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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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シゲと僕とシェリル

「バサッ! バサッ! バサッ! 」


シェリルが暗闇の中を翼を羽ばたかせて飛んでいる。時刻はもう夜の十時だ。だがまだ地上にはネオンが灯り夜の街は喧騒としているようだった。


「誰かに見つからないかしら? 」


シェリルが不安げにそう言った。


「大丈夫だよ、今夜は曇っているからね。月が顔を出さないうちに急ごう! 」


僕がそう答えるとシェリルはスピードを増す。僕らは夜空を闇に紛れて一直線に飛んだ。そして十分程進むとシゲの屋敷が見えてきた。


「シェリル、あれだ。正面に見えるあの建物の二階にシゲはいる筈だ。」

「分かったわ。」


シェリルはそう言うとシゲの屋敷の裏手、シゲの部屋の窓が面した敷地に着陸した。幸い誰もいない。シェリルは僕を頭の上に乗せるとそのまま僕をシゲの部屋の窓のところまで持ち上げてくれた。僕の目の前にシゲの部屋の窓が迫る。窓にかかったカーテンにはシゲのものらしき人影が写っていて喋り声はしていない。おそらくシゲは今一人だ。僕は小さくノックをした。


「シゲ、僕だ。ユージーンだ。」


低く小さな声でそう言うとすぐにカーテンが開いた。やはりそこにいたのはシゲだった。シゲは驚いた顔で僕を見つめている。シゲはすぐに窓も開けてくれた。


「ユージーン!? 生きてたのか! 」

「ごめん、心配かけて。」

「……! 」


突然シゲは口を開け目を見開いたまま喋らなくなった。シゲの表情には恐怖の色がありありと浮かびその顔は凍りついたように動かなくなっている。シゲの目線の先には僕を持ち上げてくれているシェリルの姿があった。シゲはドラゴンを見るのが初めてで恐怖のあまり声が出なくなっているのだろう。僕は慌てて説明した。


「シゲ、彼女はシェリル、見ての通りドラゴンだ。でも僕と彼女は友達だ。怖くも何ともない。」


シゲは口をあんぐりと開けて僕とシェリルの顔を交互に見つめていたが暫くしてようやく落ち着いたらしく声を絞り出した。


「……ユージーン、本当に怖くないのか? どうやってそのドラゴンと友達になったんだ? 」

「その辺も含めてシゲと話がしたいんだ。ちょっと出てこれないか? 」

「今からか? 」

「あぁ、シェリルの背中に乗って空中散歩さ。」

「えっ!? 」


戸惑うシゲを無理矢理窓から引っ張り出しシェリルの背中に乗せると僕らは空中に舞い上がった。


「えっ! えっ! えっ! 飛ぶのか!? 」

「大丈夫だって。」


シェリルはゆっくりと飛んだ。最初は恐怖で目を閉じて震えていたシゲだが暫くすると少し落ち着いたのか眼下に広がる街の灯をびくびくしながらも眺めるようになった。


「……ちょっと怖いけど空から見る街って綺麗なんだな、ユージーン。」

「だろ? こんな風景はシェリルがいなきゃ俺達人間は見ることが出来ないんだぜ。」


シゲが前、僕が後ろの順でシェリルの背中に乗り僕ら二人は暫く黙って夜景を眺めていた。だがその後シゲが突然僕の方を振り返りちょっと怒った様子で話し掛けてきた。


「そうだ! 思い出した! どうして今まで連絡が取れなかったんだ!? だいぶ探したんだぞ! 別荘に行ったら山ごと丸焼けになっているし! 」

「えっ!? あの別荘はカ・ツカレー山ごと焼けちゃったのかい? 」

「俺が行った時はもう燃え尽きた後だったよ。」

「ごめん、シゲ。大事な別荘を灰にしてしまって……。」

「まぁそれはいいよ、取り敢えず何があったか話してくれ! 」

「分かった。」


僕はシェリルの背中でシゲに全てを語った。マッケンジーから刀を奪い返したこと、タンケーダの一味に襲われシェリルが傷つきドラゴンに姿を変えたこと、タンケーダの敷地に潜入してその中で巨人トロールと戦いその姿を撮影したこと、それらの出来事を僕は要点を絞って説明した。シゲは僕の話が終わった後黙って何か考え込んでいるようだったが暫くすると口を開いてポツリとこう言った。


「……なるほどな。大変だったな、ユージーン。」

「あぁ、でもまだ何とか生きてる。」

「別荘が焼けたのもタンケーダのチンピラのせいだったんだな。」

「いや、火を消そうということすら考えつかなかった僕に責任がないとは言えない、謝って済む問題じゃないけれど……ごめん、シゲ。」


するとそれまで黙っていたシェリルが急にシゲに話し掛けた。


「シゲさん、ユージーンは悪くないわ。生き残るのに必死だったの。あなたの言う通り悪いのはチンピラ達だわ。」

「は、はい。えっ! ドラゴンて喋れるんだ! 凄いな! 」


シゲは驚きながらそう返事をした後僕の方を見てこう言った。


「ユージーンが悪いなんて俺は思っていないよ。損害賠償はコイチにでもしてやるさ。」

「……すまない、シゲ。」

「ありがとう、シゲさん。」


その後僕達はマッケンジーの家で奪った刀を隠したリジィ湖の畔にある小屋に移動した。そこで人気がないことを確認するとシェリルがその前足で埋めた刀を掘り起こした。刀はすぐに見つかり三本とも無事だった。


「シゲ、見てくれ。俺とシェリルが頑張った結果がこれだ。」


僕はそう言うと誇らしげにその刀をシゲに見せた。


「これでバッチリだろう? 」

「凄いな、ユージーン! これさえあれば明日の裁判はどうにかなるかもしれない。俺と弁護士の先生は二人で色々調べまくったんだが証拠になるものが全く見つけられなくて正直途方に暮れてたんだ。先生はそのうちに『敗色濃厚だけれども勝負を挑もう! 崇高な精神は誤った理論を覆す! 』 とか訳の分からない精神論を言い出すしさ。まぁいい先生なんだけどちょっと気合いが空振りしてるところがあるんだ。……そうそう、裁判が明日に迫っているのは知ってるんだよな? 」

「あぁ、それで慌てて今日シゲのところに現れたんだぜ。ちょっと聞いて欲しい話があるんだ。」

「話? 」


僕とシェリル、それにシゲは三人で小屋のすぐ横に座って明日の裁判への打ち合わせを始めた。いかに三本の刀がこちらの手にあろうとも相手はあのタンケーダ家なのだ。しかも父さんの弁護士はタンケーダ家の息のかかった人間が担当することも分かっている。裁判に必ず出席するという王族の人間にこの三本の刀を見せて直訴し父さんの無実を証明するしか僕らには今のところ手段が無いのだがやはりそれでは不安なのだ。どんな妨害をされるか分からないし王族の人間が裁判とは無関係の僕らの直訴を聞いてくれる保証もない。勝利を間違いないものにする為に僕とシェリルには考えた作戦があった。僕はその説明をシゲに始めた。


「シゲ、ちょっとこれを見てくれ。」


僕はそう言って背中のリュックを下ろすと中から拳銃を取り出した。

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