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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第七章 俺様、南方へ行く
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4

 出発が遅くなってしまい、少し早めに馬を走らせながら進む。

 因みに現在は、最後列の荷馬車3台を後ろからチェーザーレとベルナルド先生とアルベルト、勇者の乗る馬車2台をバルトヴィーノとエミーリオ、俺とルシアちゃんの乗る馬車をドナートが御している。


 式典の時に彼らが跨っていた馬4頭は、装具を外した裸馬の状態で紐で繋がれ馬車の横を走っている。よく事故が起きないものだ。

 余分な馬は置いて行ったらどうかと提案もしたのだが、馬車を牽くのに疲れた馬と交代させられるから置いて行かないとアルベルトが言って、こういう隊列になった。


 馬車の車輪に馬を巻き込まないよう並走させるには技術がいるのだそうだ。紐が短すぎれば車輪に巻き込まれるし、紐が長すぎたりして馬が好き勝手走れば馬車の制御が利かなくなるんだと。

 今更だけど、騎乗や戦闘馬車(チャリオット)での戦闘訓練も受けているだろう騎士のエミーリオならともかく、パーティー全員が御者の技術がある冒険者って珍しいんじゃないだろうか?


「まぁ、一応これでも一流って言われてるし。相応の技術や知識は持っているつもりだよ?」


 俺の疑問に答えるのは、俺達の馬車を担当するドナート。

 ルシアちゃんの護衛であるエミーリオではなく彼が先頭馬車の御者を務めているのは、索敵能力が全員の中で抜きん出ているからだ。

 それだけでなく、地形や気候などの変化にも人一倍敏感だ。動物の足跡を数キロ追いかけられるとか言っていたほどの実力者だ。影薄いのに。


「影が薄いは余計だ」


 あら、聞こえてた。っていうか念話切るの忘れてた? 心の声丸聞こえかよ。やだー、恥ずかしい―。

 冗談は置いといて。遠方に出るような依頼では、馬車をレンタルして夜通しで行動する必要にかられることもあるとかで、負担が一人に集中しないよう全員御者をできるよう練習したんだと。

 今更だけど、このパーティーって高レベルの割に驕っていないし努力家だよね。向上心っていうの? かっこいいわー、マジで。



「勇者の子達も、意外とすんなりこの状況を受け入れてくれて良かったね」

『こればかりは1号に感謝だな』

「今も……えっと、カウンセリング? だっけ? 話を聞いてやっているんだろ? 先生って呼ばれてたし、彼は医者なの?」

『いや、教師だ。この世界にあるかわからないが、学校といって子供を集めて教育する機関があってな。奴は国語……文章の読解力をつけるための学問を教えていた。俺の国では誰でも文字の読み書きや計算ができるのが普通だからな』

「へぇ、凄いな。こっちじゃ読み書きは貴族を除けば一部の人間だけだ」


 チェーザーレとバルトヴィーノは文字の読み書きが未だにできないんだと。簡単な計算だけはドナートが教えたが、読み書きは覚える気がハナからないらしい。


「覚えれば依頼書だって技術書だって読めるし、商店で掲示されている値段もわかるからぼったくりに遭うこともなくなるんだけどねぇ」

『苦労してそうだな』

「いや、あまり気にしてないみたいだよ? 契約関係は俺やアルベルトが代筆したりしてるし」

『いや、貴様がだよ』

「へ? 俺? うーん、確かに、だから覚えろって言ってるじゃないかって思うこともあるけど……」


 なんだかんだで頼られるのが嬉しいのだと。後ろ姿しか見えないからどんな顔で言っているかはわからないが、きっと笑顔だろう。

 良い関係だな、と言ったら礼を言われた。



「もうすぐ夕方だな。リージェ、アルベルトにそろそろ野営場所を探しながら進むけど良いかって聞いてきてくれるか?」

『了解した』


 オーリエンを出てからここまで、ずっと一本道だった。分かれ道がないってことは、近くに村や町が無いってことだ。野宿を覚悟する必要が出てくる。

 幸い、オーリエンのロリコン王が野営に必要な食糧や道具類を全て詰め込んでくれてある。野草を摘んだり肉となるモンスターを狩れば連日野宿でも行けるくらいだ。

 馬車を飛び出しついでに少し上空へ飛び上がって見たが、集落のありそうな場所はなかった。


 アルベルトからも反対意見はなく、適度に拓けた場所を野営地にしようということをドナートにも伝えた。

 適度に、というのは万が一にも前後から馬車が来た場合通行の邪魔となってしまうため、馬車を道から避けて停められるほど拓けた場所だったな。

 夜が更けた頃にモンスターの行動範囲にもなっているこんな国境付近の道を通りがかる馬車があるとも思えないのだが。旅する者のマナーってやつらしい。


「……まずいな。停められそうな場所がない……」

『? このくらい道の脇が開けていれば馬車を停められそうだが? 岩がゴロゴロしているわけでもなさそうだし、適しているようにも見えるが』


 空は陽がだいぶ傾き、紫に染まりつつある。星の瞬きまで見え始めた。いよいよ夜になるのだ。

 いつもならとっくに野営の準備に入っている頃なのに、馬車を停める気配のないドナート。何やら焦っているようだ。

 どうした、何か問題があるのか? と声をかけると、問題大ありだ、と返ってきた。問題あるってちょっと! 嘘でしょ?!

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