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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第六章 俺様、東方へ行く
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9

 それから1オーラほどガタガタの道をひた走る。左手には竹林、右手には畑のようなものが広がっている。長閑な田園風景といった風情だ。

 人が通りかかっても大丈夫そうな、竹林が少し奥まった場所を見つけ、そこに馬車を寄せる。


「さすがにスープはないか……」

「簡単なもので良ければ作りますよ」


 チェーザーレのがっかりしたような呟きに要さんが応え、エミーリオが魔法であっという間に炉を組んでしまう。何だろうね、この連携の良さ。

 俺はというと、ドナートが配ってくれた包みをルシアちゃんが開けてくれるのをワクワクしながら待っている。


『おお、これは……』

「パンとは違うし、何だこれは……?」

「これはどう見ても」

「焼うどん、だな」


 俺が感動している横で初めて見る料理に慄いている感じの面々。要さんと1号がうどんうどーん♪ と妙にはしゃいでいる。好きなのか、うどん。

 竹を編んで作った弁当箱に殺菌効果のある大きな葉を敷き、その上に盛り付けられた焼きうどん。具は筍と山椒の葉と何かの肉。味付けは塩だ。

 美味い美味いと俺が顔を突っ込んで食べている横で、要さんは弁当箱に添えられていた竹製の箸で食べている。それを真似して皆も箸を使おうとするのだが、どうやら上手く持てないようだ。


「皆さんは、このように麺類を食べたりはしないのですか?」

「麺?」

「ええ。小麦を水で練って、塩や芋などを混ぜ込んでこのように細く切って湯がいたものです」

「何にでも合うし食べ方は色々だな。スープに入ったものやソースを絡めた物、揚げたり焼いたりと日本じゃ種類が豊富だな」


 要さんの問いに首を傾げていることから、この世界では小麦粉はパンにして食べる以外の食べ方をしないというのが伺える。


「原料が揃っているということは、我々でも作れるということですよね」

「是非、次来るときは日本の麺料理でこちらでも再現できそうなものを色々持ってきてくれないか?!」


 うどん以外にも麺料理が日本にあるということを知ったエミーリオが自分に作れるかと問うと、要さんが返事をする前にチェーザーレが日本の麺料理をリクエストした。

 要さんの両手を握って迫るもんだから、ルシアちゃんの鼻息が荒い。取り敢えず尻尾で叩いておこう。正気に戻りなさい。

 気圧された要さんが了承すると慌てて離れてたけど。こらそこ、残念そうな顔しないの。女の子でしょ。



『で、食堂で融通してもらった特産品というのは?』

「ああ、これだ」


 ドナートが取り出したもう一つの包みに入っていたのは、タケノコと山椒と茗荷。それから……なんか草っぽいのがいっぱい。


「えっと、わらびにゼンマイ、ウドですか。山の幸ですね」

『見た感じ山はないがな』


 要さんがその草の正体を教えてくれた。うーん、名前だけなら聞いたことあるけど、食えるのこれ?

 天ぷらが美味しいけど現状だと油が少し足りないかな、という要さんの言葉で次の集落では油を補給することになった。と言っても、時間が経つと固くなってしまうから今回は煮浸し風にするって。

 タケノコは時間が経つと渋くなるからアク抜きしてから出発ということで、ここで少し長めの休憩になった。


『それで、雑貨屋では何を買ったのだ?』

「何かよくわからない薬草を全種類少しずつだな」

「毒草以外は一通りですかね」


 バルトヴィーノが購入した包みを広げながら見せてくれるが、何かよくわからない薬草ってオイ。

 要さんの補足説明では、地球に存在しなかったファンタジー植物もいくつかあるらしいが、それ以外は日本ではハーブやスパイスに分類されるものもあるとか。


「これはローズヒップですね。こっちはカモミール、レモングラス、ハニーブッシュ、クミン、ローレル、ターメリック」

『甘い匂いがするな』


 ハニーブッシュってやつがめっちゃ甘ったるい匂いがした。蜂蜜たっぷりのホットケーキが食べたくなる。

 あ、クミンってやつ、めっちゃカレーの匂い! カレー食べたい! 


「カレーにするには種類が足りないですけどね」


 ガクッ。

 俺の心が読めるわけでもないだろうに、要さんが俺の心をへし折りにきた。


「幸い乾燥済みで日保ちしますから、他のスパイスも探しましょうか」


 俺が項垂れたのが解ったのだろう。鍋の火加減を調節しながら要さんがそう言った。

 他のスパイスが見つかれば、カレーも夢じゃないのか!

 カレーって何だと騒ぐチェーザーレにスープの一種ですよ、と説明している。チェーザーレのあしらい方上手くなったな、要さん。


「しかし面白いですね。平地なのに、山菜が特産品として並んでいたり。植生などは日本に近そうなのに、雑貨屋に並んでいる薬草などは温暖な地域のものだし」


 地球と植生が違う、と要さん。


「それなんだが、過去に何度か勇者が召喚されたって言ってただろ? 過去の勇者の中に、いたんじゃねぇか? 地球人が」


 1号が久々に会話に混ざってきた。

 過去に地球から召喚された人がいて、食べ物とか色々知識を伝授したんじゃないかって。で、旅の道中見つけた物を持ち帰って栽培に成功したとか。まぁ、なくはない、のか……?


「じゃなきゃ竹細工はともかくうどんはおかしいだろ? エミーリオ達ですら麺類を知らないってのに」

「ん? てことはさ、楓」

「ダメだぞ」


 日本から色々持ってきてこっちの人に研究再現させていけば、という要さんにさらにダメだしする1号。何だろう。捨て犬のような耳と尻尾が見える……気がする。

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