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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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「魔物の飼育についての報告」

「魔物の飼育についての報告」


白く分厚い表紙にそう黒い字で書かれた物々しい本を僕はリュックから取り出すとシゲに見せて言った。


「この前コイチの敷地の中で巨人トロールに出くわした時に拾った本だ。本のタイトルからして胡散臭い匂いがプンプンしないか? 」

「こ、これは……! 」


シゲはそう言いながらその本を手に取ると暫く食い入るようにその本の中身に見入っていた。そして五分程経った時シゲは顔を青くしながらこう言った。


「……これは大変なことになるぞ。」


シゲの真っ青な顔を見ながら僕は何事かと思って聞いた。


「どうしたんだ? 」

「ユージーン、お前この本の中身をまだ読んでいないのか? 」

「あぁ。」

「とんでもないことが書いてあるぞ! 掻い摘んで言うとコイチ達は巨人トロールを自分達でコントロール出来るように育てて軍事利用しようとしているんだ! 」

「軍事利用? 」

「タンケーダ家は巨人トロールを使ってヘフナー王のいる城を攻め落としクーデターを起こそうとしているんだよ! 」

「クーデターだって!? 」

「この頁を読んでみろよ。」


僕はシゲから「魔物の飼育についての報告」を受け取るとシゲの指し示す頁に目を通した。すると衝撃的なことが書いてあった。


巨人トロールに武器と防具の使い方を教えることが出来ればそれはとてつもない戦力となる。巨人トロール一体が兵士五十人の戦力に相当するであろう。ヘフナー王の城には常時三百人の王兵がいるので巨人トロールが六体以上いれば攻め落とすことも可能である。我々は四体の巨人トロールを飼育しているが知能が低い為武器と防具を使いこなせる巨人トロールは現在のところ一体のみである。ヘフナー王の城を攻略する為には更に飼育する巨人トロールの数を増やして武器と防具の使い方の習得のさせ方を研究せねばならない。」


僕は驚いて腰を抜かしそうになった。


「シゲ、これって……! 」

「あぁ、立派なクーデターの計画書だぜ! 恐ろしい計画だが今ならこれを潰せる! そしてタンケーダ家を追い詰めれる! 」


僕とシゲは知らぬ間にガッチリと握手を交わしていた。シゲは興奮気味に言った。


「まずは先生にこれを見せるよ。だがやり方は考えなきゃいけないな、直接王族の人間に訴えなければタンケーダ家の取り巻きに揉み消されてしまうだろうからな。」

「頼むぜ、シゲ! 」


僕らは大いに盛り上がった。コイチ一家を追い詰めることが出来れば僕はもう捕まるのを恐れてコソコソしなくてもよくなるのだ。地下牢や巨人トロールの秘密を知っている僕を探し回っているのは警察や王族ではなくあくまでコイチ一家なのだから。


「とにかく時間がない。二週間後の裁判の日まで精一杯俺達で証拠を集めよう! だがコイチ一家も俺達の動きを知れば妨害をしてくるだろう。ユージーン、なんせお前は絶対に奴らに捕まるなよ! 」

「あぁ、分かった。」

「もし万が一奴らにお前がこのログハウスにいることがばれて逃げなくてはならなくなったら俺に遠慮することはない、このログハウスを棄てて逃げてくれ! そうなればコイチ一家は俺の家に対しての監視を強めてくるだろうがな。その時は無理に俺に連絡を取ろうとするなよ、捕まってしまうからな。少なくとも二週間後の裁判までは何とか逃げ回ってくれよ。」

「分かったよ。」

「もしここを追われることになったらヤシア川の河口で落ち合うことにしておこうか? 」

「そうだな、分かった。」


ヤシア川の河口というのは昔二人でよく遊んだ場所なのだ。シゲの家からはちょっと離れていて人気もないところなので落ち合うには絶好の場所だった。


「二週間後の裁判でお前の両親の無実とコイチ一家の陰謀を示すものを王族の人間に提示する、これが俺達の最終目標だ! 厳しい戦いになるだろうが頑張ろうぜ! 」


そう熱く語ってくれるシゲは頼もしくそして有難い。僕とシゲは最後に強く握手をした。そしてシゲは急いで家に帰っていった。もう周囲は暗い。シゲが置いていってくれた腕時計を見るともう夜の八時だ。シゲが家に帰るのはおそらく夜の十一時を回るだろう。そこまでしてシゲは僕に会いに来てくれたのだ。僕の心はシゲに対する感謝の気持ちで一杯だった。


「クゥ〜ン。」


僕とシゲのやり取りをじっと黙って聞いていたシェリルが甘えた声を出して僕の肩に乗り頬を擦り寄せてきた。僕は彼女の頭を撫でながら言った。


「お前はお利口さんだなぁ、ちゃんと黙って話を聞いていたね。よしよし。」


僕は缶詰を二つ取り出して開けるとシェリルと遅い夕食を取りその日はもう寝ることにした。明日からはまた忙しくなる。今日はゆっくり休んで英気を養うことにするか、僕はそう思うと毛布に包まった。

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