強敵
「ズシーン! ズシーン! ズシーン! ズシーン! 」
炎の攻撃を左手に持った盾で防いだ巨人が地響きを立ててシェリルに迫っていく。そして巨人は右手に持った剣を高々と振り上げた。その剣でシェリルを真っ二つにする気なのだ! 僕は叫んだ。
「シェリル! 危ない! 」
するとシェリルは背中の翼を羽ばたかせて後ろへ大きくジャンプして巨人の攻撃をかわしつつ開いた扉から建物の外へ出た。巨人の剣が空を切り地面に突き刺さる。だが巨人はすぐに剣を地面から引っこ抜くとまた盾に身を隠しつつ自らも建物の外に出てシェリルに向かって走り出した。するとシェリルは炎の攻撃が効果がないと判断したのかまた翼を羽ばたかせてジャンプすると鋭い爪を持った足で巨人に蹴りを入れようとした。
「ガシッ! 」
だが巨人はその蹴りを盾で受け止めるとまた攻撃に転じた。着地したシェリルに剣を振りかざす。シェリルはそれを間一髪身体を捩ってかわすと至近距離から炎を浴びせた。
「ボオオオーッ! 」
だが巨人の反応は早い。すぐに盾を前面に出して炎の攻撃から身体を護った。そしてすぐに反撃に移る。今度は剣を振り下ろすのではなく真っ直ぐにシェリルに向かって突き出した。その動きは素早い。シェリルはその攻撃をかわすことが出来なかった。
「ザクッ! 」
「きゃぁ〜っ! 」
シェリルが大きな悲鳴を上げた。シェリルの左肩に剣が正面から深々と突き刺さっている。まずい! あの巨人は強い、このままではシェリルは負けてしまう。僕も巨人に続いて扉から建物を出た。そしてシェリルと揉み合う巨人の背後へ走り寄りながらリュックを背中から下ろすとその中から銃を取り出した。
「こいつを至近距離からぶち込めば、多少効果はある筈だ! 」
僕はミールの蔵で盗んだ回転式の大型拳銃を手に巨人の背後に近付いていった。走りながら弾倉の中を確認する。弾は六発きちんと入っている、よし!
「……よくも……やってくれたわね! 」
シェリルが巨人を睨みつけながらそう言葉を絞り出している。剣は根元までシェリルの左肩に突き刺さっていて物凄い出血だ。シェリルは自分の懐に飛び込んできた巨人にダメージを負わされながらもその長い首の先にある鋭い牙で巨人に噛みつこうと反撃した。だが巨人はその攻撃をかわすとシェリルの腹に強烈な蹴りを決めた。
「ぐえっ! 」
シェリルはその蹴りの衝撃で後ろに吹っ飛ばされて仰向けに倒れ込んだ。肩には深々と剣が突き刺さったままだ。そこへ巨人が更なる一撃を加えようとシェリルに走って近付いていく。シェリルはダメージが大きそうでもう反撃出来そうにない! まずい、このままではシェリルは殺される! 僕は立ち止まると銃で巨人の後頭部を狙った。
「頼む! 当たってくれよ! 」
僕はそう呟きながら狙いを定めた。身長が五mもある巨人にこの銃がどこまで通用するかは分からない。ひょっとすれば命中させたところで何も効果はないかもしれない。そうなればシェリルは殺されてしまうだろう。だが今はこれしか手がないのだ。僕は今から自分が放つ弾丸があわよくば巨人の頭を吹き飛ばしてしまうことを祈りながら引金を引いた。
「ドオーン! 」
「ギャッ! 」
目の前に十字の炎が広がったかと思った瞬間巨人が短い悲鳴を上げた。どうやら命中したらしい。よく見ると巨人は右の耳から出血している。どうやら僕の放った弾丸が耳たぶの一部を吹き飛ばしたらしい。全く効果がないという訳ではないのだ!
「ざまあみやがれ! もう一発だ! 」
僕はそう叫ぶと撃鉄を起こしまた巨人の後頭部を狙って銃を構えた。殺すことは出来ないかもしれないがダメージは十分与えられる。巨人は走るのをやめて右手で右耳付近を痛そうに押さえている。おそらく背後から撃たれたことにまだ気が付いていないのであろう。このノロマめ、もう一発叩き込んでやる! 僕は引金を引いた。
「ズダーン! 」
「グギャッ! 」
巨人は再び小さく短い悲鳴を上げた。次の銃弾は巨人の肩辺りに命中したようだ。巨人はようやく背後から撃たれたことに気が付いたらしく僕の方を振り返った。これでシェリルへの攻撃はやめさせることが出来たが次は奴は僕に向かってくるだろう。何とかしなければならない。
「独活の大木め! かかってきな!」
シェリルからの注意を逸らす為に僕はわざと大袈裟に挑発した。このまま巨人が僕の方に向かってきてくれればシェリルへの攻撃は取り敢えず止まる。だがその後は僕がこいつを倒さねばならないのだ! 至近距離から頭部に銃弾を叩き込めればこいつを殺せる可能性はあるだろう。だが戦い慣れしたこの巨人にそこまで接近することはおそらく不可能に近い。それであれば目や喉といった急所を狙い撃ってその隙に逃げることぐらいしか出来ないだろう。僕はあと残り四発の弾丸に賭けるしかなかった。




