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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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まるでデート!

「次の弾丸がラストです。」

「ユージーン、これを当てれば今日は二十発連続命中よ! 頑張って! 緊張した時は三回深呼吸よ! 」


僕は立ったままの姿勢でライフル銃を構えてから僅かに頷いた。今日はルカ先生と射撃のレッスンの日だ。射撃を始めて二週間、僕の腕前は急速に上達していた。


「ふぅー、ふぅー、ふぅー。」


僕は先生に教えられた通り三回深呼吸をすると的に狙いを定めた。僕はこの一ヶ月平日は勉強に明け暮れ週末は射撃訓練に時間を費やしていた。放った弾丸の数はおそらく五百を超えるだろう。弾丸が尽きる度に母さんに「もう撃っちゃったの!? 」とチクチク言われつつもおねだりをして費用を負担してもらったのだ。上手くならなければそれこそ母さんに怒られちゃう!


「ズドーン! 」


ルカスペシャルが火を吹いた。すると円形の的の中心に大穴が開く。やった、今度は的のど真ん中に命中だ!


「凄いじゃない! 全弾命中よ! 本当に上手くなったわね! 」


ルカ先生が僕にハイタッチを求めてきた。僕も迷わずそれに応える。ルカ先生の嬉しそうな表情を見てると僕まで嬉しくなってしまうのだ。ルカ先生は笑顔で言葉を続けた。


「これなら来月にあるシンシア杯には出られるわね。」

「シンシア杯? 」

「ヘフナー王国の長女であるシンシア様の名を冠した射撃大会よ。大会は年齢によって分かれていてあなたは15歳以下の部で出場出来るわ。どう? やってみる? 」


ルカ先生はそう言いつつ鞄からその大会のパンフレットを取り出した。僕はそれを受け取ると15歳以下の部の大会の概要のところに目を遣った。えっ! 参加費は二万ジオンもする! こりゃまた母さんにおねだりしないといけないよ、全く。


「参加するだけでカゲミ貴族院大学の入試に5点加算されるわ。トップ10に入れば更に5点、もし優勝でもすれば50点、2位なら20点、3位は10点がまたそこに加算されるわ。どう? 悪くないでしょ? 」


ルカ先生は笑顔でそう言葉を続けた。僕はそのパンフレットを見つめたまま答えた。


「出たいです。でも母さんに一度相談します。」

「そうね、それがいいわ。じゃあ今日は帰りましょうか? 」


僕とルカ先生は射撃場を後にした。射撃の練習は主に土曜日にやっていてルカ先生は二週間に一回ぐらいの割合で来てくれる。ルカ先生が来れない時は母さんが同伴だ。普段はまだ日が高いうちに練習をするのだけれど薄暮での射撃にも慣れておこうということで今日は初めて夕方にライフル銃を撃ったのだ。けれど特に問題はなかった。さっきまで雨が降っていたせいかちょっとジメジメしている。僕はライフル銃を入れたケースを背負い傘を手にしてルカ先生と並んで石畳の道を歩きだした。辺りはちょっと薄暗くなっている。人通りも少なかった。


「先生、家まで送りますよ。」

「お! そんな言葉をさりげなく女性に掛けれるようになったのね! あなたも一端の男になってきたわよ、ユージーン! 」


先生はそうからかうように言うと僕の肩をポンと軽く叩いた。最近は勉強でも射撃でもルカ先生に怒られる回数が以前よりはだいぶ減った。そのせいか先生と一緒にいると僕はとっても楽しい。それと同時に先生の身体が僕の身体に触れる度に物凄くドキッとする。二人っきりで歩いているとまるでデートみたいだ。


「ユージーン、あなた、背が伸びたわね。」

「そ、そうですか? 」


ルカ先生は僕を見上げながらそう言った。ルカ先生はスラッとしていてスタイル抜群だけどさすがに背は僕の方がちょっと高い。先生は僕の目の前に向きあって立つと背を比べ始めた。抱きしめられる距離にいる先生を目の前にしてもう僕の心臓はバクバクだ。


「最近は走って筋トレもして、なかなかいい男になってきてるわよ、ユージーン。」


ルカ先生はそういうとくるりと僕に背を向けて僕の前を歩き出した。僕の心臓の鼓動は落ち着きを取り戻したがもうちょっとドキドキしていたかったかな。僕は先生の後ろに続いて歩きだした。先生は僕のこと、どう思っているのだろう?


「あたしの家はこっちよ、ユージーン。」


ルカ先生はそう言うとちょっと狭い路地に入っていった。左右を塀に囲まれた狭い路地で人が二人並んで歩くにはちょっと肩がぶつかっちゃうぐらいだ。僕も先生の後に続いて路地に入っていく。周囲には誰もいなくて僕の鼓動は再び激しく動き始めた。


「先生って……一人暮らしですか? 」


僕はふと先生にそう質問した。何か喋っていないと気まずくなりそうだったからだ。


「ふふ、来たいの? 」


先生はからかうように僕にそう言った。僕は慌ててそれを否定した。


「い、いえ! そんなつもりはありませんよ! 」

「うふふ、冗談よ。まぁそれ以前にあたしの家は大学の女子寮だから男の子は入れないの。残念だったわね、ユージーン。」


そう言いながら振り向いて悪戯っぽくウインクするルカ先生はあまりにも可愛いかった。僕の心の中でルカ先生に対する決定的な何かが生まれた瞬間だった。でもその時だった。


「ガサガサッ! 」


何か物音がしたかと思うと狭い路地の向こう側に人影が現れた。だが何か様子がおかしい。その人影は背は低いが異常に太っているように見える。最初は周囲がちょっと薄暗いせいもあってよく分からなかったがニ、三歩近づくとその人影の正体がようやく分かった。ゴブリンだ!


「ユ、ユージーン! 」


前を歩いていたルカ先生が不安そうにそう叫んで僕の方を振り返った。僕はルカ先生の手を取るとこう言った。


「だ、大丈夫ですよ。あいつらは足が遅い。走って逃げましょう。」


僕は努めて冷静にそう言うと後ろに振り返り自分達が今まで歩いてきた道のりを逆に進もうとした。だがその時僕は心臓が凍りついた。


「ユ、ユージーン! 後ろにもいるわ! 」


ルカ先生がそう叫ぶ。僕ら二人は狭く逃場のない路地で前後をゴブリンに挟まれたのだ!

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