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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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包囲網を突破せよ

「クゥ〜ン。」


シェリルが僕の顔をペロペロと舐める。う〜ん、もう起きないといけない時間なのかな? 昨夜シゲに言われた通り僕は今日ミールの家に行く予定なのだ。そこでミールとどうにかして会って彼女の父親のことを上手く聞き出さなければならない。昼間はコイチの家の人間に見つかる危険性が高いので彼女の家まで移動するのは早朝のうちでないと駄目なのだ。なので今日は朝の三時半に起きて四時に出発しようと思っていたのだけれど時計を見るとまだ二時半だ。寝過ごさないように起こしてくれたのは嬉しいんだけどあと一時間後にして欲しかったよ……シェリル。


「クゥ〜ン、クゥ〜ン。」


シェリルはしつこく僕の顔を舐めてきた。心なしかシェリルの声が不安げでいつもと違う気がする。どうしたのだろう? 僕は何か嫌な予感がした。するとその時だった。


「ガサガサッ! 」


ログハウスの窓の外から何か物音がするのが聞こえた。誰かいる! 僕は飛び起きてライフル銃を手に取り窓から外の様子を窺った。


「えっ! 」


僕は窓の外を見ると驚いてしまった。暗闇の中十五人ほどの弓や斧で武装した人間が近付いてくるのが見えたからだ。だがよく見るとその人間は皆背が低く腰が曲がっている。どうやらそれは人間ではなくゴブリンのようだ。武装したゴブリンが僕のいるログハウスを取り囲むようにして近付いてきているのだ。そういえばこのログハウスを初めて訪れた時も一匹のゴブリンに遭遇している。この辺りはゴブリンの縄張りなのだろうか?


「……クゥ〜ン。」


シェリルが心配そうに鳴き声を出す。シェリルは差し迫った危険を僕に知らせようと僕の顔を舐めていたのだ! だがどうする? これだけの数のゴブリンを相手にしては勝ち目はない。ライフル銃の弾丸はあと数発しかないのだ。戦ったとしても弾切れになったところで弓で串刺しにされ斧で切り刻まれるのが目に見えている。


「一発ぶっ放してビビらせてからダッシュで逃げるぞ、シェリル! 」


僕はシェリルにそう言うとログハウスのドアを勢いよく開けた。そしてシェリルを肩に乗せたままライフル銃を構えると仁王立ちになりゴブリン達を威嚇するようにこう叫んだ。


「それ以上近づけば殺すぞ! 」


だが僕の発した言葉に返ってきたのはゴブリンの放った弓矢だった。ログハウスの開けたドアにいきなり数本の弓矢が突き刺さった。あと数十cmずれていれば僕の身体を貫いたであろうその弓矢を見て僕は驚き慌ててログハウスの入口の陰に身を隠した。早く逃げなければ本当に殺されてしまう! 僕は焦った。


「……ソイツ、ヨコセ。」


またゴブリンが片言を喋った。そんなにこのライフル銃が欲しいのだろうか? だがライフル銃は僕にとっても必要なものだ。渡すわけにはいかない。


「ソイツ、ヨコセ! 」


ゴブリン達の口調は徐々に強くなり僕との距離も少しずつ詰めつつある。ゴブリン達の中で弓矢を持っているのはおそらく四〜五匹といったところだろう。僕は次にその四〜五匹のゴブリンが弓を放ったら直後にダッシュして敵陣の中央を突破することに決めた。その為にはゴブリン達にもう一度弓矢を放たせなければならない。僕はログハウスの入口の物陰からまるで挑発するように自分の姿を一瞬晒した。


「ヒュン! 」


すぐに身を隠した僕だったが矢はまた唸りを上げて飛んできてログハウスの入口付近に数本が突き刺さった。今だ! 僕はログハウスから飛び出すと威嚇の意味も含めて一発の銃弾をゴブリンがいるであろう付近に闇雲に放った。


「ズダーン! 」

「どけっ! ゴブリン共め! 」


銃声で怯んだゴブリンの脇を抜けて僕は包囲網を突破しそのまま山道を下った。ゴブリン達は銃声で余程驚いたのか全く反撃してこない。包囲網を抜けて距離さえ取ってしまえば僕は逃げ切れる。ゴブリンは足が遅いからだ。僕は無我夢中で走った。僕のすぐそばに何本かの弓矢が飛んできたが幸運にもそれらは当たることはなかった。そうして走り続けること三十分、僕は何とか逃げおおせることが出来た。


そのまま僕は人気のない早朝のうちに歩き続けてミールの家の近所に到着した。僕はとある民家と民家の塀の間に入り込みシゲが持ってきてくれた新しい服に着替えた。ヨレヨレの服を着ていてはますます犯罪者のように見られるのではないかと思ったからだ。洗濯された服を着るのはとても気持がいい。着替えてなんとなく気分もスッキリした僕はそのままミールが家の外に出てくるのを待つことにした。だが一日中家から出てこないこともあるだろうしひょっとしたら何処かに旅行に行ってしまっている可能性もある。何日ここに張り込まなければならないのかは分からないのだ。僕は塀の間から出てミールの家から二百m程離れたところに生えている街路樹の陰に陣取り彼女をのんびりと待つことにした。


「あの家から出てくるミールって女の子と会うのが今日の目的だよ、シェリル。」

「クゥ〜ン! 」


僕が肩に乗るシェリルにそう話しかけるとシェリルはまるでその言葉を理解しているかのように鳴いた。ふふ、シェリルがいるから長期戦になっても退屈はしそうにないかな。あとは人目につかないようにするだけだ。

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