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11話  砕かれた石と繋がれた意思

 ゴーレムが腕を振るい、しがみついていたジルが投げ出される。

 続いてゴーレムは頭に登ったタンタルを掴もうとするが、タンタルはその場から飛び退きジルの傍に寄り添った。

 ゴーレムはタンタルを抱き締めるジルに狙いを定め動き始めた。



「ちょっと! あれどうなってんの!?」


(やはりか……。簡単な魔力指令を入力された自動兵器だ。おそらくあのゴーレムに危害を加えたら、その対象に攻撃を仕掛けるように作られているのだろう……。つまりこの場合……あの猫と少年だ!)


「止める方法はないの!?」


(あれに指令を与えた者がいなければ破壊するしかない!)



 慌てふためくセリアにヴォルドゥーラが状況を説明する。

 受付の女性はすぐに駆け付け、恐怖で動けないジルを抱き締め目を閉じた。



「誰か……誰か何とかしとくれよぉ!」


「しかしありゃ……アズデウス帝国の所有物だ……。下手に手を出したら……俺達が処罰されちまう……」



 女性は悲痛な叫びを上げるが、男達は揃って尻込みしている。

 周囲に居る街の人間はどうする事も出来ずに居た。



「そんな事……言ってる場合じゃないでしょ!」



 セリアはゴーレムに向かって走りながら、右手に火球を生成する。

 それをジル達に向かうゴーレムに振りかぶって投げた。


 火球はゴーレムに直撃、炸裂したがびくともしない。

 全く効果がないようであった。



「嬢ちゃん……、魔導師だったのか……。いや、それよりもそんな事したら嬢ちゃんが!」



 男の言葉を無視するセリア。

 そのつもりだったのだが当てが外れたのだ。



(無理だ! 炎は土属性であるゴーレムとは相性が悪い!)



 ヴォルドゥーラが言うには、ゴーレムには半端な炎では全く効果がないようである。

 そう言われて諦めるセリアではなく、めげずにもう一度火球を生成した。



「だったら……炎金術エバポレート、《鉄球精製アイゼンスフィア》!」



 セリアの作り出した火球は手の平の半分程度に小さくなり、より丸い球体に変化する。

 それを振りかぶり、肩と腰を使って豪快に投げ付けた。



「でえぇぇぇぇい!」



 威勢の良い声を発するセリア。直後にゴーレムの腹部にめり込む赤い球。

 腹部からゴーレムを形成している石の欠片が弾け飛んだ。

 ゴーレムはジル達からセリアへ視線を移し、その目が怪しく光る。



(鉄球か! 考えたな!)


「そうよ! こっちに来なさい!」



 物理的な鉄の塊を作った事に称賛の声を上げるヴォルドゥーラ。

 セリアはゴーレムを誘き寄せようと画策したのだが……

 橋の袂に居たもう一体のゴーレムが動き始め、セリアに向かって歩き出した。

 先程のゴーレムはすぐに少年に向き直ってしまったのだ。



「何で!?」


(情報共有! 厄介だな……。長引けば他の場所に居るゴーレムも動き出すかもしれない!)



 困惑するセリアとヴォルドゥーラ。

 しかし、セリアに向かって来たゴーレムの間にメリュジーヌが割って入る。

 狼狽えて見ていた男は慌てて止めに入った。



「姫様! やめてください! 姫様になにかあったら俺達は!」


「わたくしはこの国の民を守るために生まれたのです。貴方達にもしもの事があったら意味がありません……」



 微笑みながら淡々と語るメリュジーヌは胸元からネックレスを取り出した。

 そのネックレスには小さな鳥籠のような檻が付いており、金色に輝き細長い瞳孔を持つ目玉のような物体が入っていた。

 メリュジーヌはその小さな檻を自身の左目の前に掲げ、そして叫んだ。



闘竜眼とうりゅうがんファフニール!」



 檻の中の目玉がメリュジーヌの左目に吸い込まれ同化した。

 メリュジーヌの左目は金色に輝き、頭には二本の角が生え、その身を薄白い闘気が覆う。


 高速でゴーレムの懐に飛込み、腹部に拳を突き立てるメリュジーヌ。

 その一撃で身体の中心に大穴が空き、ゴーレムは活動を停止した。


 そのまま走り出し、ジル達に向かうゴーレムの頭部を殴り飛ばすメリュジーヌ。

 ゴーレムは地面を削りながら倒れ、兜も砕けたがすぐに起き上がる。



(あれは……制御コードか!)



 ヴォルドゥーラはゴーレムの額にある文字を見逃さなかった。

 ゴーレムを操る為の術式。真理を意味する一文。



「大丈夫です。責は……わたくしが負います!」



 帝国への反逆にもなりかねないこの事態。

 メリュジーヌの言葉に皆何も言えずに固まっていた。

 たった一人を除いて……



「私も混ぜてよメリュジーヌ様? 炎金術エバポレート! 《輝く緋色剣(スカーレットグロウ)》!」



 セリアは走りながらメリュジーヌを追い越し、起き上がったゴーレムに飛び掛かる。

 その両手には緋色の剣が握られていた。



(額の文字、一番左の文字を削り取れ! それで術式の意味が停止に変わる!)


「りょーーーかい!」



 ヴォルドゥーラの助言に返事を返し、セリアはゴーレムの額にある最初の文字に剣を突き立てる。

 するとゴーレムの目から光が消え、すぐにその動きを止めた。



「セリアさん……」


「姫様にばかりカッコいい真似はさせませんわよ?」



 目を見開いて驚くメリュジーヌにセリアは笑顔で胸を張る。

 てこてこ歩いて来たピロは倒れたゴーレムに小石をぶつけていた。

 ピロもセリア同様、共に責を分かち合うつもりのようだ。



「カッコ良いなんて……。わたくしはこの通り……恐ろしい姿と力を持った化物になってしまったのですよ……」


「にゃー!」



 メリュジーヌのドレスに爪を引っ掛け、肩まで登ってくるタンタル。

 頬を寄せ、甘えているようであった。



「ねこ……さん?」


「お姉ちゃん達ありがとう! すっごいカッコ良かったぁ!」



 化物のような姿をした自分に擦り寄る猫に動揺するメリュジーヌ。

 さらに目を輝かせてお礼を言って来るジル。

 メリュジーヌはキョトンとしたまま固まってしまった。



「ほら、猫や子供は素直なのよ。それにその姿……、勇ましくて私は好きですよ? ピロも好きよね?」


「キュキュ!」



 セリアとピロの行動と言葉。

 メリュジーヌはその想いに、自分の中にあった波が収まるのを感じていた。

 タンタルを胸元で抱え、その頭を一撫でするメリュジーヌ。



「どういたしまして……」



 優しげな笑顔で答えるメリュジーヌ。

 そのあまりの神々しさに街の人々は固唾を飲んだ。



「なんて美しい……」


「誰だよ……、化物なんて言ったのは……」



 アズデウス帝国への捧げ物、人外の力持つ神の子。

 化物とは状況と想像が一人歩きを重ねた結果、人々の脳裏に焼き付けられた印象であった。

 本来の優しい姫を長年に渡り見続けていたと言うのに……

 街の人々は自然にセリアとメリュジーヌの側に集まって行く。



「ありがとうございました……。それと……本当に申し訳ありませんでした! 私達は自分の保身ばかり気にして……」



 震えながらジルを抱き締める女性は心からの謝罪と感謝を口にする。

 周囲の人々も下を向き、今更何を言って良いのか考えあぐねている様子だった。



「構いません……。今回の件はわたくしが勝手に行った事。貴殿方に一切の責任はありません」



 どこまでも優しげなメリュジーヌの笑顔。

 それを聞いた男達は堰を切ったように項垂れ、謝罪した。



「いや……メリュジーヌ様は昔と何ら変わらずお優しい方じゃねぇか……。そんな姫様一人を犠牲にしようなんて俺達はなんて事を……。すいません! どうかしてました!」


「考えるまでもなかったんだ……。メリュジーヌ様がアズデウスに行ったって何も解決しねぇよ!」


「そうだ! どうしてメリュジーヌ様をあんな国に差し出さなきゃならねぇんだ!」



 男達は口々に叫び出す。

 それを見たメリュジーヌは目を見開き、頬に一筋の涙が伝う。

 こんな言葉を掛けられるとは夢にも思っていなかったのだ。

 この国にもう居場所はなく、自分は望まれてここを出なければならないと思っていた。



「身勝手極まりないわね……。でも……反省と理解が出来るのは良い大人の証ってヴォルドゥーラさんも言ってたわ。メリュジーヌ様もそう思うでしょ?」



 そう言うセリアは優しい笑顔をメリュジーヌに投げ掛ける。

 ピロも一生懸命跳び跳ねて同意を主張していた。



「セリアさん……、ピロさん……、皆さん……。ありがとうございます……。こんな……、こんな言葉を向けられただけで……。私は満足です……」



 顔を覆い泣き出すメリュジーヌをそっと抱き締めるセリア。

 そんなセリアに受付の女性が語りかける。



「今更……言えた義理じゃないけど……、セリアちゃんだっけ? 問題を姫様一人に押し付けた事への謝罪って訳じゃないけど……。姫様がアズデウスに行かずに済むなら協力するよ……。なんでも言っとくれ!」


「俺も協力するぞ!」


「おい! 嬢ちゃん、俺も頼れよ!」



 受付の女性や街の男達は助力を申し出て来た。

 盛大過ぎる手の平返しでこれはこれで少し腹も立ったが、セリアの溜飲が下がったのも事実。



「ええ分かりましたわ、今日のところは姫様をお城に送ってから、今後の作戦を考えましょう。宿の晩御飯も期待してますね?」


「まかせとくれ! 景気付けに豪勢に行くよ! あんた達! 手伝いな!」



 セリアの提案は承諾され、受付の女性の指示で雄叫びを上げる男達。

 客まで使おうとは中々豪快な女性である。

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