表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
90/331

復活のシェリル

「じゃあな、ユージーン。」

「はい、では夕方に。」


翌朝、僕とスチュアートさんはそう言葉を交わすと朝日に包まれながら固く握手をした。僕らは昨夜横になった後も眠ってしまうまでお互いの色々な身の上話をしたのですっかり仲良くなったのだ。握手した手を解くとスチュアートさんは僕に背を向けて山をゆっくりと歩いて降りていった。僕はスチュアートさんの背中を見送る。スチュアートさんとこうして会えて良かった、僕は心の底からそう思った。


「とっても良い人だったね、スチュアートさんて。」


スチュアートさんの姿が見えなくなってから僕はシェリルのところへ行って彼女にそう語りかけた。だが彼女は何も答えず軽い寝息を立てている。心なしか彼女の顔色は昨日より良くなっているように僕には見えた。僕は彼女の頭を優しく撫でた後その脇でもう一度寝ることにした。昨夜はスチュアートさんとお喋りをして夜更かししたので睡眠不足なのだ。それに加えて久しぶりに飲んだワインのせいで少し頭も痛い。どうやら軽い二日酔いのようだ。僕は草原の上に横になった。


「う、う〜ん! 」


僕が横になった瞬間に突然シェリルがそう大きな呻き声を出した。どうしたんだろう!? 僕は驚いて飛び起きた。


「シェリル!? どうした!? 」

「……お腹が……空いたわ。」

「え? 」


辿々しい突然のシェリルの空腹の訴えを僕ははっきりと聞き取れなかった。すると彼女は今度は力強くこう言った。


「お腹が空いたわ! ユージーン! 行きましょう! 」

「え!? お腹が空いた? 身体はもう大丈夫なの? 動いて大丈夫なの? 」


困惑する僕を尻目にシェリルはゆっくりと立ち上がった。そして背中に乗るように僕を促している。ついさっきまで寝込んでいたのに今のシェリルはとても元気そうだ。だがこんなに突然体調が良くなるものなのだろうか? 僕は彼女に尋ねた。


「シェリル、こんなに急に動いて大丈夫なのかい? 」

「心配かけてごめんね、ユージーン。もう大丈夫! あとはお腹を一杯にすればいいだけよ! 」


シェリルは僕を背中に乗せると翼をバタバタと羽ばたかせて大空に飛び上がった。シェリルが元気になったのは良かったけれど一体何処に行くのだろう? シェリルは山々がそびえ立つ南の方角に向かってそのまま猛スピードで進み出した。




「着いたわ、ユージーン。」


シェリルはそう言うとスピードを緩めて山と山の間にある大きな湖の畔に着地した。どうやらかなり山奥に入ってきたらしく人影は全くない。シェリルは僕を背中から下ろすと湖の中にジャブジャブと入っていった。僕は彼女に声を掛けた。


「シェリル、何をするつもりだい? 」


だが彼女は何も答えずその大きな身体を頭まですっぽりと水中に潜らせてしまった。暫く彼女は姿を見せない。一体何をしているのだろう? すると突然バシャーンと大きな音がして魚を咥えたシェリルが顔を出した。そしてシェリルはゴクリとその魚を飲み込んでしまった。


「お父さんを見習って菜食主義者になろうと思っていたんだけど、私には無理ね。」


そう言うとシェリルはまた水中に姿を消した。そしてまた暫くするとザブーンと大きな音をさせて水上に姿を現し美味しそうに魚を飲み込んでいる。僕は笑っていった。


「食欲旺盛だね、その分じゃもう大丈夫そうだ! 」

「心配かけたわね、今までは全体力を傷の治癒に集中させていたの。だからずっと言葉も発せずに横になっていたのよ。今日は食べまくって体力回復に努めるわ! 元気になったら明日の作戦も考えないとね! 」

「そうだね、心強いよ。シェリル。」


その後シェリルは湖に潜っては魚を食べるという行為を繰り返し続けた。おそらく食べられた魚の数は百匹ぐらいにはなったんじゃないだろうか? 上手に魚を咥えては飲み込むシェリルの姿を僕は飽きもせず微笑ましい気持で眺めていた。すると一時間程経った時シェリルが急に湖の水面から僕の方に顔だけを出してこう言った。


「ユージーン、聞いて! 魚がいなくなっちゃったわ! 」


シェリルはどうやらこの湖の魚を食べつくしてしまったようだ。それでもまだちょっと物足りない顔をしているドラゴンの食欲って凄いなぁとつくづく思いながら僕は言った。


「そんなに急に食べまくって大丈夫なのかい? 」

「ふふ、大丈夫よ。まぁでも取り敢えず食事はこれで止めておこうかしら、結構お腹は膨れたしね。人間世界では腹八分目っていうんでしょう? 」


シェリルはそう言いながら湖から上がってきた。僕はシェリルに言った。


「シェリル、もう少し暗くなったらスチュアートさんのところに行こうか? 」

「そうね、今はまだちょっと明るいから、もう少し時間が経ってからかしらね。それにその他にも今日やっておかなきゃいけないこと、あるんじゃない? 」

「そうだね、明日の裁判に向けて抜かりの無いようにしなきゃ。その為にはシゲに会わなくちゃいけない。」

「シゲ? ひょっとしてこの前ログハウスで会った人? 」

「そう。彼の力がなきゃ裁判は絶対上手くいかない。今日スチュアートさんに会って写真を受け取ったらそのままシゲの家に行こう。」

「分かったわ。」

「それと明日の裁判でちょっと対策を練っておきたいんだ。シェリル、君の知恵と能力を貸して欲しいんだけど……いいかい? 」

「勿論いいわよ! 実はあたしもあなたに提案したいことがあるの。」


その後暗くなるまで僕らは明日の裁判対策を話し合った。二人で話し合うと様々なアイデアが出てくる。今まで僕の心の大半を占めていた不安が少しだが減った気がした。


「いよいよだな。」


シェリルとの打ち合わせが終わると僕はそう一人言を言った。僕とマイヤー家の運命をかけた戦いがいよいよ明日から始まるのだ。何としても勝たなければならない。僕はその決意を胸にシェリルの背中に飛び乗った。現像された写真を受け取りにスチュアートさんの家へ向かう為に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ