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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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嫌われ者

「優勝!? マジで? 」


月曜日の朝、シゲと通学路でばったり会うと僕は昨日の射撃大会の結果を報告した。シゲは最初目を丸くして驚いていたがすぐにいつもの優しい表情に戻り僕を讃えてくれた。


「凄いじゃないか! 競技初参加で即優勝だなんて! おめでとう! 」

「ありがとう、でも実は俺本当に脳天気でさ、何にも考えずにただ撃ちまくっていたから競技の終盤まで自分が何位なのかも知らなかったんだ。何のプレッシャーも無かったから今回はたまたま上手くいったってだけなんだよ、実はね。」


僕は正直にそう自分の思いを伝えた。するとシゲはニヤッとして言った。


「いやいや、たまたまで優勝なんて出来る訳がないって! そりゃお前の実力だよ。」

「う〜ん……そうだと嬉しいんだけどな。」

「そうだって! お前、将来はその射撃の腕を生かして王立軍にでも入ったらどうだ? 」

「こんなチャランポランの俺が軍人なんて無理だよ、ハハッ! 」


笑顔が一転して真顔で王立軍入隊を勧めてきたシゲの言葉を僕はそう笑い飛ばした。するとシゲは真顔のまま続けた。


「無理じゃないさ、最近のお前は変わったよ。こんな言い方すると偉そうに聞こえるかもしれないけど、しっかりしたって言うのかな。自分の目標に向けて物凄く努力をするようになったじゃないか。」


仲の良いシゲにそう褒められて僕は素直に嬉しかった。そしてシゲは言葉を続けた。


「お前の努力を見てると正直俺も負けてられないって気持ちになるしな。」


シゲのその言葉を聞いて僕の喜びは更に大きくなった。いつでも見上げていたシゲが僕のことをそんな風に思ってくれたなんて! 僕は嬉しさを抑えながらシゲにこう返した。


「シゲ、ありがとう。お互い無事にカゲミ貴族院大学に入れたらいいのにな。」

「ああ、そうだな。頑張ろうな。」


その後学校に到着したので僕らは教室に入りそれぞれの席に着いた。今日は朝からシゲとの会話が弾んで良い一日になりそうだ。でもよく考えたらもう一つ今日はやらなくちゃいけないことがあった。好意を寄せてくれているミールに「実は他に好きな人がいる。」ってことをきちんと伝えなくてはいけない。でも言いにくいしどうやって伝えようかな。僕はそう思いながら教科書とノートを鞄から取り出して机の上に置き授業に備えた。





「ねぇユージーン君、この問題ちょっと教えてくれない? 」


その日の放課後、一緒に帰ろうとミールを誘ってから帰り道に話を切り出すしかない、と考えつつ教室で帰り仕度をしている僕を背後から女の子の声が呼び止めた。振り返ると真後ろにミール本人が立っている。彼女は白いワンピースを着て教科書を手に笑顔を浮かべていた。彼女に話しかけにくいと思っているうちに時間だけが経ち放課後になってしまったのだが意を決して帰り道に勝負を掛けようとしたその矢先にミールの方から僕に話し掛けにきたのだ。僕はすこし動揺してしまった。


「や、やぁ、ミール……ちゃん。」


僕は慌てて取って付けたようにそう言った。あぁ、遂にこの時が来てしまったか! でも僕は伝えなければならない、ルカ先生が好きだってことを。ルカ先生は僕のことを好きでも何でもないかもしれないけどこのことははっきり伝えておかないとミールに申し訳ないしそれ以上に中途半端な状態の自分に僕自身が我慢出来ないのだ。ルカ先生には近いうちに、出来れば今度食事をする時にちゃんと気持ちを伝えてその上で僕のことをどう思っているのかを確かめるということも僕は既に心の中で決めている。だが彼女は僕の気持ちに気が付く様子もなくこう言った。


「自習室に行かない? 」


彼女の普段通りのその態度を見ていると僕は自分がやろうとしていることがいかに難しいかということに改めて気が付きその瞬間心が折れそうになっていた。こんな可愛い女の子の好意を受けとめずそれどころか彼女を傷つける行為を実行するには物凄く勇気がいるのだ。だからといって彼女の好意を一時的に受けとめることは長い目で見れば彼女をさらに深く傷つけることになる。僕は覚悟を決めた。取り敢えず自習室に行って二人きりになった方が話はしやすいと思い僕は取り敢えず返事をした。


「う、うん。」


だが僕は弱気だった。こんな状態の僕がきちんと気持ちを伝えることなんて出来るかな? そう悩みながら僕は力なくよろよろと立ち上がった。するとその時だった。


「お二人さん、仲が良いねぇ〜! 」


コイチが僕ら二人を冷やかしてきた。ちっ、こんな時に面倒臭い野郎だ! 僕は反射的にコイチの方を睨んだ。


「何だよ? その目は? この貧乏人が! 」


コイチがそう凄んだ。今日は皆早く帰っていて教室の中には生徒がもう10人ぐらいしか残っていない。シゲも今日は先に帰っていた。それでもすこし教室内が騒つく。するとミールが僕とコイチの仲介に入った。


「コイチ君、やめてよ。」

「何だよ? お前、この貧乏人の肩を持つのか? お前の家だって俺の家が援助してやらねえとすぐ貧乏真っ逆さまなんだぞ! 」


この前までミールのことを「ミールちゃん」と呼んでいたのに今日は「お前」呼ばわりするコイチは見ていて本当に不快な奴だ。すると普段はいつもニコニコしているミールが珍しく怒って言った。


「だから何よ? あなたのお父さんには確かにお世話になっているのかもしれないけどあなた個人には何の借りもないわ! あなたはお金持ちの息子ってだけで威張っているただの嫌われ者じゃない! 」


ミールがそう言うとその様子を見ていた周囲のクラスメイトに笑いが起こった。その笑いはミールの言うことに賛同するものであり皆のコイチに対する気持ちがよく表れていた笑いだった。するとコイチは顔を真っ赤にして急に怒鳴った。


「う、うるさい! このクソブス! 」


その怒声の後コイチはあろうことかミールに殴りかかろうとしたのだ。僕の身体はその瞬間反射的に動いた。

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