」

「ありがとう」


 それでも、国を出発したらなるべく早く帰すのが良いだろう。要さんも心配しているしな。

 日本に全員帰ったら元の関係に戻れるといいのだが……その辺は、あっちにいるきのこ本体に頑張ってもらうしかないか。


『それで? 本庄がこっちに来て授かったスキルはどんなのだ?』

「ん? ああ。言ってなかったね。えっと、風魔法と、重力操作と、無限収納(インベントリ)だよ」


 ちょ、めっちゃチートじゃねぇか!

 驚く俺に引きこもってたからそんなにスキルは鍛えてないけど、と言って室内のベッドとか机とかを全部浮かしてからどこかに収納して見せた。

 空っぽになった部屋の中でポカンとする俺達。え、育ってなくてこれなの?

 やばい、便利すぎる。帰したくないんですけど!

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