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Cross Of Blue Iron  作者: 福山 サミー 大介
竜と巨人編
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参上!

「何やて!? ユージーンやて!? 」


一瞬の間を置いてから僕の背後でそう大きな声が聞こえた。声の主はタンケーダだ。絶対に来てほしくなかった人間が裁判の始まった時から目の前にいたという事実に今更気がついたタンケーダの驚きはかなりのものであっただろう。事実、背後から聞こえるタンケーダの声だけで奴の狼狽えようが僕には如実に伝わってきた。


「彼の名はユージーン、そこにいるマイヤーさんの息子さんです。」


ビルがそう付け加えた。だがそこで裁判長が強い口調で言った。


「ふざけるのはやめなさい! その男はどう見ても四十代から五十代の年齢ではないか! 父親と歳が変わらぬ息子などこの世にいる訳がない! いい加減なことを言うのはやめなさい! 」


ビルが僕に目配せした。それを受けて僕は足元で大人しく座っているシェリルを見る。するとシェリルは軽く頷いた。僕は上着のポケットからハンカチを取り出しながら裁判長にこう言った。


「裁判長殿、私は変装していたのです。それを今から解きます。」


僕はそう言ってからハンカチで顔をゴシゴシと拭くふりをした。そのタイミングに合わせてシェリルが僕の魔法を解く。その後僕はゆっくりと顔からハンカチを下ろした。


「あっ!? 」


裁判長やイースティン、マッケンジーの顔が更に凍りつくのが見ていて分かった。彼らがこの裁判で最も恐れている僕が突然現れたのだ。その目はまるで幽霊を見ているかのように恐怖に満ちている。そんな彼らを見ていると僕は痛快な気分になった。僕はわざと裁判長とイースティン、そしてマッケンジーの顔を見据えたままニヤリと笑みを浮かべてやった。彼らの目が更に大きく見開かれる。そんな僕を見て父さんですら目を丸くしていた。



「コラ! お前ホンマは何者じゃ!? 」


また背後から大きな声が聞こえた。少し上ずりながらも僕を威嚇しようとするタンケーダの声だ。タンケーダめ、鬱陶しい奴だ! だが僕はそんな脅しには屈しない、お前が沢山の人を殺した地下牢から生きて這い出てきた僕の姿をその目に焼き付けるがいい! 僕は後ろを振り返ってタンケーダを思いっきり睨みつけた。


「ホンマにあのガキか? どうなっとるんじゃ!? 」


タンケーダは僕を睨み返しながらも気が動転したのか大声でそう喚いている。タンケーダに向かって右横の席に座るデブ嫁は目と口を大きく開けて僕を指差したまま固まっていた。さらにその右横に座るコイチも母親と同様に唖然とした表情で何もすることが出来ずに僕を見つめている。僕は一言こう言った。


「……僕はまだ生きている。」

「チッ! 」


僕の言葉に反応したタンケーダが舌打ちした次の瞬間だった。タンケーダの左隣に座っていた紫のスーツ姿の男が突然席から立ち上がった。その男の右手にはスーツの内ポケットから取り出した刃渡り十cm程のナイフが握られている。するとその男は傍聴席の前に設けられた柵をひょいと飛び越えて僕にナイフを切りつけてきた。


「うわっ! 」


僕はそう悲鳴を上げながらも横っ飛びで何とか男の最初の攻撃をかわした。男は勢い余って証言台にぶつかるとそのまま法廷の中央、裁判長の座る机の前に倒れ込む。だがその男はすぐに顔を上げて僕の方を見るとナイフを握り直し立ち上がろうとした。まずい! このままでは殺される! 僕はナイフで切りつけられる前にその男を倒すべく胸元の拳銃に手を掛けようとした。だがその時だった。


「刑務官! その男を取り押さえなさい! 」


大きな声が響き渡った。声の主はシンシアだ。王族の命令には誰も逆らえない。刑務官達にもひょっとするとタンケーダの息がかかっていたのかもしれないが彼らはそのナイフを持った男をその場であっという間に取り押さえた。


「あなたは何者です! この神聖なる法廷を何と心得ているのです!? 」


シンシアはまだ幼いにも拘らずもう既に王族の気品のようなものを身につけている。彼女の声には大人顔負けの迫力があった。だが取り押さえられた男は何も答えない。暫く抵抗していたが逃げられないと悟ると無言のままじっとしていた。


「刑務官、彼を牢屋へ入れなさい。後できっちりと取り調べをするように! 」

「ハハッ! 」


助かってほっとしたのも束の間、刑務官が二人でその男を両脇からガッチリと捕まえて法廷から連れ出した。その時僕はちらっとその男の顔を見たが彼はまだ若く僕と歳のそれほど変わらない男だった。おそらくタンケーダに金で雇われたゴロツキだろう。彼は金の為なら人を殺すことを何とも思わなかったのだろうか? それとも少しでも葛藤の気持ちがあったのだろうか? いずれにせよ金というものは人をいとも簡単に狂気に引きずりこむ。将来僕もその狂気に引き込まれてしまうのかもしれない、ふとそんなことを考えると僕は安堵だけではない複雑な気持ちになった。


「ユージーン・マイヤー! 」


僕がその場に立ち尽くしていると突然裁判長が僕の名を呼んだ。僕は反射的に裁判長の方を向くとその顔を睨みつけた。

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