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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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コイチの逆襲

「やばいな〜、もう夜の八時だ! 今日は晩御飯を食べられないかもしれないな。」


暗い夜道を家に向かって走りながら僕はそう呟いた。僕の家では晩御飯は夜の七時からと決まっていてそれに遅れる時は事前に父さんか母さんに話しておくのがルールだ。それを破ると晩御飯抜きかそれに代わるきつい罰が与えられる。よくある罰は家の全ての部屋の掃除で沢山ある部屋を全て一人で綺麗にしなければならない。普段使っていない物置なんて蜘蛛の巣だらけになっていたりするし僕の大嫌いなゴキブリともしょっちゅう出会すからこれは僕にとってはかなり辛い罰なのだ! 次によくあるのは庭の草むしり。庭の至るところに生えている雑草を朝から晩まで太陽光線に肌を焼かれながら汗と土にまみれて抜かなければならない!どの罰も普段なら考えるだけで嫌で嫌で仕方がないのだけれど今日の僕はそれらに対する覚悟が既に出来ていた。だって大好きなルカ先生と会っていたのだから。その代償なら今の僕には何だって出来るのだ!


「あれ、何してるんだろう? 」


ポツポツと明かりを灯す街灯の向こうにようやく我が家が見えてきた。だがそこには大勢の人がいて家の門の周りを取り囲んでいる。普段ならこの時間だと人は誰もおらず静かな筈なのに。僕は走るのをやめてゆっくり歩きながらもうすこし近ずいてみた。すると家の門の周りに群がっているのはヘフナー王直属の憲兵ではないか!


「……何が起こっているんだ? 」


不審に思った僕は物陰に入ると暫く様子を窺った。憲兵が僕の家に何の用があるのだろう? 父さんが何か王様から勲章を貰ったとか? いや、でもそれにしては雰囲気が物々し過ぎる。もしかして、コイチ絡みか!? 僕がそう思ったその時だった。


「ふふふ、やっと帰ってきたか。待ってたぜ。」


背後から突然声を掛けられて僕は一瞬驚きで心臓が止まりそうになるほどビクッとなった。振り向くとそのコイチが笑いながら目の前に立っているではないか! しかもコイチの背後にはタンケーダ家に雇われているのであろう用心棒らしき男が二人従っている。その男達は二人とも黒いスーツと黒いネクタイに身を包みがっしりとした体格で身長は180cmを優に超える大男だ。コイチと同じように二人とも顔に不気味な微笑みを浮かべている。僕は驚きと恐怖で声を発することが出来なかった。


「お前の家で何が起こっているのかまだ分かっていないようだな。まぁそれは後でゆっくり教えてやるよ。だけどその前に一つ俺はお前にやり返さなきゃいけないことがある! 」


そう言うとコイチは強く握りしめた拳を僕の目の前に突き出した。ニヤニヤとしていたコイチの表情はいつの間にか物凄い形相となっており僕を鋭く睨みつけている。ヤバい、こいつは僕を三人がかりで袋叩きにする気だ!僕はその場から去ろうとコイチに背を向けて走りだした。


「待てや! コラ! 」


コイチが後ろでそう叫ぶ。でもなりふり構ってはいられない。あんな大男に殴られたら僕は本当に殺されてしまう! だが走り出して間もなく僕はその大男二人に地面に倒されて取り押さえられてしまった。


「坊ちゃん、このガキどうします? 」


僕の身体を地面に押し付けている大男の一人がそう言った。物凄い力で押さえつけられて僕は全く身動きが出来ない。僕は恐怖で身体がガタガタと震えだした。コイチなら本当に僕を闇の中でひっそりと殺してしまうかもしれない! 誰かに助けを求めようにも僕は恐怖で悲鳴を上げることすら出来なかった。


「人気のない裏通りに連れて行け。」


コイチが短くそう言うと僕は大男二人に強制的に立ち上がらさせられた。そして用心棒の一人が後ろから僕を羽交い締めにしてもう一人が僕の口に猿轡を嚙まし、その状態で僕は数百m歩かされた。家がどんどん離れていく。そして周囲は街灯も徐々になくなり真っ暗になっていった。暫くして人気が全くないところで僕は立ち止まらされるとコイチが僕の前で仁王立ちになる。ヤバい、本当に殺されてしまう!


「この前のお返しだ! この貧乏人め! 」


コイチはそう叫んでから僕を嫌という程殴った。顔は腫れ上がり鼻血が服を汚した。口の中も切れて血まみれだ。だが僕は何も出来ない。このまま死んでしまうのか? 朦朧とする意識の中で僕はそう思った。


「坊っちゃん、そろそろ終わりにしましょう。こんなところを誰かが偶然通りがかって見つかったりしてもヤバいですし、それにそれ以上やるとそのガキ、死んじまいますぜ。」


途切れかけの意識の中で僕を羽交い締めにしている大男がそう言うのが聞こえた。僕は顔全体が腫れ上がって目が開かないのに加えて項垂れた頭を上げる気力もない。情報は耳からしか入ってこない状態だった。するとコイチが言った。


「そ、そうだな、今日はこれぐらいにしておいてやるか。よし馬車を呼んでこいつを乗せろ。続きは明日だ。」


暫くすると僕はコイチの呼んだ馬車の荷台にまるで物のように投げ込まれた。どうやら僕はこのまま密室に連れて行かれてそこで拷問の続きを受けることになるらしい。何とか逃げなきゃ! そう思うけれど身体は全く言うことを聞かない。僕はそのうち気を失ってしまった。

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