やり過ぎ
「んー、じゃあもう、神様が決めて良いよ‥」
英雄は諦めた。
「そうかそうか!では英雄にとってのファンタジーライフに相応しいお願いを儂が選んでやるからなっ!」
満面の笑みを浮かべながら、禿が嬉々として「この能力を‥」とか「あの設定に‥」とか呟いている。
選択肢を間違えた、と後悔する英雄。
「よし完成じゃ、パーフェクトプランじゃ!フォッフォッフォッ‥」
激しく不安しか感じない笑い声をあげる禿。
「これで英雄は世界最強じゃっ!」
「今すぐ貴様が決めた力の十分の一の力に設定し直せ、禿」
英雄が超反応で言った。
「何故じゃ!?この力なら小指一つで惑星を粉々にして、衝撃の余波で銀河系どころか大銀河団位なら消滅させられるレベルなのに!?」
「十分の一じゃなく、根本的に人間の枠に収まる程度まで下げろ、何考えてんのアンタは!?」
クスンっと目を擦る禿に怒鳴る。
「だって、儂が決めていいって‥」
「限度があるでしょうが!何その存在事態が害悪な理不尽パワーは!変身ヒーローより強い生身とか変身の意味無いじゃん!?」
「た、確かにのぅ‥」
英雄の迫力に威厳すら感じさせなくなった禿。
「そ、それじゃ、せめて生身でもある程度は強くしてスタートなら良いかの?」
「ある程度ってどの位の?」
「まぁ、これから行く世界に居ても不思然では無い程度かの?」
「んー‥まあ不自然じゃ無いなら‥」
何か不穏な気配を感じたが、これから行く世界に溶け込めるレベルなら良いかと納得する英雄。
「良し!なら決まりじゃ!」
そう言って、禿から謎の光が英雄目掛けて放たれる。
「‥では、設定した能力で転生するからの、英雄」
「え、あ、はい‥あの、神様?」
「ん?何じゃ英雄?」
少し恥ずかしそうに英雄は答える。
「何でここまでしてくれるか解りませんが‥なんの取り柄も無い俺にここまでしてくれて有り難うございます!」
「ふむ、構わぬよ‥気にするでない」
そう言って温かい眼差しで英雄を見る。
「お主の新たな旅立ちの健やかならん事をな、英雄」
「はい!俺、正義の味方として頑張ります!」
その言葉と共に、英雄はその場から消えた。
「‥全ての存在がお主の様な優しき心の持ち主で在れば、儂等なぞ要らぬのかもな」
禿は、今までの英雄の人生を覗き見、優し過ぎるが故に何時も理不尽に損をしてきて、それでも前向きに生きてきた英雄に憐れみと優しさの籠った呟きを洩らして、その場から消えた。