奴の名はイレブン
「マスター、素晴らしかった‥思わず『シェフを呼べ!』と叫びそうになりました」
シェフは目の前のおやっさんだ。
「はは、お粗末様っ」
苦笑いをしながら食器を下げる、その時。
「キャーっ!助けてーっ!」
「むっ!女子の悲鳴!英雄君っ!」
「ああ!おやっさん行ってくる!」
生クリームを口に付けまくった英雄が駆け出した。
「何事!?」
英雄の後ろからリリーナも走り出す。
「あっ!お嬢さんお代‥」
おやっさんの言葉は誰も聞いていなかった。
英雄が駆け出して、悲鳴の方角へと駆けて行くと、人垣が出来ている公園へと辿り着いた。
「ハァハァ‥マサギ殿、信じられん‥私が追い付けないなんて‥」
息を切らせたリリーナが遅れて辿り着いた。
「すみません、通して下さい」
英雄が人垣を掻き分けて進む。
「むっ!奴は確かAA級指名手配犯のイレブン!」
同じく人垣を掻き分けて来たリリーナが、目の前で女性に掴みかかっている筋肉質なムキムキスキンヘッドの男を見て叫んだ。
因みに、何故かイレブンは上半身裸でズボンにはスパイクだらけ、サスペンダーが変態チックである。
時折、ヒャッハーっとか叫びながら世紀末風味を醸し出すイレブンに、英雄はコイツも世界観間違えてない?と高まった感情が急速に冷めていた。




