-地球-ネオ=クリムゾン
その頃、地球の正義英雄の家の地下にある秘密基地では、不穏な動きがあった。
地下深く、薄暗い巨大な空間にある祭壇上に巨大な渦と左右に2つの影、祭壇の下には控えるかのように左右に別れた12の影があった。
『ヘル=アーク、報告をせよ』
巨大な渦から、声と言うにはあまりにも禍々しい響きで言葉が響く。
「はっ!亜空間転移装置の充電率が遂に100%になりました!」
全身を黒い外角に覆われた巨大な二足歩行型昆虫からの、その報告に満足そうに渦からの声は続ける。
『Dr.カオス、亜空間転移装置の座標指定情報の細分化による次元転移の成功率はどうなっている?』
「ヒッヒッヒ‥100%ですじゃ‥次の世界こそ、ネオ=クリムゾン様が求める最高の素材が犇めく世界に航れる筈ですじゃ」
「‥確か、前回も同じ様な台詞を吐いていたな、Dr.カオス」
「‥煩いのう、凶次‥新参者に何が解る?」
祭壇の下にいた一人、凶次と呼ばれた青年に、渦の隣に控えていた白衣の老人Drカオスが言い返した。
「‥下らんな‥俺は下がらせてもらうぞ」
渦の隣に控えていたもう一人の影、漆黒の甲冑に包まれた存在が祭壇を降り出入口へと向かう。
「ジャッカル!幾ら貴様がNo3とは言え、ネオ=クリムゾン様の御前ぞ!不敬であろう!」
ヘル=アークがジャッカルと呼んだ漆黒の甲冑に向け言い放つ。
「俺が不敬なら、そこの二人の言い争いや不在のNo2はどうなんだ、下らん」
そう言い残すと踵を返して再び出入口に歩き出した。
「ぐぬぬ‥ジャッカルっ!貴様!」
『よい、ヘル=アークよ』
ネオ=クリムゾンがヘル=アークを止める。
「し、しかしっ!」
『あの者は、自由に行動する事を条件に我が陣営に取り込んだのだ、好きにさせよ』
その言葉に憤りを抑えきれないヘル=アークも口を紡ぐ。
『No2が帰還次第、次元転移を行う‥各自準備に掛かれ』
ネオ=クリムゾンの言葉に、巨大な空間に残る13の影が膝まずく。
今、英雄と長きに渡る死闘を繰り広げる事となる巨悪の足音が、再び英雄の前へと立ち塞がろうとしていた。