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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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タンケーダの恫喝

「シンシア様、私は先ほど七月の三十一日に捕らえられて我に返ると地下牢にいたと言いました。捕らえられたのは夜でしたからおそらく翌朝に意識を取り戻したのだと思います。」


僕はシンシアに話し始めた。


「その時私は最初こそ絶望の淵に突き落とされた気分でした。ですが時間が経つにつれて私はこの理不尽な仕打に腹が立ってきて自分でも気がつかぬ間に私の気持ちは『このまま死んでたまるか! 必ずここから逃げ出してやる! 』というものに変わっていったのです。私はその時こう地下牢の壁に刻みました。『ユージーン・マイヤー、囚われるも脱出す、八月一日。』と。」


僕がここまで言うとさすがのタンケーダ一家も何も言い返せなかった。するとその一瞬の沈黙に滑り込むように口を挟む男がいた。ビルだ。


「シンシア様、ここでお願いがあります! 」


早口で喋るビルの目は燃えていた。ビルは今一気にタンケーダとの勝負をつけようとしているのだ。


「今すぐにヘフナー王の兵をタンケーダの家に向かわせて下さい! そこで兵達は目にすることでしょう、証人台に立つユージーン君の今言った言葉が地下牢の壁に掘られているのを! 」


タンケーダに証拠を隠蔽させる時間を絶対に与えてはいけないのだ。この場でシンシアにタンケーダの屋敷の捜索を決意させてすぐにでも行動を起こさないとタンケーダはいくらでも逃げ道を作ってしまう。だがタンケーダはさすがにそのことを察してか反撃してきた。


「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって! この若造共が! 」


僕が傍聴席の方を振り向くとタンケーダがそう言いながらゆっくりと立ち上がって僕とビルを交互に睨みつけていた。彼の顔は怒りのせいか茹で蛸のように赤かった。


「ここまで言われて黙っとれるかい! なんでこんなガキ共にコケにされ続けなアカンねん! お前ら、覚悟はエエんやろな? 」

「ここは法廷ですよ、言葉を選んで下さい。」


シンシアがそう言ってタンケーダを窘めた。だがその言い方は今までとは違ってかなり優しいものだった。するとタンケーダはこう続けた。


「これは失礼しましたなぁ、シンシア様。やけどねぇ、こいつらはやり過ぎですわ。シンシア様、まさかとは思うんやけどこいつらの言うなりになってワシの屋敷に兵を寄こすなんてことはありゃしまへんやろな? 」


タンケーダはシンシアを追い詰めるようにそう言った。王族であるシンシアにこんな言い方が出来るということはタンケーダはおそらく王族との繋がりもそれなりにあるのだ。僕はちょっと嫌な予感がしてきた。


「そんなことしてみなはれ、ワシはアンタのお父さんに色々してますねんで。その関係が全部壊れてまいますわ。そうなったらお父さんもさぞ困るやろうけどね。」


その言葉を聞いてシンシアの顔が強張ったがシンシアは何も言わない。おそらくタンケーダの言う通りヘフナー王はタンケーダから援助か何かを受けていてそのことをシンシアは知っているのだろう。おそらく王である父を困らすことはしたくないという思いとこのまま自分が信じる正義の道を貫きたいという思いの両方に彼女は今挟まれているのだ。法廷はまた静まり返った。


「さぁ! どないしますんや!? 」


シンシアに詰め寄るタンケーダの態度は見ていて気分悪いことこの上なかった。王族ということで決断を下さなければならない立場とはいえ彼女はまだ幼い少女なのだ。だが彼女は苦しそうな表情をしながらも俯くことなくタンケーダの顔を見つめ返し続けていた。


「シンシア様、ここは一つ穏便にいきませんか? ここでシンシア様が決断されたことでヘフナー王が後々困るようなことがあってはなりませぬぞ。」


裁判長がそう小声でシンシアに呟いた。くそっ! 上手くシンシアを誘導して閉廷に持ち込み今日のことをうやむやにするつもりだ!


「……お父様。」


シンシアはそう一言呟くとそっと目を閉じた。……これまでか? 僕がそう観念しかけた時だった。


「お待ち下さい、シンシア様! 」


ビルが突然そう大きな声を出した。すると裁判長は怒ってこう言った。


「貴様! まだシンシア様の心を惑わす気か!? タンケーダ様の言う通り本当に貴様は許さんぞ! 」


自分がタンケーダ寄りだということを自ら明かしてしまったような裁判長の台詞に僕はちょっと驚いた。だがビルはそれに反応すらせずシンシアにこう言った。


「シンシア様! 私は命を賭してでもこの言葉をシンシア様に伝えなければなりません! 今ヘフナー王国は窮地に陥っているといっても過言ではないのです! 早急に派兵せねば逆にへフナー王の命が危ういものとなるでしょう! もう残された時間は無く今シンシア様にはどうしても動いて頂かねばならない大きな理由がここにあるのです! 」


ビルはそう叫ぶと足元に置いていた自分の鞄を机の上に持ち上げるとその中にある一通の大きな封筒を取り出した。皆が一斉にそれを見た。

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