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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第七章 俺様、南方へ行く
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 辿り着いた町は街と呼ぶほど大きくはないが、露店が多数出店されていたり、セントゥロ風の服装やオーリエン風の服装などいかにも雑多な国の人が集まっているという感じでなかなか賑わっている。

 だが、町を取り囲む塀に杭を括り付けて強化していたり、物見櫓が組まれたりとあちこちで物々しい武装が見られる。

 入るときに部外者に対する敵意のようなものはなかったのだが、町全体がピリピリと殺気立っているのを感じた。


「何だか落ち着かないですね」

『そうだな。早く町長とやらの所に行って、宿で休もう』

「なら、俺達は先に宿を探しておこう」

『うむ。任せた』


 実は町に入る際に俺達が勇者一行だとばれ、町長に会うよう門衛に言われていた。

 何もこんな多勢でぞろぞろ行く必要もないだろうって、アルベルトが宿の確保を申し出たので勇者達の子守も頼んだ。

 俺とルシアちゃん、エミーリオで教えられた屋敷に出向くと、どこぞの仙人かと思うような爺様がプルプルしながら若い男に手を引かれて出てきた。


「急な呼出にも関わらず、応じてくださってありがとうございます。こちらが町長のキッシュ。私は孫のユーザといいます。ほら、爺ちゃん」

「母さんや、飯はまだかいの?」

「爺ちゃん、さっき食べたじゃないか。それにこの方は母さんじゃないよ」


 大丈夫かこの町長?

 プルプルしている爺様に変わって、ユーザとやらが本題に入る。

 なんでも、最近この辺りの「死の斑」と呼ばれていた紫色の巨大なオルソが更に巨大な黒いオルソに進化したらしく、それに追われたモンスターが村の人々を脅かしているらしい。


『黒いオルソなら一昨日倒したが……?』

「本当ですか?! あ、いえ、恐らく聖竜様が倒されたのは件のオルソの子供だと思われます。件のオルソは昨日も目撃されていますから」


 特徴は、10mを超す巨体と額から生えた黒い水晶のような角。確かに俺が倒した奴とは別口だ。

 これまで村の有志や冒険者達が幾度も討伐に挑んだが、皆返討ちに遭ったらしい。


「お願いします! どうか、あの凶悪なオルソを倒してはいただけないでしょうか!?」

「おやおや、ところで、どちらさんでしたかの?」


 ガクッ。

 真剣に頭を下げる孫の横でプルプルしている爺さんに脱力してしまう。悪いこと言わないから、そろそろ代替わりした方が良いよ。



 気を取り直して。


『オルソ討伐はやっても良いが条件がある』

「リージェ様?!」


 相談することもなく快諾した俺に、ルシアちゃんが驚きの声を上げる。

 一方ユーザは、オルソ退治を快諾したことを一瞬喜びつつも、誰一人敵わないようなモンスターを退治してもらう条件は何だろうと不安に思ったのかすぐにい表情を引き締めた。


「……条件とは、何でしょうか?」

『戦いに不慣れな勇者達を宿に置いて行く。オルソ討伐の間、この町がモンスターに襲われても戦わせないでくれというのが一つ。もう一つは、野菜など生鮮食品を1日分で構わないので融通して欲しい』

「し、しかしそれでは……」


 ユーザは俺の条件に不満があるのか何か言いかけて口ごもる。

 ああ、確かに勇者なんて最大戦力がいるのに襲われた時に当てにするなっていうのはきついのか? 見たところレベルの高そうな冒険者の姿はなかったしな。

 仕方ない。少し折れるか。


『本当にモンスターが襲来するようであれば、同行しているパーティーレガメを頼ると良い』

「えっ?! あの世界最強と言われている冒険者達をですか?!」

『そうだ。彼らなら使って良い』

「あの、そうするとオルソ退治には誰が……?」

『俺が一人で行く』

「そんな! 私も行きます」


 あら。一昨日みたいな混戦だと戦いにくいから一人で行こうと思ったのに。

 連れて行ってください、と涙目で言うルシアちゃん。これは引かないな。そこにエミーリオまで自分も行くと言い張る。

 まぁ、角つきのオルソ以外がいたら任せるか。


『では、明日オルソ退治に出立する。その間勇者たちの世話を頼む』

「はい! ありがとうございます!」


 よほど困らされていたみたいで、ユーザは泣きながら何度も笑顔でお礼を言ってきた。


「ふぉっふぉっ。仲直りしたようで良かったのう。ところで、どちらさんでしたかの?」

「爺ちゃん……」


 話のかみ合わない町長に、ユーザもガックリとうなだれたのだった。

 そんなこんなで話もまとまった所で俺達は迎えに来たドナートの案内で宿へと戻った。


「それで、急ぐと言いながらオルソ討伐を受けたのは、やっぱり暗黒破壊神の欠片ですよね?」

『そうだ。黒く巨大化した体躯、額から突き出した黒い水晶のような角。実物を見て鑑定してみないことにはわからないが、可能性は高いだろう』


 食事を囲みながら、全員にユーザからの依頼について話すと、エミーリオが聞いてきた。ルシアちゃんも同意するように頷いている。その場にいながら反対しなかったのは、暗黒破壊神の欠片が関係すると察したからのようだ。

 勇者たちも宿に1日待機と言ったら工藤が一緒に行きたいと言ったけど却下した。一昨日より強敵だからね。


『その代わり、万が一にもここがモンスターに襲われるようなことがあれば、町の人を避難誘導して自分たちも安全な場所にいてくれ』

「町の人を守るのですね! わかりました!」


 やる気に溢れている分、乗せるのも簡単だった。

 町の人は勇者を心の拠り所にしているから、守ってやってくれと言ったらすっかりその気になってくれた。若干心配だが、まぁ、ついてきて無茶するよりマシだろう。


 そして翌日、俺達は最後にオルソが目撃された地点へと出発した。


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