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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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変身!

「地図によるとこの辺りだ、オーチャードストリートの7番街は。」


シゲに別れ際に貰った地図を見ながら僕はそうシェリルに言った。


「あれじゃない? よく目立つ大きな家があるわ! 」

「あれだ! よし行こう! 」


もう今は夜中の二時だ。街の灯りは殆ど消えていてかなり暗い。だが夜目に慣れてきた僕らには目標とする家がハッキリと見えるのだ。シェリルは僕を背中に乗せたまま滑空を始めゆっくりとその家の庭に舞い降りた。


「では忍び込みますか? 」


シェリルがちょっとおどけた様子でそう言った。だがドラゴンであるシェリルの身体は大きい。人間の家に入り込もうとしてもシェリルがその身体でドアを通れる訳がないのだ。僕はシェリルの冗談を受け流すと少し真顔になってこう言った。


「僕が中に入ってミックを捕まえるよ。何とかして外まで連れてくるからそうしたら魔法で眠らせてやってくれ。」

「あら、そんな手荒なことは多分しなくていいと思うわ。実はあたし、ちょっと試したいことがあるのよ。えいっ! 」


そう言ったかと思うとシェリルの姿が足元から急に立ち込めた紫の大きな煙に包まれた。僕が驚いていると煙が消え去った後には可愛いレッサーパンダが現れ僕の肩にちょこんと乗った。僕は驚いて言った。


「えっ!? 君がシェリルなのかい? 」

「そうよ、これは以前ドラゴンの力を封じられていた時のレッサーパンダの姿よ。思ったより上手くスムーズに変身出来たわね。どう? 以前と変わらず可愛いでしょ? 」

「……う、うん。」


僕は驚いて生返事をした。するとシェリルはちょっと拗ねた様子でこう言った。


「あら、お気に召さないのかしら? ならとびっきり美人の人間の女性に化けましょうか? 」


僕は慌ててそれを否定した。


「い、いや、そのままでいいよ。ていうかそんな自由自在に変身出来るなんて知らなかったから驚いたんだよ! 」

「うふふ、実は今まではこんなに簡単に変身なんて出来なかったの。一度だけ変身したことがあるけれどその時は物凄く大変だったのよね。でも傷が癒えてから最近は常に全身に力が漲っていて自分の魔力もアップしているように感じていたから今ちょっと試してみたのよ。大成功ね! 」

「凄いよ! どこから見ても正真正銘のレッサーパンダだよ! それに体重も軽くなるんだね! 」


肩に乗るシェリルは軽い。もしシェリルの体重がドラゴンの時と変わらなかったら僕は潰されてしまっているのだ。


「そうね、自分で言うのも何だけど結構あたしの魔法ってイケてるわね! 」

「ふふ、自画自賛だね。じゃあ早速忍び込もうか? 」


僕とシェリルは一階の窓から侵入を試みた。レッサーパンダ姿のシェリルが口から小さな炎を吐いて窓ガラスに穴を開けてそこから僕が手を突っ込み窓の鍵を内側から外す。僕らは音は一切立てずに侵入に成功した。もし明日の裁判でしくじってもシェリルとなら泥棒で食べていけるな、と僕は真剣に思った。


「うわっ! 酒臭い! 」


窓から家に入ると待っていたのは強烈な悪臭だった。それに家の奥から凄まじいほどの鼾が聴こえてくる。広い家の割にはそれ以外には物音一つしない。どうやらミックは一人暮らしのようだ。僕らは家の奥の鼾のする部屋に向かった。


「失礼します、と。」


僕はそう言って部屋のドアを大胆にも開けた。すると予想通り中にはソファでだらしなく大鼾をかきながら寝ているミックらしき人物を発見した。僕はシゲから借りてきたミックの写真をズボンのポケットから取り出す。間違いない、この目の前で寝ている男がミックだ。


「この男がミックだね。どうやらお酒好きみたいだ。」


僕がそう言うとシェリルが床に転がる空いた酒瓶を見ながらこう言った。


「一人でこんなにお酒を飲んで楽しいのかしら? 」

「さぁね。取り敢えずこの男、どうしようか? 」


僕がそう聞くとシェリルは笑顔でこう答えた。


「魔法で明日一日中寝ていてもらおうかしら。あとは家の中に誰も入ってこれないように結界も張るようにするわ。二重で魔法をかけておけば大丈夫でしょ。」


シェリルはそう言ってまずミックに魔法をかけた。シェリルの前足から緑の光が一瞬光る。綺麗な緑の光だ。その後僕らは家の外に出た。シェリルが再び家全体に魔法をかける。また綺麗な緑の光が一瞬パッと散ってすぐ消えた。


「これでOKよ。」


シェリルの背後からその光景を見ていた僕は試しにミックの家に入ってみようと歩いて近づいてみた。すると目には見えない何かに僕は頭をゴンとぶつけてしまった。


「いてっ! あれ? 僕の正面に壁みたいなものがある! 見えないのに! 」

「ふふふ、それが結界よ。」


その結界は押そうが蹴ろうが叩こうがビクともしない。確かにこれなら結界の中に入ることは出来なさそうだ。僕は感嘆の声を上げた。


「……シェリルの魔法って凄いよ。」

「ふふふ、褒めて下さって光栄ですわ。」


シェリルはおどけてそう言った後姿をドラゴンに戻した。これでやるべきことは全てやったのだ。後は明日の裁判を上手く乗り切るしかない。僕とシェリルは朝までの短い休息の時間を取る為にスチュアートさんと出会った山の中腹に飛んで帰った。

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