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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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手負いのドラゴン

「シェリル! 大丈夫か!? 」


僕はそう声を掛けつつシェリルのもとに駆け寄ろうとした。だが僕も着地の衝撃で全身が痛い。駆け寄るつもりがそんな機敏には動けずヨロヨロと歩み寄る形になってしまった。


「う、う〜ん。」


シェリルは目を瞑ったままそう言っただけだった。ダメージは相当のものらしい。だが取り敢えず今は生きている。ドラゴンは生命力が強いと聞いたことはあるが早く手当をしなければ安心は出来ない。僕はシェリルの左肩に深々と突き刺さった刀を抜くことにした。


「シェリル、身体を動かせるかい? 」


うつ伏せだと柄の部分が身体の下敷きになってしまっていて刀を抜くことは出来ない。僕はうつ伏せ状態のシェリルの身体を起こして横向きにしようとした。そうすればシェリルの身体の正面から真っ直ぐに肩を貫いている刀を水平に引っ張ることによって抜くことが出来ると思ったからだ。僕は節々が痛む身体に鞭打って彼女の身体を横から思いっきり押して回転させようとした。


「ふーん! ふーん! 」


だが彼女の身体はビクともしない。人間の僕にとって彼女の身体は大きくて重たすぎるのだ。僕は仕方なく彼女に言った。


「シェリル、横向きになってくれないか? 」

「……うん、う〜ん。」


だがシェリルは唸るだけで全く身体を動かそうとしない。僕はもう一度彼女に言った。


「シェリル、頼むよ。横向きになってくれよ。」

「……わ、分かったわ。」


彼女はようやく身体を起こすと横向きになってくれた。だがその動作は物凄くゆっくりだ。いつもの動きとは全然違う。そのことが彼女の身体の状態の悪さを物語っていた。


「ありがとう、シェリル。」


僕はそう言うとシェリルの左肩に刺さった刀の柄の部分に手を掛けて思いっきり引っ張った。


「ふーん! 」


僕は思いっきり力を入れたが巨人トロール用の大きな刀はビクともしない。でもこればかりは諦める訳にはいかないのだ、大事なシェリルの命が掛かっているのだから。僕は何度も力を入れてその刀を引っ張った。 すると少しずつだが刀がシェリルの傷口から引き抜かれていった。


「……い、痛い。」


彼女が小さな声でそう言って顔をしかめた。だがここで止める訳にはいかない。僕はその声を無視して汗まみれになって刀を引っ張り続けた。


「カラーン! 」

「ふぅ! 抜けた! 」


格闘すること十分、ようやく巨人トロールの刀は抜け落ちた。だが刀が抜けたことによってシェリルの傷口からは血がどくどくと流れ出始めた。しまった! 無闇に刀は抜かない方が良かったのだろうか? 僕は取り敢えずシェリルの傷口を両手で押さえたが出血はとても止まりそうにはなかった。どうしよう!?


「そうだ! ネックレス! 」


僕は咄嗟に胸のネックレスを手に取るとそれを傷口へ押し当ててみた。見えないエネルギーが放出されているこのネックレスはシェリルの回復に役立つ筈だと思ったからだった。


「……う、うう。」


シェリルはそう痛そうに唸る。だがシェリルの傷口から流れ出る血液の量は少しずつだが少なくなっていった。やはりこのネックレスには力があるのだ。僕はそれから暫くの間夢中でネックレスを彼女の傷口へ押し当て続けた。そうして一時間程経った頃だろうか? ようやく出血は完全に止まった。


「おばあちゃん、このネックレス、凄いよ! 」


僕は思わずそう呟いていた。そういえば僕のおばあちゃんは風邪一つ引かない丈夫な身体だったって父さんに聞いたことがあるな、やっぱりそれってこのネックレスの見えない力のお陰なのかな? 僕がそうな風におばあちゃんのことを考えている時だった。


「ガオーッ! 」


突然そう何者かが吠えた。そして地面をゆっくりと歩く振動が伝わってくる。また巨人トロールか? 僕は慌てて背中に背負ったリュックを下ろすと中にある回転式の拳銃を取り出した。だが弾倉の中を見るともう弾がない! でも確かリュックの底の方に予備の弾がまだあったな。そう思って僕はリュックの中を弄った。すると予備弾が六発出てきた。シェリルの蔵でこの銃を見つけた時に弾も何発かあったのでそれもついでに盗んでおいたのだ。取り敢えず六発あれば巨人トロールでも小さいのであれば何とかなる。僕は巨人トロールがまだその姿を現さないうちに装填を終えた。


「ギャオーッ! 」


また大きな吠声が聞こえたかと思うと目の前の木と木の間から巨大な熊が姿を現した。体長は二m程あるだろうか? かなり大きな熊だ。だが僕は大して驚くことはなかった。


「なんだ、熊か。」


普通なら恐怖で足がすくんでしまうほど恐ろしい熊なのだが僕は思わずそう呟いていた。巨人トロールとの戦いを経験した僕にとって熊はそれ程恐ろしい存在には感じられないのだ。こんな感覚は数ヶ月前の僕では想像すら出来ないものだったであろう。僕は一人で苦笑いしつつ熊に銃口を向けた。


「ガオーッ! ガオーッ! 」


熊は僕を執拗に威嚇してきた。そこで僕はふと思う。この熊の目的は何なのだろうかと。僕を食べたいのかな? それとも僕を追い払った後地面に倒れているシェリルを食べるつもりなのかな? だがどちらにせよ殺すのは可哀想だと思った僕は熊に対して空中へ威嚇射撃をした。


「ズダーン! 」


すると熊は吠えるのをやめて僕に背を向け大急ぎでその場から逃げ出した。ふふっ、巨人トロールに比べればかわいいもんだ。僕はそう思いながら一人微笑んだ。

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