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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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目標発見!

「それっ! 」


僕とシェリルはそう掛け声を出して両開きの扉を左右同時に開けた。扉は鋼鉄製で大きくかなり重たいものだったが下に車輪が付いていたようで想像していたよりも遥かにスムーズに動いた。僕とシェリルは建物の中を覗く。中は床がコンクリートで作られていて間仕切などはなく物品を何も置いていない倉庫のような大きなスペースが広がっているだけだった。照明の設備が少なく遮蔽物が何もないのに巨人トロールの姿が見えない。巨人トロールは何処だ!? するとシェリルがドラゴンの視力で巨人トロールを見つけたようでこう言った。


「ユージーン、いたわ! 右手の奥に三匹、更にその奥にも一匹いるようね。どうやらお食事中のようよ。」


シェリルが教えてくれた方向に僕は目を凝らす。すると三匹の巨人トロールがコンクリートの上に輪になって胡座をかき何か餌のようなものをムシャムシャと頬張っている様子がようやく僕の目にも飛び込んできた。身体の大きさはどれも三m程といったところだろうか、比較的小さな巨人トロールだ。食事に夢中で僕らには全く気が付いていない。いつも聞かされる耳を劈くような巨人トロールの咆哮の歓迎がなく今日は静かだった。


「やはりコイチ達は巨人トロールをその敷地の中で飼育していたか! 」


僕は思わずそう叫んでいた。やはり予想した通りだったのだ。このことを全て世間に知らしめればタンケーダ家は間違いなくヘフナー王によって取り潰される、ざまぁみやがれ! だが僕がそう思った時慌てふためいた数人の男の声が聞こえてきた。


「誰だ!? 防護隔壁を開けたのは? 巨人トロールが逃げちまうぞ? 」

「早く閉めろ! 」


どうやら巨人トロールの飼育に携わっている人間が何人かいて扉が開かれたことに気が付いたようだった。邪魔をされると鬱陶しい。早く写真を撮らねば! 僕はシェリルに叫んだ。


「シェリル! 炎! 」

「はいよ! 」


巨人トロールを見かけたらシェリルが口から炎を吐くというのを僕達は事前に決めていたのだ。これはカメラの撮影に十分な明るさを得る為だった。シェリルは自分の父親から引き継いだ炎を操る能力を持っているから彼女にとってはこれはいとも簡単な行為らしい。彼女は瞬く間に口から炎を吐き出して松明のように灯した。周囲が一瞬で昼間のように明るくなる。


「おい! ドラゴンだぞ! 」

「一体どうなっているんだ!? 」


建物の中には白衣を着た男が数人いた。どうやらその男達は食事に夢中でおとなしくなった巨人トロールの様子を見守っていたようだ。彼らはおそらく人目のつかない夜に巨人トロールを建物から外に出して戦闘の訓練を行いそれが終わるとこの中で餌を与えたり休ませたりしているのだろう。男達は右往左往している。そして餌を食べ終えた巨人トロール達がようやく振り向いてシェリルとその口から灯される炎の方を見た。すると巨人トロールは急に興奮して暴れ出した。建物の壁や地面を殴ったり蹴ったりする巨人トロールの姿は間近で見ると本当に恐ろしい。僕はカメラをリュックから取り出し巨人トロールに向けてシャッターを何度も押した。


「ちゃんと写っててくれよ! 」


この写真がきちんと現像されればそれはタンケーダ家の魔物の飼育の強力な証拠となりうる。だが僕はカメラを扱うのは初めてなのだ。僕はそれこそ巨人トロールがしっかりと撮影されていることを祈りながらシャッターを押し続けた。


「グギャオーッ! 」


暫く建物の中で暴れていた巨人トロール達だったが彼らは急に僕らのいる建物の扉の方に向かって叫び始めた。彼らの目線の先にはシェリルがいる。僕は炎を灯し続けるシェリルに叫んだ。


「シェリル! 巨人トロール共が君を睨みつけているぞ! もう写真は撮れたから逃げよう! 」


その声を聞いてシェリルはようやく炎を吐くのを止めた。だが次の瞬間三体の巨人シェリルが一斉にシェリルに向かって走り出した。


「ぎゃぁっ! 」


逃げ遅れた一人の白衣の男がたまたま巨人トロールの走る方向にいたらしい。その男の存在に気が付いた一匹の巨人トロールが足を止めた。そして巨人トロールは躊躇うことなくその白衣の男をその手に掴むと口の中に放り込んだ。僕は思わず目を逸らす。こんな凶暴な魔物を飼おうなんてとんでもないことをよくコイチの親父は考えつくものだ。その悲惨な殺戮劇に最初は目を背けていた僕だが暫くしてから僕はその巨人トロールにもカメラを向けた。こんな非常事態であるからこそ真実を写さなければならないと思ったからだ。そして巨人トロールは美味しそうに白衣の男をムシャムシャと噛み潰した後何事もなかったかのようにシェリルの方に向かってまた走り出した。


「逃げろ! 飛べっ! シェリル! 」


僕がそう叫んだがシェリルは逃げない。それどころかシェリルは巨人トロール達を睨み返している。


「どうした!? 何故逃げない? シェリル! 」


僕がそう叫ぶとシェリルは少し怒った様子でこう答えた。


「どうしてかは分からないけれどこの巨人トロールってのは見ているだけで腹が立つのよね! 売られた喧嘩なら買ってやるわよ! 」


シェリルはそう言うと次の瞬間目と口を閉じた。そして数秒経った後に目と口を大きく開くと口から炎を吐き出した。しかもその炎はさっきまでの松明の炎よりも桁違いに大きな炎だった。そしてその炎は一匹の巨人トロールにまっすぐ向かっていった。

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