今、そこにある絶望
「それは、お主の家族に秘密があるのだよ」
至極無表情になった禿が放つ言葉に、空間の温度が下がったかの様な冷たさを英雄は感じた。
「父さんと母さん‥でも、二人は10年前に死んで‥」
英雄が様々な可能性を模索している内に、禿は英雄に向かい言った。
「お主がまだ学生時代にトイレの空間をリフォームに来た業者‥アレな、実は勝手に地下を秘密基地にする為に業者を装ったリフォーム怪人だったんじゃよ」
「まさか、父さんと母さんが秘密結社の関係者とか‥へ?今なんて言った?」
独り言を呟いていた英雄に禿がセンセーショナルな言葉を放ってきた。
「いや、ただ単にお人好しの英雄の両親が、無料で新しいトイレにリフォームして貰えるって言葉に騙されただけじゃ、んで、出入りの時は定期点検を理由に好き勝手出入りされてたんじゃ、大体三日に一回は定期点検に来る業者を疑わんとか、どうなっとるんじゃお主の家族は」
「絶望した!なんか世の中の色々なモノに絶望した!」
背景に絶望したエフェクトでも背負いそうな勢いで項垂れた。
「‥いい加減、話を進めたいんじゃが‥」
禿が急かしてきた、英雄には気力が湧かない。
「まぁよいか、儂はそんな憐れな英雄に新しい道を提示しようと思ってな、お主新しい人生を歩んでみたくないか?魂の輪廻先をまた人として、の‥」
「り‥んね?」
英雄は禿の話に反応した。
「そう、つまり転生じゃな‥無論只の転生では無くある程度お主の要望を取り入れた転生にしてやろう」
禿が穏やかに告げた。
「‥余り興味が沸かないなぁ‥」
「え?転生じゃよ?しかも儂にお願いする権利があるとか、スーパーな特典付きのボーナスステージ的なヤツじゃぞ?興味沸かないの?」
禿がなんか慌てている。
「最強の魔力とか、至高の剣技とか、全スキルMAXとか、絶対に死なないとか、何でもよいよ?何が不満じゃ!?」
「いや、それもう人間以外の何かに転生じゃないっすか、てか魔力とかスキルとか、何処のRPGゲームだよ‥」
英雄の目が冷たい。
「転生する先じゃそれが普通なんじゃが‥RPGって、転生先の世界に失礼じゃろ?」
「え?転生先選べないの?」
驚愕の事実が判明したかの様な表情をした。
「なんじゃその表情は、儂の管轄してる世界にしか転生出来ん、当たり前じゃろ?」
「はげ‥禿の管轄にはサイバーパンクな世界や、地球に再転生とか出来ないの?」
「何故禿をわざわざ言い直した‥まぁ、地球は儂の管轄では無いし、サイバーパンクな世界など儂の趣味では無いし」
[なんて使えない禿なんだ‥]心の中で禿の評価が最底辺に落ちた。
「なら、このまま成仏でいいや」




