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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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反撃の裁判長

「この神聖なる法廷に変装して入ってくるなどけしからん! 法廷侮辱罪だ! 」


裁判長がそう言って僕を睨みつけてきた。


「法廷侮辱罪だって? 」


僕は思わずそう呟いていた。そんな罪名が存在することも僕は知らなかったのだ。変装して法廷に入ることがそんなに大きな罪なのか? 僕は自分がどうすれば良いのか分からずその場に立ち尽くすことしか出来なかった。


「刑務官! その男をつまみ出せ! 」


裁判長が続けて叫んだ。さっきまで青ざめて死人のようだった裁判長の顔が今では生気を取り戻している。どうやら僕をこの法廷から一言も喋らせないうちに追い出す口実を見つけたので生き返ったらしい。裁判長の言う法廷侮辱罪という言葉に何と言い返していいのか分からない僕は裁判長達を追い詰めたつもりが逆に追い詰められてしまった!


「刑務官! 早くしろ! 」


裁判長がまたそう叫んだ。まずい、このままでは僕は退廷させられてしまう。このまま引き下がってしまっては僕が今日ここに来た意味はないのだ。すると次の瞬間ビルが裁判長の命令に抗おうと大きな声でこう言った。


「お待ち下さい! 」


だが裁判長は刑務官の方に急ぐようなジェスチャーをしながら早口でこう言い返した。


「駄目だ! 待つことは出来ない! 」


裁判長はビルに対して全く聞く耳を持たなかった。合図を受けた刑務官が二人僕を力づくで法廷から連れ出そうとずかずかと歩み近寄ってくる。僕に証言をさせまいと裁判長も必死だ。だがそこでビルはまた大きな声を出して訴えかけた。


「裁判長、確かに彼がしたことは法廷侮辱罪に当たるかもしれません! ですが先ほど彼が素顔を晒した途端いきなり暴漢に襲われたことを考えてみれば分かるように彼は重大な情報を持っていて常に命を狙われているのです! 先ほど彼がいきなり殺されかけたという事実は彼が知る真実が明るみに出れば都合の悪い人間が彼を亡き者にしようと常に彼の命を狙っているということを証明したようなものです! 彼が出廷する為には全てを秘密裏にしなければなりませんでした! どうか彼が証言することをお認め下さい! 」


ビルの必死の叫びにも裁判長は表情を変えない。二人の刑務官が僕の目の前に来た。ここまでか? そう僕が思った瞬間だった。


「裁判長! 彼の退廷は認めません! 被告側弁護人の言う通り彼は大きな危険が潜むことを知っていながら強い意志を持ってこの法廷に出席しているのです。彼に発言をさせなさい! 」


またしてもシンシアの力強い言葉が法廷内に響き渡った。法廷内がシーンと静まり返る。その後一瞬の間を置いてから裁判長が一言ポツリと言った。


「……分かりました。」


裁判長はそう絞り出すように小さな声を発すると刑務官に手でその場にとどまるよう合図をした。刑務官の動きが僕の直前で止まる。この間誰も喋る者はいなかった。僕の頬を一雫の汗が伝って落ちる。


「ユージーン・マイヤー。」


すると突然シンシアが僕の名を呼んだ。僕は慌てて答える。


「は、はい! 」

「あなたはこの法廷で良心に誓って真実を述べ、何事も隠さず偽りを述べないことを誓いますか? 」

「はい、誓います。」

「宜しい。では証言を始めなさい。」


シンシアは僕にそう言った。その瞬間裁判長とイースティン、そしてマッケンジーの三人は表情がまた死人の様に真っ青になってしまっている。だが同情は必要ない。ここで僕は更に彼らを敗北に導く決定的な打撃を与えなくてはならないのだ。僕はこの日の為にシェリルと暇さえあれば様々な状況を想定して如何に王族の人間に僕の言わんとすることを信じさせるかを練習してきた。あとはシェリルに魔法をかけられたビルと上手くやるしかない。ビルには魔法を通じて僕とシェリルが想定したあらゆる状況が頭に入っている筈なのだ。するとビルが僕の方を見てこう言った。


「では始めます。ユージーン君、証言台に立って下さい。君は被告とはどんな関係かね? 」


僕は法廷の中央にゆっくりと歩み出て遂に証言台に立った。そして僕は大きく深呼吸をした後一言一言を噛みしめるように言った。


「そこにいるウォルフガング・フォン・マイヤーは僕の父です。僕は父の無実を証明する為にここにきました。」


背後の傍聴席から「おおっ! 」という声が上がった。その声には驚愕、興奮、好奇心に嫌悪や期待、様々なものが入り混じっているように感じられる。タンケーダと父さんに様々な関係のある人が大勢集まって事の推移を見守っているのだ。当然そこには様々な反応があって当たり前だろう。


「どうやって無実を証明するのだね? 」


ビルが核心に触れる質問をしてきた。僕は自分の心臓の鼓動が高鳴るのを抑えるようにゆっくりとこう言った。


「証拠があります。」

「何やと!? 」


背後でタンケーダがそう叫ぶのが聞こえた。僕は一旦証言台から下りて先ほどまで自分が座っていた座席のところまで戻るとその足元に置いておいた三つのケースを手にしてゆっくりとまた証言台に戻った。

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