アベル君
数日後、英雄は喫茶ボロンゴでモーニングを楽しんでいた。
「いやー、おやっさんのフレンチトースト絶品ですよねー」
目の前のフレンチトーストとサラダ、ココアのセットに舌鼓を打ちつつ朝のヒーロー番組を横目に言った。
「ふふん、だろー?実は自慢なんだよねー」
因みに、ファトゥナートのパンは固い、しかも
食パンなんて存在しない。
「レバンノンの街でフレンチトーストやココアを堪能できるのは、ここだけですからねー」
ホットココアを飲みつつ英雄は満面の笑みで言った。
英雄が言った街[レバンノン]は、今英雄達が居る街の名前で、人口は約150万人の大都市である。
人間だけでなく、獣人族、ホビット族等も少数ながら居る、他にはエルフ族やドワーフ族等も居るらしいが、ほんの一握り、一桁程度である。
「まあ、ウチは他にもメニューがあるんだがねー‥」
おやっさんが苦笑いしながら答えた。
その時[カランカラン]と、ドアのベルが鳴った。
「いらっしゃい‥ん?」
入ってきたのは金髪を真ん中分けした整った顔の少年で、店の中を見渡していたかと思うと、真っ直ぐに英雄の元へと歩き出した。
「おじちゃんっ!」
その声に英雄が振り向くと、見覚えのある少年が目の前に立っていた。
「ん?‥あぁ、あの時の‥」
「はいっ!あの時はありがとうございましたっ!」
「確か‥アベル少年‥だったかな?」
英雄は何日か前に川から助けた少年を思いだし、名前を確認した。
「はい、アベルですっ!」
アベルは名前を覚えて貰えていて嬉しかったのか、満面の笑みで答えた。
「因みにアベル少年‥おじちゃんじゃ無くお兄ちゃんね‥」
転生の影響か、英雄の外見は二十代半ば程度に若返っていた、しかしアベルにしてみればおじさんなのであろう。




