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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第七章 俺様、南方へ行く
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10

『どちらも小さな町があるな。北の方が近いが……』

「町に立ち寄って道を聞く、か。近い方から行くか?」

「ですが、もしその先がセントゥロなら遠回りですよね?」



 先を急ぐというのが最優先だ。そう考えると、アスーに続いていると思われる西の道に進むべきか。

 西の道の先にある町は遠く、おそらく明日の夜くらいまでかかるだろう。一方、北の道は町が近く今日中に着蹴る距離だ。

 いったい何を迷っているのかというと、野営初日にモンスターに襲われたせいで、勇者達が憔悴しきっているのだ。結界があるから問題ないと言っておいたのだが、不安で眠れなかったらしい。フラフラしている奴もいるし、できれば宿で寝せてやりたい。うーん……。


『エミーリオはどう思う?』

「そうですね……やはりまっすぐにアスーに向かうのがよろしいかと。道行が遅れればそれだけ勇者様達が国元へ帰還するのが遅くなりますし」

『だそうだ。それで良いか?』


 エミーリオもアルベルトや俺が何で迷っているかすぐに気付いて、それでも先に進むべきだと提案した。

 一応勇者達の反応を見ると、渋々といった感じで頷いた。まぁ、彼らからすれば俺達についてくるしかないしな。


『まぁ、野営となっても結界をまた張る。モンスターの攻撃などびくともしないのは身を以て知っただろう? 安心して良いぞ』


 気を抜かれすぎても困るけどな。

 渋々とは言え全員の意見がまとまったので道中で1泊野営をして進むことになった。

 そして1オーラ後。日も傾き始めたところで、野営準備に取り掛かる。


『少し散歩してくる』

「あ、俺も一緒に行くよ」


 おや、珍しい。

 いつもの如く野営準備をする中、見えていた村まであとどのくらいかかるか、可能なら町の規模など様子を見てこようと声をかけるとドナートがついてくることになった。


『良いのか?』

「うん、見張りも馬の世話も食事の準備も手は足りているしね。それに……ちょっと気になることもあって」


 ふむ……?

 ドナートの足に合わせて町の視察は諦め、森の中に入る。

 ドナートは野草や木の実を集めつつ、時折幹の傷や枝の折れた灌木、踏み潰された草や動物の死骸をしげしげと眺めながら考え込んでいる。


「この辺りにも、オルソがいそうだね」


 マジか。


『またあの黒い巨熊か?』

「そこまではわからないけど……これ、たぶんオルソの糞だよ。内容物に骨の欠片が見える」


 テリトリーを示す傷もある、と幹を示す。確かに、昨日見たのと似たような傷がついていた。

 となると、また襲われる可能性があるか。

 面倒くさいなぁ、と思っている横でドナートが近くの蔓草を引っこ抜き、木の枝を括りつけるとそれをあちこちに結び始めた。


『それは何だ?』

「鳴子の仕掛けだよ。オルソは耳が良いからな。昨日のようにモンスター化していなければ音に驚いて逃げるはずだ」


 昨日と違い日が暮れるまでに若干の余裕があるから、できる範囲で予防をしておこうというのだ。


『それなら、金属のほうがより甲高い音が響き効果的ではないのか?』

「もしまたモンスター化したオルソの群れが襲ってくるようなら今朝のような出立になるだろ? そうなると回収できないからね」


 そういって黙々と蔦を張るドナート。

 腕でチョイ、と突くと木の枝がぶつかり合ってカタカタと軽い音がした。本当にこんなんで効果あるかねぇ……?

 まぁ、ローテーションで見張りもするし、昨日も何とかなったしこれが無くても大丈夫じゃないかって思ったのは黙っておく。


 その後、野営地を道と反対側を囲うように蔦を張り終えたドナートと共に戻った。

 途中で兎を2羽ほど狩って持って帰ったら、女子が可愛そうと泣いてしまった。ルシアちゃんに料理してもらったけど勇者たちが食べようとしないので全部俺達が美味しくいただいた。独り占めすんなってチェーザーレとバルドヴィーノと奪い合うように食べたのは言うまでもない。やっぱ肉うまー。


 夜中、俺とドナートが最初の見張り番を買って出た。

 すると、カラカラと例の鳴子の音が聞こえた。


「我を害さんとする者よ、姿を現せ」


 ん? これは……遠ざかっている?

 どうやら、あんなチンケな仕掛けでも効果があったようだ。


『どうやら驚いて逃げたようだな』

「そうか。まぁ、また来るかもしれないし警戒を続けてエミーリオ達にも伝えておこう」

『だが、もし来ても昨夜同様戦闘はせず出立の時に一掃するのだろう?』

「そうだけどね。知らないのと知っていて準備しておくのとでは全然違うから」


 それは確かに。

 あの仕掛けじゃ一回で簡単に切れる可能性もあるが、この暗闇じゃ確かめに行けない。ここの見張りが手薄にもなるしね。

 暗黒破壊神の力を結界で防げないとわかっている以上、勇者達には安心するよう言ったが過信するべきじゃない。見張りは必要だ。


 次の襲来では鳴子が作動しない可能性も考慮に入れて、ちょいちょい索敵もしていたが、結局その晩は何事もないまま一夜を明かした。

 うん、平和が一番だよな。拍子抜けなんて思ってない。オモッテナイヨ。

 索敵スキルのレベルが1上がったから、ある意味うまうまな一晩だった。


 そうして平和に出発した俺達は、若干視線を感じつつもやはり何事もなく村へと到着した。

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