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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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再会、父よ……

暫くすると僕の背後にある傍聴席に沢山の人が入ってきた。傍聴席は柵で区切られていて席の数は百ぐらいはあるだろうか? どんな人が来ているのだろうと思ってチラチラと背後に目を遣っていると群衆の中にド派手な紫のスーツを身に纏って青みがかったサングラスをかけたスキンヘッドの男が一人混じっているのが目に入った。


「タンケーダ! 」


僕は心の中でそう叫んでいた。憎っくきタンケーダが傍聴席ににやけた顔をして歩いてきているのだ。おそらく僕の父さんの裁判での負けっぷりを高みの見物でもするつもりで来たのであろう。その後ろにはやたらと大きな宝石の付いた指輪をいくつもしている厚化粧の女と間の抜けたニヤケ顔をした若い男が続く。それはタンケーダのデブ嫁と糞コイチだった。父さんを陥れようとするタンケーダ夫婦とその馬鹿息子である僕を散々痛めつけて拉致したコイチがのうのうと傍聴席に向かって歩いてくるのを見ているとその三人の頭を拳銃で今すぐにでも吹き飛ばしてやりたくなるが僕はその怒りをぐっと堪えた。するとタンケーダ家族はあろうことか柵を挟んだ僕のすぐ後ろ、傍聴席の最前列に座った。


「この裁判が終わればマイヤーはもうお終いじゃ。あの刀剣製作の事業は全部ワシが頂いたるわい。」

「これでまた邪魔者が一人減ったわね。」

「そうじゃ、ワシが気に入らん奴は全員ぶちのめしたるんじゃ。」


タンケーダとそのデブ嫁がそうヒソヒソ話をしているのが聞こえる。彼らに対する殺意を押し殺しながら僕は聞き耳を立て続けた。


「そういえばコイチよ、マイヤーのガキはどうなったんじゃ? 」

「あいつはまだ逃げたままだよ。」

「まさかここには来てへんやろうな? 早う見つけ出して始末せいよ。」


こいつらは僕に聞かれているとも知らず僕を殺すとか平気で言っている。お前らなんかに殺されてたまるか! 僕は怒りに顔を赤くしながらも意識を背後のタンケーダ家族から前の法廷へと切り替えた。そろそろ裁判が始まるからだ。気が付くと原告側のイースティンの横にはいつの間にかマッケンジーともう一人見たことのない黒いスーツ姿の男が座っている。マッケンジーの横の男は誰だろう? その男は肌の色が白く目がギョロッとした肩幅の広いがっちりした男だった。僕はチラチラと二人の方を見ていたがそのギョロ目の男は裁判長の方をじっと見つめて落ち着いているのに対してマッケンジーはやたらとおどおどしていて顔色も悪い。おそらくマッケンジーは僕に刀を奪い返されたことを何となく分かっていてそのことを不安に思っているのだろう。お前もある意味被害者だが僕や父さんを陥れようとしたタンケーダの手先、実行犯であることは間違いないのだ。


「ミールには同情するがその罪は償ってもらうぞ、マッケンジー! 」


心の中でそう叫ぶと僕はマッケンジーを知らぬ間に睨みつけていた。マッケンジーはすぐに僕の視線に気付いたが彼は俯いて僕の方を一切見ることはなかった。何故見ず知らずの男に睨みつけられているのか訳が分からないので取り敢えず無視しているのだろう。そうこうしているとマッケンジーの背後のドアが突然開いて法廷には似合わない軽い感じの男の声が響き渡った。


「失礼しま〜す。」


そう言って法廷に入ってきたのは四人の男だった。彼らはスタジアムジャンバーを着た若い男を先頭に一列になってぞろぞろと歩いてきている。誰だろう? と僕は思ったが彼らは刑務官に誘導されて僕の左横にある椅子に座った。どうやらイースティンら原告側が集めた証人のようだ。僕は顔を横に向けて彼らを観察しようとしたがその時突然木槌の音がコン、コンと法廷に響いた。


「それではこれより裁判を始めます。被告人を連れて来なさい。」


木槌を持った裁判長がそう言った。僕は顔を正面の裁判長の方へ向けて改めて姿勢を正した。すると今度はビルとシゲの背後にある僕らが入ってきたドアが開いて刑務官に連れられ手錠をされた一人のやつれた男が入ってきた。僕は驚き思わず小さな声で呟いていた。


「……と、父さん。」


刑務官に連れられて法廷に入ってきたのは父さんだった。父さんは髪はボサボサで無精髭を生やし頰は痩けて顔にいくつもの傷があった。威厳に満ちていた以前とは違いまさに惨めという言葉がピッタリと当てはまる風貌だ。僕は思わず目を逸らした。


「被告人は前へ。」


裁判長のその言葉に従って父さんはビルとシゲのいるデスクの前に裁判長の方を向いて立った。これがあの父さん? いつも自信満々だったあの父さん? 今僕の目の前で被告人として惨めな姿を晒しているのがあの父さん? 信じられないし信じたくもない! この光景は父さんの息子である僕にとっては屈辱以外の何物でもなかった。僕は暫く俯いて父さんを直視出来なかった。


「名前を言いなさい。」


裁判長にそう言われて父さんは名前を言った。


「ウォルフガングだ。ウォルフガング・フォン・マイヤー。」

「生年月日は? 」

「1861年7月16日だ。」

「職業は何です? 」

「刀剣の製造と販売をしている。」


その後も裁判長と父さんのやり取りは続いたが父さんの声は張りがあり力強いものだった。僕は勇気を出して顔を上げて父さんを見た。父さんはくたびれ切った容姿とは違って受け答えはしっかりしておりその眼光にも鋭さがある。良かった、父さんにはまだ裁判を戦い続けようとする意志があるようだ。僕はそんな父さんを見ていて熱いものが込み上げてきた。

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