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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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個人レッスン!

「えっ!? 射撃場に行ったって!? 」

「ああ、ライフル銃をぶっ放してきたんだ! 」


登校途中で一緒になったシゲに僕はちょっと自慢げに昨日の出来事を話した。シゲは目を丸くさせている。こういった期待通りのリアクションを必ずしてくれるシゲって本当にいい友人だと僕はいつも思う。


「なんでまた射撃場に行ったんだ? 」

「入試対策だよ。シゲは純粋に学力だけでカゲミ貴族院大学に行けるだろうけど俺はかなり微妙だからな。有利になることは何でもしようと思ってさ。」

「今年から始まった例のスポーツ特待制度か? 」

「そうそう、それそれ。」


シゲは僕の横を歩きながら暫く僕の横顔を呆然と眺めていた。僕が射撃をしたってのがそんなに羨ましいのかな? するとシゲはまた僕に質問してきた。


「で、どうだったんだよ? 標的には当たったのか? 」

「いや、これが難しくて! 」


僕は正直に言った。シゲに格好付けて見栄を張る必要なんかないからだ。


「二十五発ぐらい撃ったけど的に擦ったのが三発だけだったよ! めちゃ難しいわ! 」

「そんなに当たらないものなのか? 」

「俺に才能がないだけかもしれないけどな、ハハッ! 」


僕がそう言って自分の射撃の下手さを笑い飛ばそうとするとシゲはいつもの優しい顔で言った。


「努力はいつか実を結ぶさ。ところでユージーン、お前変わったな。」

「変わった? 俺が? 」

「あぁ、変わったさ。」

「射撃を始めただけじゃないか? 」

「それだけじゃないだろ? 勉強を頑張ったりランニングや筋トレを始めたりしてるじゃないか。今までのお前はそんなに積極的に何でもやる奴じゃなかったぜ! 」

「……そうかな? 」

「そうさ! 例の家庭教師が来てからお前は変わったよ。いい先生だな、そのルカ先生って。」

「あのドSがいい先生だって? あいつは俺を自分のストレス発散に利用してるだけさ! ハハッ! 」


僕はシゲの台詞をそう笑い飛ばしたがすこし心臓の鼓動が高鳴ったような気がした。


「いい先生だって? ……確かにそうかもしれないな。」


僕は再度心の中でそう呟いた。確かにルカ先生のお蔭で僕は変わった気がする。そう思うとルカ先生の笑顔が頭に浮かんだ。その笑顔はあまりに綺麗で思い出すだけで照れてしまうぐらいだ。するとその日はルカ先生の姿が頭の中にこびりついて授業で僕はなかなか集中出来なかった。



「あら、ユージーン! 時間通りね! 」

「お、お、おはようございます。」

「おはよう? もう夕方の六時よ。何寝ぼけてんの? 」

「あ、す、すみません。」

「赤い顔してどうしたの? 酔っ払ってるの? ふふっ。」


その日は授業が終わった後ルカ先生と射撃場で待ち合わせをしていて昨日に引き続き僕は射撃のレクチャーを受けることになっていた。昨日の自分の射撃の出来があまりにも不甲斐なかったのでルカ先生に無理を言って二日連続で射撃場に来てもらったのだがシゲの言葉のせいか何故か今日はいつも以上にルカ先生のことを意識しちゃう! 先生の格好は今日もラフで緑のシャツと白いパンツ姿だけどそれがやたらと可愛く見えるのだ! 先生と会うなり緊張して顔を林檎のように赤くしている僕のその日の射撃は昨日以上に酷いものだった。


「ドォーン! 」

「くそったれ! また外した! 」


先生と会ってからその日十発目の弾丸を放ったが今日はまだ一発も的を擦らすことすら出来ない。僕はすこしイラついてそう大きな声で叫んでしまっていた。するとその様子を後ろで見ていたルカ先生が僕に言った。


「ユージーン、一つ気が付いたことがあるわ。」

「な、何です? 」


返事をしながら振り返るとそこには腕を組んで僕を睨みつけるように見つめているルカ先生の姿があった。睨んでいてもその表情はこれまたとんでもなく可愛い! 僕はまた顔を赤らめて先生からの視線を避けつい俯いてしまった。


「射撃のフォーム自体は問題ないわ。だけど引金を引く時に力が入りすぎて指がスムーズに動いてないのよ。引金は引くというよりは優しく絞る感じね。」


ルカ先生はそう言って模範射撃を僕に見せてくれた。先生の顔を見ると集中出来ない気がしたので僕は先生の指をずっと見ていた。確かに先生の指の動きはスムーズだ。先生の放った弾丸は見事に的のど真ん中を貫いていた。


「ユージーン、ちょっと構えてみて。」


ルカ先生はそう言うとルカスペシャルを手渡し僕に通常の立射のスタイルを取らせた。そしてルカ先生はライフルの弾丸を僕が構えているルカスペシャルの上にすっと立てて置いたのだ。これだとライフル銃を常にまっすぐ地面と平行に構えていないと弾丸はすぐ落ちてしまう。ルカ先生は言った。


「引金を絞る時にこの弾丸を落としているようでは絶対に的を捉えることは出来ないわ。今日はもう撃つのはいいからこの弾丸を落とさない訓練よ。」


先生のその言葉が終わるか終わらないかのうちに僕はいきなりバランスをすこし崩して弾丸を落としてしまった。


「今日は集中出来ていないわね! しっかりしなさい! 」


いきなり先生からの罵声が飛んできた。くそっ! こんな簡単なことを失敗して怒られるなんて自分に凄く腹が立つ! 僕はそう心の中で叫んだ。馬鹿みたいに赤い顔をしている場合ではない、そう思うと僕の顔は急に引き締められた気がした。


「そうそう、その調子よ。」


その後同じ訓練を繰り返すうちに僕は引金を絞ってもライフル銃の上に置かれた弾丸を落とさなくなっていった。不甲斐ない僕を怒鳴っていた先生の機嫌は見る見るうちに良くなっていった。


「いい感じね。じゃあ一発撃ってみようか? 」


すっかり機嫌の良くなったルカ先生にそう言われて僕はライフル銃に弾丸を装填しゆっくり構えた。女ってのは本当に喜怒哀楽が激しいものだ、そう思いながらも僕の心はいつの間にか平静を取り戻していた。


「慎重にね。」


ルカ先生がそっとそう呟くように言った。確かに先生の言う通り、慎重にゆっくりした呼吸を意識して僕は的に構えた。


「ドォーン! 」

「凄いじゃない! 真ん中よ! 」


ルカ先生の嬉しそうな声がライフル銃の発射音に襲われた直後の僕の耳に優しく入ってくる。的を見てみると確かにど真ん中に穴が空いていた。僕とルカ先生は無意識のうちにお互い右手を高く突き上げてハイタッチを交わしていた。

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