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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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復讐

「原告側は訴状を読み上げて下さい。」


裁判長が静かにそう言った。するとイースティンが立ち上がって書類を片手に喋り出した。


「はい、裁判長。被告人であるマイヤー氏は今年の五月一日に私の横に座るマッケンジー氏から宝飾された三本の刀の製作依頼を受けました。この三本の刀は裁判長の横にいらっしゃるジュリアン王子様の来るべき戴冠式で使用する為のものでジュリアン王子様とその二人の弟ぎみ、ヘンリー様、チャールズ様の為に王室から発注されたものです。」


イースティンは慣れた様子でその原稿をすらすらと読んでいる。そのスムーズさに逆にイライラしながらも僕はじっとイースティンの言葉に耳を傾けていた。


「ところがあろうことか被告人はそのような大事なものの発注を受け前金を受け取ったにも関わらず刀の製作を怠りました。納期である七月三十一日の午後四時になっても彼は刀を一本も納品することが出来なかったのです! このことによりマッケンジー氏からは前金横領による詐欺罪、そしてその横にいらっしゃる王室事務次官のチャーリー氏からは納期を守らずまたその旨の連絡も事前に無かったことによる王室侮辱罪で提訴する内容の訴状を私の方から当裁判所に提出しております。」


何が訴状だ! 僕はイースティンの言葉を聞いて態度は平静を装っていたが内心は腹わたが煮えくり返っていた。所詮お前らが仕掛けた茶番じゃないか! ここにいるイースティン、魔法で今頃家で寝ているミック、裁判長、そしてマッケンジー、少なくともこの四人は僕の後ろにいるタンケーダをボスとするグルなのだ。こんな奴らが人を裁いて良い訳はない。僕は胸元に隠した拳銃に手を伸ばしかけたがそれをぐっと堪えた。


「被告人、あなたには黙秘権があるのでずっと黙っていることも出来ますし答えたくない質問には答えなくても構いません。ですが当法廷での被告人の発言は被告人の有利不利を問わず証拠として用いられることがありますから質問に対して答える場合にはその辺りを十分注意して下さい。では最初の質問です。被告人は今の訴状の内容を認めますか? 」


裁判長が父さんにそう言った。このインチキ裁判長め! 僕は腹わたの怒りを何とか少し鎮めると父さんの方を見た。父さんがどう答えるのかが物凄く気になったからだ。ひょっとすると父さんは拷問で痛めつけられて反論する気を無くしているかもしれない。顔の無数の傷がその可能性を表していると僕には思えたからだ。だが父さんは椅子から立ち上がりイースティンを睨みつけながらこうはっきりと言った。


「そんなもの認める訳がない。私は間違いなく三本の刀を作った。そしてそれを納期の前日である七月三十日には出荷出来る状態にしていたのだ。それがその日の夜に突然消えた。その時は私にも訳が分からなかったが今考えればおそらく盗まれたのだろう。私はその辺りのことを警察や弁護人に何度も調べてくれるよう頼んだ! だが誰も何もしてくれないのだ! 」


父さんの力強い発言が法廷内に響き渡った。良かった、父さんにはまだ戦う気力が十分に残っている。僕は嬉しくてまた泣きそうになった。


「被告弁護人、意見はありますか? 」


静まり返った法廷で裁判長がそう声を発する。それは芝居をシナリオ通りに進めようとする演出家のような響きがあった。そしていよいよミックに扮したビルの出番だ。だが彼は上手くやるのだろうか? 僕は固唾を飲んでビルが椅子から立ち上がるのを見守った。ビルはごほんと咳払いをした後ゆっくりと喋り始めた。


「被告人の言う通り、本件に関しては訳の分からないことが多々あります。それを一つずつ紐解いて被告人への訴えがでっち上げだということをジュリアン様とシンシア様の前で証明したいと思います。」


ビルははっきりとそう言った。その言葉を聞いてイースティン、マッケンジー、そして裁判長までもが怪訝な顔をしている。おそらく打ち合わせにない内容を突然ミックに扮するビルが言ったので当惑しているのだろう。ビルが言葉通り彼らの化けの皮を剥がすことを僕は切に祈った。


「ひ、被告人は席へ戻りなさい。では原告側、陳述を始めなさい。」


裁判長がまるでビルの言葉を打ち消すようにそう言った。イースティンは眉間に皺を寄せながら席を立ち発言をしようとしている。その時僕の背後にいるタンケーダがポツリと言った。


「……どないなっとんじゃ、何かおかしな雲行きやのう。」


その言葉は小さな一人言だったが明らかな怒気が含まれていた。この法廷で上演される筈だった父さんの没落劇のシナリオが書き換えられようとしていることにタンケーダはどうやら薄々と気が付きだしたようだった。僕は心の中でこう叫んでいた。


「父さんの無実を必ず証明してやる! そしてその次はお前を追い詰めてやる! お前も人に陥れられる気持ちを味わうがいい! 」

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