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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第七章 俺様、南方へ行く
127/212

1

 1号を背中に乗せて飛ぶことしばし。

 勇者達を寝かせた場所で皆はそのまま待っていてくれていた。エミーリオが食事の用意をしているのか、湯気と共に美味しそうな匂いが漂っている。


「あっ! 戻ってきましたわ」


 ルシアちゃんがいち早く俺に気付いて手を振ってぴょこぴょこと跳ねている。なんて可愛いんだ。

 俺はそんなルシアちゃんの前に降り立つと、1号を放り落とした。


「どうでした?」

『ああ、やはり伯爵が黒幕だったようだ』


 伯爵の屋敷で聞いたクーデターの話をする俺達の前に、エミーリオが膳を並べていく。今日はシチューとパンか。日持ちのしない食材を先に片付けたってところかな?

 パンは保存用ではない、つまり柔らかい白パンで肉汁たっぷりの厚切り肉とレタスに似た葉物野菜が挟んである。味つけは塩胡椒のみだが、ちょうど良い塩梅でつけられた塩分が肉の旨味を引き立てている。ハレタの宿で食べていたあのしょっぱ辛い食事と大違いだ。



『ああ、すまん。話の途中であったな』

「構いませんわ」


 食事に夢中になってしまっていた俺をルシアちゃんは怒るでもなくニコニコと見つめている。

 アルベルト達に話の続きを促されて、俺は伯爵を倒したところまで話し終えた。


「それで、勇者達は?」

「リージェ様達のお陰で、伯爵の呪縛からは解放されましたわ」


 1号が今ここにいない勇者達の安否を気にして聞く。

 伯爵が勇者の命を軽んじていたと伝えたからか、ルシアちゃん達から伯爵を殺したことへの非難は出なかった。もう少し、何かあるかと思ったんだが。

 勇者たちを縛っていた隷属の腕輪は無事に外すことができたそうだが、やはりというか何というか、取り乱してしまったらしい。


「混乱して泣き出す子や、恐慌状態で今にも暴走してしまいそうな子などもいて、再び眠らせるしかありませんでした」

「そうか……」


 勇者なんて言われているが実体は平和な世界にどっぷり浸かった子供だ。精神面で言えばルシアちゃんの方がよほど成熟しているだろう。

 そんな彼らが突然見ず知らずの場所に来て、モンスターとは言え人の面影を残す生き物と戦ったりしたのだ。むしろ隷属によって抑えられていた恐怖や忌避感が、全て蘇ってきたという感じか。


『1号、どうする? 今夜一人帰すか? 眠っている今なら、全て夢だったで片づけられるんじゃないか?』

「いや、死者も出ているし、マスコミが放っておかないだろ。嫌でもこれが現実だったって突き付けられる。それなら、少しでも心の整理をしてから行った方が良い」


 1号に当初頼んでいた通り、彼らの心のケアは1号に任せることとなった。

 まぁ、見た目はただのきのこだが曲がりなりにも先生だからな。どう見てもモンスターな俺よりかはうまくやるだろう。





 翌朝、夜も明けきらないうちからすすり泣きのような声と共に勇者達が起きた。

 1号が突撃をかましたみたいで、悲鳴が多数上がっていたがそれももう落ち着いた。馬車を突き破って光線が飛んでいくのが見えたが、まぁ1号だからな。無事だろう。


「朝食は昨日の残りのシチューで良いですか?」

『勿論だ』


 危険を伴う旅のせいか、夜明けと共に起きるという生活が身についてしまった。勇者たちの騒ぎで起きてしまったが、普段とそれほど変わりない。

 起き出した皆のためにエミーリオが朝食の準備を始める。どうやら、シチューに加えて他にも何か作り足すようだ。



 で、出てきたのはパンに目玉焼きが乗ったどこかのアニメで出てきたような食事と、焼いたベーコンが乗ったサラダだった。

 旅に出ているとは思えない新鮮豪華な食事だ。


「生鮮食品は保存がききませんからね。卵とミルクはこれで終わりです」

「えー……」


 エミーリオの声に不満そうな声が出てしまうのも仕方ない。まだ多少の野菜はあるとはいえ、また固いパンや乾燥肉をスープなどで戻した料理ばかりになるのかと思うと……。

 1号に連れられて出てきた勇者たちも、噛み締めるように食べていた。ハレタではあの辛すぎる胡椒塗れの料理ばかり食べていたのだろうか? 皆一様に美味い美味いと涙を流している。正直、彼らの健康状態が心配だ。






「あの、私達、これからどうなるんですか?」


 食事の後、おずおずといった感じで一人の女子が手を上げて質問してきた。

 黒いショートヘアでスレンダーな彼女は、確か陸上部だったはずだ。ランニングウェアで放課後校庭を走っている姿を何度か見かけた。

 日焼けで小麦色になった肌が健康的な艶っぽさを出している美人だ。学校でも上位に入るモテ女子で、つまりは俺と生きる世界の違う殿上人。目立つが故に視界に入っていただけで、決して俺が懸想していたわけではないぞ。その証拠に、名前も思い出せない。確か、えーっと、こ……こ……だめだ。鑑定ちゃーん!


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【ステータス】


名前   : ミチカ・コジマ   

レベル  : 32


HP   : 3074/3074

MP   : 1963/1963


ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 よし、これで名前を覚える必要なし! 異世界万歳!

 元々の運動能力の高さか、この前覗き見たミドウより高いステータスだった。それにしてもこいつら揃ってレベル高いな。

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