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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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湖の畔にて

「バッシャーン! 」


僕は思い切って夜の川に飛び込んでみた。幸いにも川底に身体をぶつけて怪我をするというようなことはなかったものの周囲は真っ暗で訳が分からない。自分が上を向いているのか下を向いているのかさえも分からないのだ。耳の穴に水が入ってきてブクブクという水中での泡の音しか聞こえず視界もゼロ、僕はどうすればいいのか分からなかった。


「ゴホッ! ゴホッ! 」


水を飲んでしまったようで僕は水中で咳き込んだ。身体がなかなか浮かび上がらず呼吸も出来ない。そのうち息が苦しくなってくる。そんな深い川には見えなかったけど何故水面に浮かばないのだろう? まずい、このまま溺れてしまうのか? 僕は必死に足をバタつかせて水面まで上がろうともがいた。


「ゲホッ! 」


長い時間に感じたが実際は数秒だったのかもしれない。僕はようやく水面に頭を出すことが出来た。


「クゥーン! 」


シェリルも必死に僕の胸にしがみつきながら水面上に頭を出しそう鳴き声を上げた。良かった! シェリルも無事だ! 水中ではぐれたりすることもなかった!


「飛び込んだようだぞ! 」

「探せ! 」


背後から追っ手のそんな声が聞こえる。僕は背中に背負った木箱が浮き袋のようになってプカプカと浮いたまま川を流されていった。このまま暫く川の流れに身を任せて流された方が追っ手との距離を稼げる、そう判断した僕は背中の木箱を枕のようにして仰向けに水面に浮いたままシェリルを胸の上に抱いてラッコのように川下へ流されていった。


そのまま十五分か二十分ぐらい流されていただろうか? 追っ手の気配が完全になくなったので僕はようやく川岸に上がろうと思った。結構下流にきたらしく川の流れはかなり緩やかになっている。僕は足をバタつかせて陸の方に身体を寄せていき遂に自らの足で岸に立ち上がった。


「クゥーン! 」

「ふふ、くすぐったいよ、シェリル! 」


シェリルが二人の無事を喜ぶかのように僕の顔をペロペロと舐めた。シェリルも怪我はしていなさそうだ。だがずぶ濡れで重さの増した服と背中の荷物が僕の身体にズッシリとのしかかっている。夜通し動きっぱなしだったこともあり僕はかなりくたびれていた。


「……もう夜明けまで時間がないな。」


東の空を見ると地平線が赤く染まりつつある。おそらく朝を迎えるまであと一時間ぐらいだろうか? 一時間ではおそらくカ・ツカレー山のログハウスまで戻ることは出来ないだろう。昼間の移動は発見される危険が大きいので僕は今日の夜までの隠れ家を何処かに探さねばならない。


「取り敢えず川の畔から離れなければ! 」


追っ手は僕が川に飛び込んだことを知っているのでおそらく川沿いを中心に僕を探してくるだろう。夜明けまでに川からどれぐらい離れられるかが勝負だ。僕は疲れた身体に鞭を打ってトボトボと川岸に広がる白い砂地を歩き始めた。くそっ、いつまで太陽の下を歩けないこんな生活が続くんだよ、全く!



僕の住むクオーリーメン町は東西に伸びた町で南にはオーイと呼ばれる山脈があり北には海が広がっている。なので方角は非常に分かりやすい、山がある方が南なのだから。カ・ツカレー山はオーイ山脈の中の一つの山でありそういう意味では位置の見当は非常にしやすかった。僕のいる方角からは取り敢えず南の方角に行けばカ・ツカレー山に近付ける筈なのだ。なので僕は白々しく明ける朝やけの中を南に進んだ。僕は白い砂地から人気の少ない農道を通っていくつもの田んぼや畑を歩き抜けカ・ツカレー山の方角を目指した。だがやはり一時間やそこいらで辿り着くことは出来なかった。そろそろタイムリミットなのだ。太陽が空高く昇ろうとしている。


「この辺りで一旦小休止するか。」


僕はとある小さな湖に辿り着きその畔で腰をおろした。すると急に眠気に襲われる。だがそれは致し方ないことであろう。僕の生活のリズムが完全に昼と夜が逆転しているのだから。僕は眠い目を擦りながらふと周囲を見渡す。あれ? ここはどこか見覚えのある風景のような気がする。


「ひょっとして……ここはリジィ湖だ! 」


周囲に堤防が構築されその堤防の上に並木道が整備された天井川に続く湖、そうだ! ここは昔シゲとよく遊んだリジィ湖に違いない! シゲと万が一の時の為に決めた待ち合わせ場所のヤシア川の河口の上流にあるこのリジィ湖にも僕達は昔よく来たから分かるのだ。僕は湖の畔にある小さな小屋を見つけると立ち上がってそこまで歩いていった。この小屋は小さい頃のシゲと僕の秘密基地だった場所だ。懐かしいなぁ。


「シェリル、ここで休憩していくかい? 」

「クゥーン。」


僕らは壊れた扉からその小屋の中に入り食事を始めた。リュックから缶詰を取り出すがもう残り少ない。食べる物がなくなったら本当にコイチの家の敷地に潜入してまたメロンでも盗むしかないのかな? そんなことを考えながら僕はムシャムシャとサーモンの缶詰を平らげた。シェリルも鮪の缶詰をペロリと食べる。お腹はまだ空いているがあまりガツガツ食べることは出来ない。シェリルもいつものように催促はしてこなかった。おそらく彼女は食料が残り少ないことを知っているのだろう。気を遣わせちゃってごめんね、シェリル!

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