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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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初めてのキス

「凄い雨ね、これだと傘無しではちょっと大変よね。」


ミールちゃんはそう言いながら人通りの少ない学校の裏口の庇の下で天を見上げた。一人言のようなその言葉に僕は何と言ったらいいのか分からず赤い顔をして俯いたまま黙っていた。


「あたしの家はすぐそこなの。そこで傘を貸してあげればユージーン君も濡れなくて済むでしょ? 」


なるほど! ミールちゃんと一緒に相合傘で下校するということで舞い上がっていた僕はそんなことすら考えていなかった。そんな時ふとミールちゃんと僕の目が合う。ミールちゃんは笑顔で言った。


「さぁ、行きましょう。」


僕らは雨の中を傘一本にそれぞれの身を託して進みだした。雨で視界が悪い為か周囲に他の生徒なんかが数人は居るはずなんだけど僕らは濡れた石畳の上を二人っきりで歩いているようだった。僕らは左右に並び僕が左でミールちゃんは右だ。僕は黙っていると気まずいし何か喋らなきゃ! と焦った。


「か、傘、持つよ。」

「ありがとう、ユージーン君。」


僕はミールちゃんが持っていた傘を手に取るとミールちゃんの方にやや傾けた。ミールちゃんが濡れないようにする為だがその為に僕の左肩は雨がかかってびしょ濡れになってしまった。ミールちゃんはそれにすぐ気が付いて言った。


「ユージーン君、濡れてるじゃない! 」

「あ、いや、いいんだよ! 僕も家はそんなに遠くないし。ミールちゃんは濡れてない? 大丈夫? 」

「あたしは大丈夫。それよりユージーン君も濡れないようにしてね。それとあたしのことはミールでいいわよ。」


えっ!? 女の子から呼び捨てにしていいなんて言われるのは初めてだ! それって彼女みたいだし! そんなことを言われたらますますドキドキしちゃうよ、全く。


「ユージーン君はなんて呼ばれているの? あだ名とかあるの? 」

「そ、そのままユージーン……かな? あとユーちゃんとか。」

「ユーちゃん? 」

「うん、でもその呼ばれ方は実は嫌いなんだ。」

「どうして? 」

「どこか甘やかされているみたいじゃない? 」

「うふっ、そうかしらね。」


ミールの笑顔を見ていると僕はすこし緊張がほぐれてきた。ミールの笑顔って可愛いな。ルカ先生とはまた違った愛らしさがあるな。そう思った瞬間に僕の脳裏に急にルカ先生の顔が浮かんできた。その顔は僕を蔑むような目つきをしていた。僕は一瞬ドキッとして思わず「あっ! 」と小さく声を上げていた。するとすかさずミールが僕に話し掛けてきた。


「どうしたの? 」

「い、いや、なんでもないよ。」


他の女の子と僕が並んで歩いているのを見たらルカ先生はどう思うかな? ちょっとは焼きもちでも焼いてくれるかな? それとも何とも思わないのかな? そういろいろ考え出すとさっきまでのミールに対するドキドキが僕の中でちょっと盛り下がってしまった。


「ここよ、ちょっと待ってて。」


気が付くと僕ら二人は大きな屋敷の門に辿り着いていた。どうやらここがミールの家らしい。傘を下ろすと僕らは門の庇の下に二人で並んだ。ミールは鞄の中をゴソゴソと何か探している。暫くすると彼女は鞄の中からタオルを取り出して僕の濡れた左肩を拭き始めた。僕はまた顔が赤くなった。


「そ、そんなことしなくてもいいよ。」

「うふっ、そんなに照れなくてもいいじゃない。」


彼女は笑いながら僕の左肩を拭き続けた。同い年の筈なのにやっぱり女の子ってませてる! 彼女に身体を触られて僕は真っ赤なのに彼女の方は余裕の笑みなのだ! 以前から何となく彼女は僕に好意を持ってくれているとは感じていたけど僕は今彼女の積極的な行動にタジタジだ。すると彼女の顔が僕の顔にふと近づいてきた。


「この前はありがとう、助けてくれて。」


僕はもうパニックだ。何を言っていいのか分からない。


「え〜と、う、うん。」


僕がドギマギしていると彼女は更に顔を近づけて言った。


「……ねぇ、ユージーン君。」

「は、は、はい。」

「……あたし、あなたのこと好きなの。」

「…………! 」

「……今からあたしはあなたのこと、ユー君て呼ぶわね。」


彼女の顔がゆっくりと近ずいてくる。僕は思わず目を瞑った。そして彼女の唇が僕の唇に触れる。それはとっても短かかったけど間違いなく僕の初めてのキスだった。ミールの唇の感触、これがキスってものなんだ。


「……ユー君の傘を取ってくるわね。」


唇が離れたあと僕は恥ずかしくてなかなかミールの顔を見ることが出来なかった。ませているとはいえ流石に彼女も恥ずかしかっただろう、彼女はそう言葉を残すと急いで門の中に入っていき僕に貸す傘を取ってきてくれた。そこで僕と彼女はようやくお互いの赤い顔を見つめあった。


「あ、ありがとう。明日返すね。」

「明日はお休みでしょ。また来週ね。」


僕のぎこちない言葉に冷静に応えるミールがちょっと大人っぽく見えた。僕はそれ以上何を喋ったらいいのか分からず取り敢えずその場を離れようとした。


「うん、じゃあね! 」


そう言って僕は雨の中を駆け出した。そうして数十m程走ってから立ち止まり後ろを振り返るとミールはまだ門のところで立って僕を見送っている。僕はその場で彼女に大きく手を振ってから背を向けるとまた家に向かって走り出した。

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