ヒーロー名を決めよう[1]
ボロンゴ少年団結成の明くる日、英雄はボロンゴのカウンターでイチゴショートケーキをつつきながら悩んでいた。
「んー‥トランバード‥ゴッデス‥グランファイター‥ジャッジメント0‥アルスター‥ぐぬぬ‥」
「さっきから何を悩んでるんだよ英雄兄ちゃん?」
うなり声をあげている英雄に小太り気味の少年が話しかけてきた。
「ん?ああ、ゲンター少年か‥いやな、ヒーロー名を考えていたんだが‥」
「え、英雄にぃ、名前もうあるじゃんー」
ゲンターの隣でクリームソーダとモンブランに舌鼓をうっていた赤髪をおさげにした少女が口を挟んできた。
「マリー少女、自分の名前じゃなくて、変身後のヒーロー名だよ」
苦笑いでマリーに話しかけた英雄。
「え?お兄ちゃん変身なんて出来るの!?」
「マジかよ英雄兄ちゃん!」
「凄いっ!ドラゴンとかになるの!?マリー見たいっ!」
流石にドラコンには変身出来ない英雄。
「いや、ドラゴンとかじゃ無くてだね‥あはは‥」
若干冷や汗を流しながら、どう説明しようか悩む。
「英雄君、何なら久し振りに変身してみたらどうだい?」
おやっさんが促してきた。
英雄にしてみたら、おやっさんにも見せた事等無い筈だが、恐らく見たことがある事になっているのだろう。
と、言うより英雄自身まだファトゥナートに転生してから変身は一度もしていなかった。
「そうだね‥なら変身してみるか」
そう言って英雄はおもむろに立ち上がり、店の開けた位置に移動した。
「確か‥小型タブレットのここをスタンバイにして‥と」
『インターフェース接続確認、第一形態への換装準備確認、フォームチェンジへの待機に移行しました、フォームチェンジへの音声入力が登録次第、次回からのフォームチェンジには音声のみで換装します』
「‥よし、いくぞ!」
英雄は予てより考えていた変身ポーズを始める。
両足を開き、握り締めた右拳を大地につけ、正面を見据えたまま叫ぶ。
「着・装っ!!」
瞬間、目も眩む様な光が一瞬光り、光が消えた中には銀色のメカニカルなアーマーに包まれた英雄が立っていた。
「うっ‥うぉおっ!スゲェっ!カッコいい!」
「お兄ちゃんが鎧になった!何か光がピカピカ動いてる!」
「ドラゴンじゃなかったー」
皆思い思いの感想を漏らしている。
「だから、ドラゴンにはなれないって‥」
英雄は変身した姿で溜め息をついた。




