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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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鍵を握る男、マッケンジー

「おーい、ユージーン!居るか? 俺だ! シゲだ! 」


ドアの向こう側から聞きなれた声が響いた。良かった、来てくれたのはシゲだったのだ! 僕は椅子から立ち上がるとライフル銃を部屋の隅に置き慌ててドアに駆け寄った。


「シゲ! 」


ドアを開けるとシゲが大きな荷物を背負って立っていた。だが僕が笑顔なのとは対照的にシゲは不審そうな顔をしている。どうしたのだろう?


「シゲ? 」

「……ユージーン、なんで裸なんだ? 」


その時僕は初めて気が付いた! 僕は洗濯と入浴を川で済ましたままで素っ裸だったのだ! 僕は慌ててログハウスの中にあった毛布に身体を包みながら答えた。


「さっきまで川で洗濯をしていてついでに身体も洗ってたんだよ、ごめんごめん! 」

「そ、そうか。いきなり全裸だったからちょっとびっくりしたぜ。」


シゲはそう言うと苦笑いしながらログハウスの中に入ってきて椅子に座った。僕もシゲを招き入れた後ドアを静かに閉めてからテーブルを挟んでシゲの正面向かい側の位置に座った。そして僕はログハウスの中にあった蝋燭をテーブルの上に取り出すと火をつけて明かりを灯した。ほんのりと部屋の中が明るくなる。僕は急いでログハウスの窓のカーテンを閉めた。シゲは背中に背負った登山にでも使いそうな大きなリュックを足元に下ろすとふぅと一呼吸置いて僕に話し掛けてきた。


「ユージーン、大丈夫か? 」

「あぁ、なんとかな。」

「そのアライグマはどうしたんだ? 」


シゲは僕の足元にまとわりついているシェリルに気が付きそう言った。


「昨日森の中で怪我をしていたから助けたんだ。なんとなく放っておけなくてさ。彼女は友達さ。名前はシェリルっていうんだ。」

「いや、待てよ。アライグマじゃないな。よく見るとレッサーパンダのようだ。」

「レッサーパンダ? 」


僕はレッサーパンダなんて名前を聞いたことすらなかった。僕はシゲに聞いた。


「珍しい動物なのかい? 」

「あぁ、俺も図鑑で写真を見たことがあるだけで実物を見るのは初めてだ。でもおかしいな、確かその図鑑にヘフナー王国にはレッサーパンダは生息していないって書いてあったと思うんだがな。それとも俺の勘違いかな? 」

「……クゥ〜ン。」


シゲがそう言いながら疑うような目つきでジロジロと覗き込んだのでシェリルは怯えたような声を出した。僕はシェリルを優しく抱き上げると膝の上に乗せてからシゲに言った。


「まぁ彼女のことはいいじゃないか。それより本題に入ろう。」

「あぁ、そうだったな。だがその前にこれを渡しておくよ。」


シゲはそう言うとリュックの中から色々なものを取り出して僕に見せた。


「まず下着だ。それにTシャツとズボン、それから歯ブラシと歯磨き粉にシャンプーと石鹸、タオルも何枚か持ってきたぞ。服は俺のお古だけど無いよりはマシだろ? 」


そう言いながらテーブルの上にそれらの物を並べるシゲを見てると僕は涙が出てきた。トラブルに巻き込まれているとはいえ親戚でもない僕にこれだけのことをしてくれるなんて! 僕はシゲに礼を言った。


「あ、ありがとう。シゲ。」

「何言ってんだよ! 困った時はお互い様じゃないか! それにコイチ一家の横暴をこれ以上許すのもムカつくしな。一緒に頑張ろうぜ、ユージーン! 」


シゲはそう言うと僕の肩をポンと軽く叩いた。僕は早速シゲから受け取ったタオルで涙を拭いた。


「で、お前の両親の事なんだが……。」


シゲはちょっと顔を引き締めると僕に改めて話題を切り出してきた。


「何か分かったのか? 」

「今はやはり詐欺罪と王室侮辱罪の疑いでヘフナー王の城の地下にある牢獄に勾留されているようだ。」

「王の城の地下か……。」


勾留されているとはいえ取り敢えず生きていてくれたのだ。だが僕に何が出来るのだろう? 僕はシゲに聞いた。


「どうしたら助けられるんだ? 裁判か何かあるのか? 」

「あぁ、二週間後に王の城の近くにある裁判所で裁判が行われる。助けるにはそこで無罪を勝ち取るしかない。」

「無罪を勝ち取る? その為には何をすればいいんだ? 」

「お前の両親が無罪だという強力な証拠が必要だ。」

「証拠? 」


よくよく聞くと父さんは王室から注文のあった装飾品の代金を先に仲介人から受け取ったがその装飾品を期日までに収めることが出来ず代金を騙し取ったという疑いで逮捕されたらしいのだ。ところでその装飾品って一体何だろう? 僕は必死にコイチに拉致される前のことを思い出してみた。


「あっ! 」


僕は思い出した。ルカ先生との食事に出かける前に父さんがダイニングルームで宝石が散りばめられた物凄く綺麗な刀を仲介人らしき人に見せていたことを! 僕はそのことをシゲに話した。


「……ならおそらく王室に納める事が出来なかった装飾品というのはその刀のことだろう。」

「間違いないよ! その時確か父さんは刀を三本作らなければいけないって言っててあとの二本の刀は翌日か翌々日には出来上がるって言ってた! おそらく出来上がったものを盗まれたんじゃないのかな? 」

「納品日直前にそんなドタバタになってしまったことが王の怒りを買い詐欺罪の疑いに加えて王室からも侮辱罪の疑いをかけられてしまった、そんなところだろうな。」


僕はそこまで思い出すと父さんと会っていた仲介人らしき男の顔も思い出した。丸い眼鏡を掛けた痩せた男だ。確か名前はマッケンジーと名乗っていた! 僕はそのこともシゲに伝えた。


「……なるほどな。」

「そのマッケンジーという男は父さんに刀の保管場所を聞いていた! 怪しくないか? 」

「代金を払った後にその刀自体を盗んでお前の親父さんが罪を犯したように見せた、しかもそれはおそらく裏で手を引くタンケーダ家の陰謀なのだろうな。」

「僕が息子を殴っただけでそこまでやるのか、あのコイチの親は? 」

「やるさ。調べてみるとお前の親父さんとコイチの親は昔揉めたことがあったらしい。まぁコイチの親と揉めたことのない奴の方が珍しいけどな。自分と仲の悪い奴を落とし入れることが出来るしついでに息子の仇も取れる、コイチの親にとっては一石二鳥じゃないか! 」


そうだったのか。父さんは僕にそんなことは一言も言ったことはなかったがそんな過去があったのか。くそ! あのコイチのクソ親父め! 僕は自分でも知らぬ間に怒りで拳が真っ白になるほど握りしめていた。

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