喫茶店ボロンゴ
瞬きをした瞬間、英雄の見ていた風景に様々な色が表れた。
「‥転生した場所がこことは‥ファンタジー小説とか読んだことあるけど、予想外の展開だよこれは」
何故か英雄はカウンターのある席に座り、カウンターの上にはホットココアらしい色の飲物が置かれていた。
「ん?どうしたんだい英雄君?ココアが覚めてしまうよ?」
と、目の前のダンディーな口髭を生やしたエプロン姿の、多分[おやっさん]が怪訝な表情で言ってきた。
「‥おやっさん?」
「なんだい英雄君?」
どうやらおやっさんで間違えないらしい。
取り敢えず周囲を見渡す、どう見てもファンタジー色皆無の近代的な喫茶店の内装だ、テレビやPCまである。
「キョロキョロして、そんなに珍しい物でもあったかい?見慣れた喫茶店だろ?この[喫茶ボロンゴ]はさ?」
激しく見慣れない喫茶店を見慣れたと言われたが、恐らくそう言う設定なのだろうと納得する英雄。
「あの、マスター‥ここって地球ですか?」
「‥マスターって‥急に呼び方が変わると何か他人行儀に感じるぞ、英雄君?」
「あ、その、すいませんおやっさん‥」
「いや、まぁ構わないけどね‥ところでチキュウ?それは何だい?」
この返答で、近代的な喫茶店から予測した地球の文明等は、設定で付いているだけだと解った。
「あ、何でもないです‥あの、おやっさん‥テレビ付けてもらっても良いですか?見たい番組が有りまして‥」
「ん?構わないけどさ、どのヒーロー番組を観るんだい?」
詳しく聞いたところ、テレビは映るがヒーロー番組しか無いらしい‥しかもこのテレビやPC等はこの世界ではオーパーツ、つまりオーバーテクノロジーの塊なんだとか。
「はっはっは‥私が昔冒険者時代に集めたって何度も話してるじゃないか、ホントにどうした英雄君?大丈夫かい?」
何だか無理矢理辻褄併せてるみたいだが大丈夫だろうか、と若干不安になる英雄。
「まあ、外の空気でも吸って頭をリフレッシュしてきなよ、英雄君!」
そう言われ、これから第二の人生を過ごす世界の事も知らないとな、と思い立ち言われた通りに散歩に行くと言い、好物のココアを飲み干して店の外へと向かった。
外に出る前に、思い出したかのようにおやっさんに振り向き声をかける。
「あ、おやっさん‥その今やってる番組の[録画]って出来るかな、超力刑事シャリタンの」
「[録画]かい、ああ、やっておくよ」
どうやら録画まで出来るらしい。
帰ったら見ようと決めて、今度こそ英雄は店を後にした。