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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
111/331

シンシアへの陳述

「この国には一部の権力と富を握った貴族による腐敗が蔓延っています。彼らは法の目をかいくぐって自分達の私腹を肥やすことに専念し自分達に刃向かうものは片っ端から闇の中で葬ってきました。」


ビルはタンケーダの闇の支配をそう表現した。するとそんな認識のないシンシアは顔を赤くして真っ向から反論してきた。


「王であるお父様がかつての密室の裁判をやめさせ万人に平等な現在の法の制度の土台を作り上げたのです! ミックとやら、あなたはそのお父様の功績を否定するのですか? 」


今まで比較的冷静だったシンシアが声を荒げた。どうやらシンシアは父親の悪口を言われたような気がしてムッとしたらしい。だがそう言い返されてもビルは一歩も引かなかった。


「シンシア様、確かにヘフナー王様の尽力は大きなものがありました。しかしながら一部の貴族達は賄賂を使って役人達を抱き込み今の法制度を骨抜きにしてしまっております。そういった腐敗が見られるのは法制度だけではありません。一部の貴族はその圧倒的な財力を使って人々につけ込み彼らを自由に影から操ってきました。それにより自分に敵対する人間を陥れたり時には命を奪ってきたのです。」

「そのようなことは信じられません! 私はそのような事実があることを一度も聞いたことがありません! 」

「それはそうでしょう。皆賄賂を受け取って王族の方々には権力者である一部の貴族にとって都合の良いことしか言わないのですから! 」

「それは本当ですか? 何故誰もその不正に立ち向かおうとしないのです? 」

「権力者に逆らえば待っているのは死です。悪いことだとは頭では分かっていても皆死が恐ろしくて歯向かうどころか彼らの命令を拒絶することすら出来ないのです。そこで泣いているマッケンジーのように。」


皆の視線がマッケンジーに集中した。だがマッケンジーはビルの声が聞こえていたであろうにも拘らず突っ伏して嗚咽を漏らし続け頭を上げようとはしなかった。その様子を横目で見たシンシアはビルに向き直るとこう言った。


「今回のマッケンジーの略奪もあなたの言う一部の権力者の貴族の指示だった……ということですか? 」


シンシアは鋭い目でビルを見据えながらそう言った。ビルは頷きながらこう答えた。


「はい、その通りでございます。」


また傍聴席はかなり騒ついてきた。僕は法廷正面を向いているので分からないが後ろにいるタンケーダはどんな顔をしているのだろう? 僕は振り向きたい気持ちを抑えながらビルとシンシアの方を見つめていた。


「マッケンジー、今の話を聞いていましたね? 」


シンシアがマッケンジーにそう尋ねたがマッケンジーは泣き崩れて何も返事をしない。シンシアが返答を何度か促すがそれでもマッケンジーは泣き続けるのみで何も意思表示をしなかった。くそっ! ここでマッケンジーがタンケーダの名前を言えばことが一気に前に進むのに! 僕はめそめそ泣いているマッケンジーをもどかしく思った。するとビルが言った。


「シンシア様、先ほど申しました通りマッケンジー氏はとある人物に命令されて三本の剣を盗んだのです。それはマイヤー氏を陥れてマイヤー氏の事業を奪うという目的の為でした。ですが今私がお話したことをマッケンジー氏は簡単に認めることは出来ないでしょう。何故なら彼がもしこの場でそのことを認めたらすぐに彼は命を狙われてしまうからです。そこまでの覚悟をこの場で彼に求めるのは酷でしょう。」


マッケンジーがビルの問い詰めで良心の呵責に耐え切れなくなり自白するということは起きなかった。だがそんなことはビルの想定内らしくビルは次のシナリオを実行に移そうとしているようだ。おそらく彼の頭の中には様々な作戦が計画されているのだろう。


「ですがシンシア様、私はマッケンジー氏ではないもう一人の決定的な証人を呼んでおります。」


ビルがそう言うとシンシアの目が鋭く光ったように見えた。


「誰です、それは? 」


シンシアのその質問にビルは「待ってました! 」とばかりにこう勢いよく返した。


「シンシア様、それは彼です! 彼しかおりません! 」


ビルはそう言って僕を指差して言葉を続けた。


「シンシア様、彼は父親が詐欺容疑で憲兵に身柄を拘束された後大変な目に遭っているのです。彼の話を聞いて頂けますでしょうか? 」

「分かりました。ユージーン・ハロルド・マイヤー、話しなさい。」


シンシアのその言葉を聞きながら裁判長は悔しそうに僕の方を睨みつけてきた。だが彼は何も言い返せないのだ。シンシアは完全に僕の話を聞きたいという姿勢になってしまっている。この場の雰囲気ではさすがに裁判長といえどもシンシアにノーとは言えないだろう。


「はい、分かりました。」


僕はそう返事をすると一瞬背後に目を遣った。僕の背後にいるタンケーダが証言をしようとする僕に対してナイフで斬りつけてきたりしないかふと心配になった為だ。だがタンケーダは僕を物凄い形相で睨みつけているだけだった。一瞥したところタンケーダは丸腰らしい。その横ではデブ嫁とクソコイチが少し怯えたような表情で僕を見つめている。今更そんな顔をされても可哀想とも何とも思わないぜ、コイチ! お前に受けた仕打ちの報いをこれから受けるがいい!

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