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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第六章 俺様、東方へ行く
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24

 休暇二日目。

 昨日はやたらと注目を集めてしまったし、今日は大人しく宿に引きこもっていようという話だったのだが、いくらも経たないうちに飽きてしまった。


「では、今日も屋台を見て回りますか」

「ええ、そうしましょう」


 俺が退屈そうにしていたら、エミーリオが提案してくれて、ルシアちゃんも賛同してくれた。

 てなわけで今日も一般市民の居住区に来ている。ただ、治安に若干不安があるということでスラム街の近くには行かないようにと釘を刺されている。

 昨日と同様無遠慮に見てくる人も多い中、暗黒破壊神を倒してくれと声をかけてくる人も多かった。たくさんの人から拝まれてなんだかこそばゆい気分だ。




「あ、あそこにアルベルト様が」


 人混みの中、ルシアちゃんがアルベルトを見つけた。ベルナルド先生やドナートも一緒だ。

 アルベルトもこちらに気付き、人波をかき分けるようにしてこちらに来た。


「すまん、ちょっとまずいことになった」


 え、ちょっと! まさかまたトラブルとか言わないよね! やーだぁぁぁ! 聞きたくない~!

 聞こえなぁい、と耳を塞ぐ俺を尻目にここじゃ騒がしいから、と先導されて場所を移動する。嫌がる俺は問答無用にルシアちゃんに抱かれて連れていかれた。



 辿り着いたのは、国旗とは違うデザインの竜と剣と杖が書かれた旗が掲げられた大きな木造の建物だった。周りのレンガ造りの住宅とは明らかに浮いている。周囲に屋台が無いせいか先ほどまでいた場所よりは人が少ない。


「会議室を借りるぞ」


 止まることなく建物に入ったアルベルトは、階段近くにいた女性に声をかけるとツカツカと二階へ上っていく。

 慌てて追いかけるルシアちゃんに抱かれたまま周囲を見回すと、武装した人間がたくさんいた。何やら紙が張り出されたコルクボードのある壁、市役所のようなカウンター。もしやここは……。

 冒険者ギルド、という単語が頭の中に浮かび自然と胸が高鳴る。だって男の子だもん。

 あそこで食い入るように張り出された紙を見ているおっちゃん達はこれから凶悪なモンスターと戦ったりドラゴンを狩ったりするのだろうか。……あ、ドラゴン俺だった。やっぱなしで。




「さて、本題だが」


 全員が席に着いたと同時にアルベルトが口を開く。

 と、同時に扉がノックされトレイに人数分のお茶を乗せて運んできた女性と白髪のおっちゃんが入ってくる。髪色だけ見ると老人のようだが、肌は筋肉質で若々しく背筋も伸びていて年齢がわかりにくい。アルベルトより20か30ほど上って感じか。

 お茶を置いてすぐに退室した女性と違い、おっちゃんはアルベルトの向かいの空いていた席に腰を下ろした。


「儂から説明するのが筋じゃろう」


 今日びこんなわざとらしい老人喋りする人も珍しいなぁ、なんて現実逃避は置いといて。

 この建物はやはり冒険者ギルドで、おっちゃんの正体はこの冒険者ギルドハレタ支部の支部長でフロリードという名前だそうだ。

 セントゥロに所属しているはずのアルベルト達がここに任務の報告に来たのは、運営しているのが国ではなく民間の組織だからなのだそうだ。因みにセントゥロにあるのが本部で各国各地方にある冒険者ギルドは全てその支部になるらしい。任務達成の際はどこの支部で報告しても報酬を受け取れるのだと。



「実は最近、このオーリエン国内で人間をモンスター化させるアクセサリーが出回っていてな」

『!』

「知っているのか、リージェ?」

『ああ。先日ルシアを攫ったタイラーツ領の領主が所有していた。強大な力を与える代わりに理性を奪うようでな。最終的に肉体も変容してしまう。鑑定で確認もしたがそこまで行ったらもう人間とは言えず戻す術もない』


 アルベルトが言う問題について説明を始めたフロリード。

 話題のアクセサリーについて既に現物を確認しているという俺の言葉に一同目を丸くしている。

 フロリードは重々しく溜息を吐きながらその通りじゃ、と言葉を繋げた。


「報告に上がっている事例でも言葉通じず、殺すしかなかったと」

『あれが一つではなく出回っているというのは驚くべきことだが……それが俺様達とどう繋がる?』

「うむ、実はな。特徴的なその黒い宝玉が多数この市に流れているのを見たという情報が入ってきているのじゃよ。鑑定が使える部下が言うには、暗黒破壊神の力の結晶じゃとか。この時期にこの街にそんな物が集まってきているというのが気になってな」


 誰かが故意に流している? フロリードの言うこの時期、というのはやはり祝典のことだろう。

 暗黒破壊神を崇拝する連中からすれば、まだ未熟な聖女と勇者を一度に潰せるチャンスってやつか。


『何かが起きるとすれば、祝典の最中か』

「然様。出立する聖女様と勇者様、そして聖竜様を送り出すパレード。人々が見守る中で襲撃し誰か一人でも欠ければ、民たちの心は絶望に染まるじゃろうな」


 あの豚領主レベルであれば俺が殺されることもないだろうしルシアちゃんだって守り切る自信もあるが、状況次第では絶対とは言えない。

 例えば多くの国民を人質に取られたら? 見ず知らずの連中なんてどうなろうが知ったこっちゃないが、ルシアちゃんが悲しむかもしれない。いや、それ以前にあの首飾りのようなアイテムが集まっているって話だし、物量で来られたらさすがの俺でも万が一があるかもしれない。



「はぁぁぁぁぁぁ」


 もう溜息しか出ないよ。トラブルは嫌だってあれほど言ったじゃんか。

 

「まったく、任務の報告とギルドカードの更新に来ただけだったのに大事になっちまったな」

「文句を言っていても仕方ないよ」

「とにかく、無事にこの国を出るまで今日を入れて三日。一つでも多く見つけて破壊しないと」


 ここにいないバルトヴィーノとチェーザーレは既にスラム街と露店の見回りをしているのだと。貴族に多少顔の利くドナートとアルベルト達がこれから貴族街に聞き込みに行くのだとか。

 今はとにかくできることをやるしかない。聞き込みや見回りをして見つけ次第壊すのだと。エミーリオも捜索に加わることになったので、俺とルシアちゃんは宿に戻ることになった。


 そして、決戦前のもう一つの山場。オーリエン国王との謁見の時がやってきた。

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