表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
89/331

心強い味方

「そいつはただの弾じゃないんじゃ。破壊力が通常の弾丸よりも遥かに強力じゃ。ただでさえ強力なS & W の威力が倍増するんじゃからこいつは凄いぞ! 」

「なるほど、そうなんですね。」


今までも頑強な盾を持った敵と対峙したことは何度もあった。その時にこの弾丸があったら事の成り行きはまた変わっていたのだろう。もし今後この弾に頼らざるを得ない時が来れば大事に使わなければならない。なんせ一発しかないのだから。スチュアートさんに相槌を打ちつつ僕はそう思った。


「ありがとう、スチュアートさん。」


僕は改めて深々と頭を下げてスチュアートさんにお礼を言った。するとスチュアートさんは軽く微笑みを浮かべただけで話を続けた。


「お前さん、他にワシにして欲しいことはないんか? 」

「えっ? 」


スチュアートさんは僕に頼って欲しそうな感じだった。僕のことをまるで孫のようにでも思ってくれているのかもしれない。けれども御飯を食べさせてもらった挙げ句にシェリルの薬や銃の弾まで持ってきてもらっているのにこれ以上何をお願い出来るだろう? そう思って僕はやんわりとスチュアートさんの申し出を断ろうとした。


「スチュアートさん、もう大丈夫ですよ。これ以上甘えるのはちょっと図々しいです。」

「何を言っておるのじゃ。これからお前さんはタンケーダと法廷で命を賭けた戦いをするのじゃろう? 遠慮はいらん、何でもワシに言え。」


そう言われて僕はひとつだけスチュアートさんにして欲しいことを思いついた。するとスチュアートさんは僕の表情を見て察したようでまた僕にこう言った。


「何じゃ? 言ってみろ。」

「スチュアートさん、実はこのネガを現像して欲しいのです。」


僕はそう言うとリュックからカメラを取り出しそれをスチュアートさんに見せた。


「中にはタンケーダ一家の秘密が写されています。なのでタンケーダの息のかかった者にこれが見られるとあなたにも危害が及ぶかもしれません。こんな危険なお願いをしても……宜しいでしょうか? 」


するとスチュアートさんは笑いながら言った。


「ネガを現像してくれる知り合いなら心当たりがあるぞい。しかもそいつもワシと同じでタンケーダ一家のことは大嫌いじゃ、大丈夫! 」

「ありがとうございます。」


僕はスチュアートさんにまた頭を下げた。そしてこう続けた。


「このいざこざが終わったら必ずお礼をさせて頂きます。」

「馬鹿者、別に礼なんていらんのじゃ! ……じゃがそうじゃのう、それなら一度お前さんの親友の背中に乗せてくれんか? 元気になってからでええからのう。ワシは一度でいいから空を飛んでみたいと思っておったのじゃ! 」


このお願いに僕は即答出来なかった。シェリルがそもそもなんて言うか分からなかったからだ。だがその時僕の背後から突然声が聞こえた。


「……いいですよ、スチュアートさん。」


声の主はシェリルだった。シェリルはおそらく僕達の話を聞いていたのだろう。スチュアートさんが驚いてシェリルの方を見た。


「へーっ! お前さんの親友は喋れるんじゃな! こりゃおったまげた! 」

「スチュアートさん、あなたが私とユージーンにしてくれたこと、一生忘れません。私の背中ごときでよろしければいつでも乗って下さい。私は明日の朝には元気になりますから。ユージーン、明後日の裁判、私にも出来ることは何でも言ってね! 」


シェリルはうつ伏せのまま長い首をこちらに向けてそれだけ言うとまた目を閉じて眠ってしまったようだった。おそらく彼女は目を閉じながらも僕達の会話を常に聞いていてスチュアートさんを信用に値する人物だと判断したのだろう。怪我を一日でも早く直す為にじっとして自分の身体に備わる自然治癒力を最大限活用しようとしている、彼女はそんな感じだと僕は思った。そしてシェリルの言葉を聞いていたスチュアートさんは暫く彼女の寝顔を見てからポツリと言った。


「お前さん、良い友達を持ったのう。大事にせいよ。」

「はい。勿論です。」


僕がそうニコリと微笑んで返事をするとスチュアートさんも笑った。そしてスチュアートさんは煙草を取り出しマッチで火をつけながら僕にこう言った。


「今日はもう遅いしここで寝てから明朝帰るわ。そんですぐ現像をしといてやるから明日の夕方にネガを持ってきてやるわい。」

「スチュアートさん、明日もここまで来てもらうのはちょっと申し訳ないです。シェリルの様子次第ですけど僕らがスチュアートさんの家を訪ねますよ。家はどちらなんです? 」

「ワシの家はこの向こうに続いておる獣道をまっすぐ下っていけばあるんじゃ。赤いレンガ造りの家で他には何もないからすぐ分かる。」


そう言うとスチュアートさんは山の一方向を指差した。僕は言った。


「シェリルはおそらく自分の身体のことは分かってると思うので明日の朝には本当に良くなっていると思います。家で待っていて下さい。」

「……そうか、分かった。」


スチュアートさんと僕はその日はほろ酔いのまま草むらの上で雑魚寝をした。スチュアートさんの応援とシェリルの復活で明後日の裁判も何とかなる! 今日の出来事は僕の心にそんな希望の光を灯すものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ