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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
110/331

黒幕を引きずり出せ!

「マッケンジー、何故そのようなことをしたのです? 」

「……うぅ。」


俯くマッケンジーにシンシアはそう聞いたが彼は嗚咽を漏らすだけで何も答えない。深い罪の意識で涙に暮れて上手く喋れないのか、はたまた自分の悪の親分であるタンケーダが目の前にいて言いにくいのか、いずれにせよ彼は動機や目的については一切口を開こうとはしなかった。


「自分の娘のあれだけ悲痛な叫びを聞いても何とも思わないのですか? 」

「……うっ、うっ。」


シンシアにそう聞かれてもやはりマッケンジーは何も答えなかった。だが今このタイミングは黒幕タンケーダを法廷の場に無理矢理引きずり出すチャンスかもしれない。そう僕が思った瞬間僕はビルと目が合った。ビルは僕に小さく頷いてから発言を始めた。


「シンシア様、マッケンジー氏の窃盗や略奪に関しては少し不可解な点があります。」

「どういうことです? 」


マッケンジーに視線を向けていたシンシアがビルの方に向き直った。その表情はとてつもなく厳しい。彼女は彼女なりに真相を究明しようと必死なのが伝わってくる。そんな彼女を見ているとこの姫は本当にまだ五年やそこらしか生きていない少女なのだろうかというこの法廷にきて何度も思った疑問がまたふと僕の頭をよぎる。彼女は王族の子供にありがちな甘えや曖昧さが一切ない。それどころか審理をきっちりと進めようとする責任感に溢れたその姿は大人顔負けのものだった。だが僕はそのシンシアへの疑問と賞賛をすぐに心から消さなければならなかった。今はタンケーダを追い詰めることに集中しなければならないからだ。するとビルがシンシアにこう言った。


「シンシア様、そこにいるユージーン・ハロルド・マイヤーによるとマッケンジーの館の離れには盗んだと思われる様々な品々が納められた木箱がいくつも無造作に積み上げられていたとのことです。」


するとシンシアは僕の方を向いてこう言った。


「ユージーン、それは本当ですか? 」

「はい、本当です。中身は確認していませんが木箱はまさに山のようになっていました。普通盗人というのは盗品をお金に変えて生計を立てています。ですが彼はその盗んだ品々を単に離れに保管しているだけのように見えました。そこが私は疑問に思ったのです。」

「では何の為に彼は盗みを働いていたのです? 」


シンシアがそう言うと話の流れにピンときたのか裁判長が僕とシンシアの会話に割って入ってきた。


「シンシア様、それはこれからマッケンジーを取り調べるということで宜しいではありませんか? 今回の件に関してはマイヤーではなくマッケンジーが詐欺を働いたということで……。」


そこまで裁判長が言うとシンシアがピシャリと言った。


「裁判長! 私は不思議に思うのです。彼の盗みの目的は一体何だったのでしょうか? 」

「シンシア様! 」


突然大きな声でビルがシンシアに呼びかけた。シンシアと裁判長がビルの方を見る。ビルは二人が自分を見たことを確認してから今度は声量を抑えるとゆっくりと喋りだした。


「実はここで申し上げたいことがあります。それはマッケンジー氏の略奪にも関係する問題でこのままこの問題を放置することはこの国の腐敗を推し進め、ひいてはヘフナー王の王としてのお立場すら危うくするものであります。」


ビルは淡々とそう言ったがそれを聞いたシンシアは血相を変えて大きな声を出した。


「お父様のお立場が危うくなるというのですか!? その問題というのは何です!? 」

「貴様! 突然そんなことを言い出すとはシンシア様に失礼だぞ! 今はマイヤーの詐欺と王室侮辱について審理しているのだ! シンシア様、今回の審理についてはマイヤーは無罪放免、逆にマッケンジーに関しては詐欺罪、王室侮辱罪、法廷侮辱罪等で再度取り調べののち審理ということで一旦閉廷しては如何でしょうか? 」


裁判長も必死だ。このままの話の流れでいけば自分達とタンケーダの癒着についても言及されるかもしれないということに裁判長は気が付いているのだろう。だがそんな裁判長の心配など知りもしないシンシアはこう言い放った。


「裁判長、何を言っているのです? この国の王立制度が危ういと彼は言っているのですよ! そんな話を悠長に『では次回に。』などと言ってはいられません! あなたには少し危機感というものが無さ過ぎます! 」


そこまで言われては何も言い返しようがない。裁判長は黙り込んでしまった。そしてシンシアはビルの方に向き直った。


「被告弁護人、あなたのお名前は? 」

「ミック・ジャグワーと申します。」


ビルはシェリルの魔法によって完全に自分がミック・ジャグワーという名前で世の風紀を乱すタンケーダの一味を懲らしめようとする正義感の強い弁護士になりきっている。その姿は頼もしい限りだ。魔法の効能もあるのかもしれないがビルが予想外に優秀な弁護士であることに僕は心の中で驚きつつもその能力に感謝していた。


「ではミック、続けなさい。」

「ハッ! では続けさせて頂きます。」


シンシアにそう言われてビルが返事をした。いよいよこれからがタンケーダ追求の本番だ。

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