エアルディートの初めてのおつかい
七嶋アリサが召喚された『人間男の亜世界』の神聖アカシア帝国から、山脈を挟んだ西の方角に、アーク・エル共和国という大国がある。
大陸の3割を占めるかという広大な国土には、海岸も湖も山岳地帯も砂漠もあり、そこでは様々な民族や人種が混ざり合った、独特な文化が形成されている。
歴史を紐解くと、まずその国で発達したのは商業だったそうだ。多様な植物や動物などからとれる食材や、各地から採掘される鉱物資源を主とした第1次産業や、様々な民族が作り出す工芸品などのやり取りがさかんに行われたことで、他の地域に比べて商業文化が栄えていったのだ。
すると、市場原理によって、より価値の高い商品を開発するための競争が行われるようになり、各地から研究者や技術者が集まるようになった。また、それらの研究成果や技術が既存のルールと衝突したり、濫用されることによって不当な被害を被る者も現れるようになり、それらを取り締まるための法整備も急速に進んでいった。
それから時は過ぎ、幾多の産業革命、魔術革命、技術革新などを経験しても、知識、法、商業分野についての他国からのアドバンテージは失われず、むしろその3本柱は、アーク・エルを象徴する「強み」となっていった。それらの分野を推し進めていくことこそが国としての競争力、国民全体の利益に繋がり、ひいては『亜世界』全体にとってプラスになるとまで言われるようになると、アーク・エルは国策としてその3分野を発展させることに特化することを考え始めた。そして、それまで行っていた中央集権的な政治方針を撤廃し、自国を3つの州に分割してそれぞれに自治権を与え、各州をそれぞれ1つの分野を研究することに特化した専門機関としたのだった。
そんなアーク・エル共和国の一端、商業を担当しているアーク・リジカーレ州に、ある小さな都市があった。
今や、商業の主体は魔法を応用したサービス業がほとんどであったが、その都市は山脈や大きな森が近くにあったこともあり、路上に商店を展開して商品を販売するという昔ながらのスタイルの商業形態も、いまだに少なくなかった。そんな、比較的のどかな風土のその都市に、その日、1人の「女神」が舞い降りた。
「まあ……」
様々な食品を扱う商店の前で、感動の声をあげた「彼女」。店頭に並べられていた鮮やかな赤や青や紫色に染まるリンゴのような果物に、きらきらと目を輝かせている。
「この『亜世界』の植物は、このような不思議な色の実をつけるのですね? うふふ……面白いです」
その様子は、まるでケーキ屋のディスプレイの前の子供のようだ。背が高く、大人びた顔と体の彼女が見せるそんな幼い仕草はとてつもなく可愛らしくて魅力的で、見たものを例外なく虜にするだけの破壊力を持っていた。しかし、椅子に腰かけて本を読んでいたその店の主人の視界からは彼女の姿は外れていたらしく、彼は、つまらなそうに舌打ちをした。
「……ちっ」
『人間男の亜世界』に、それまで存在しなかったモンスターや妖精という種族が現れるようになったのは、ごく最近のことだ。
その原因とされている神聖アカシア帝国では、人間以外の種族のことは家畜以下の卑しい存在として認識され、人間たちは彼ら、彼女らに対して、何の抵抗もなく虐待や殺戮を行っていた。しかし、ここアーク・エル共和国では、先進的な法意識をもつアーク・ルーエ州が先導し、国全体でモンスターや妖精に人間と同じ権利を認め、受け入れる方針をとっていた。その為、国内でモンスターや妖精を見かけることも珍しいことではなく、人間がそんな彼らを理由なく攻撃しようものなら、重罪として裁かれるようなシステムが出来上がっていた。
もちろん、それはあくまでも表向きの話で、実態としてはまだまだそのような理想からかけ離れている部分があるのも、また事実だった。突然『人間男の亜世界』に投げ込まれたモンスターや妖精たちが、そう簡単にそこのルールに馴染める訳もなく。その多くはまともな職につくことも出来ず、窃盗や殺人などによって人間たちから金品を巻き上げて暮らすしかないという、社会問題を抱えていたのだ。
そしてその店の主人も、モンスターや妖精たちにそんなイメージしか持っていなかったのだ。
この耳障りな甲高い声は、人間じゃねえな……。ったく、モンスターだか何だか知らねえが、あんな野蛮な奴らが人間の使う金を持っているはずがねえ。仮に持っていたとしても、そんなものはどうせ、怪しげな魔法で作った偽物だ。そんなやつに、俺の店の物を売ってなんかやるものか。
そんな決意を胸に、視線を本のページに向けたままの店主は、「彼女」に冷たく言い放った。
「悪いが、冷やかしなら帰ってくれ。この『亜世界』じゃあ、物を買うには金がいるんだよ。ちゃんとした、本物の金がな」
「カ……ネ……?」
言われた「彼女」は、店主の敵意にはまるで気付かない。ただ、キョトンと目を丸くして、首を傾げるだけだ。
「『カネ』……ですか? 皆様からこれらの物を分けて頂くには、その……『カネ』というものが必要なのですか?」
「ああ、そういうことだ! そんな事も知らないのか!?」
店主は苛立たしそうに読んでいた本を閉じると、立ち上がった。
こいつ、金の存在さえ知らねえじゃねえか! だから俺は最初から、この国に人間以外を受け入れるなんて反対だったんだ。売り物を盗まれないうちに、店から追い出してやる!
そして、そこでようやく彼は顔を上げて、「彼女」の顔を睨み付けようとした。
「金がねえんだったら、用はねえっつってんだろ! さっさとここから……出……て……いって…………」
「それは、困りましたね……。わたくしは、妹たちに頼まれた物を皆様から分けて頂かなければいけないのですが……」
「あ……ああ……」
宝石のように輝く長い金髪。染みひとつない真っ白な肌。
そこにいたのは、完全で完璧な、「女神」の姿だった。
もちろん、「女神」という呼び名はただのたとえに過ぎない。この『亜世界』に神などという存在が実在しているのかは定かではないし、そもそも彼女は、かつて『妖精女の亜世界』で『管理者』していた者。かつて、エアルディート・シュヴァリベルツィネアという名で呼ばれていた、1人のエルフに過ぎなかったのだから。
しかし、そのとき店主が目にしたエアルディートの姿は、そんな前提や世界の設定など軽く超越するほどに美しく、神々しい輝きを放っていたのだった。
「本当に、申し訳ありません。お恥ずかしながら、わたくしは最近この『亜世界』にやって来たばかりなもので、この『亜世界』の常識を持ち合わせていないのです。よろしければ、その……『カネ』というものがどちらに行けば手に入るか、教えて頂けませんか?」
「あ、あの……」
頭をたれてそんな風に尋ねてくるエアルディート。彼女のそんな何でもない仕草を見ているだけで、店主は激しく心が乱されてしまう。顔は赤く染まり、意味不明な焦りと緊張で、口が回らなくなってしまう。
「う……え、えと……」
ただ、そんな外面とは裏腹に、頭の中ではフルスロットルで空回りを始めてもいた。店主の内面は、「彼女の期待に応えたい」、「あわよくば自分に好意を持ってもらいたい」という気持ちが、夏の入道雲のようにもくもくとわき上がっていた。
もちろんエアルディートは、そんな情けない店主の様子にも少しも気付かない。
「あ、ああ、そうですよね……。いきなりこんなことを言われても、困ってしまいますよね? 初対面のわたくしに、貴方様が物を教える道理など、ないわけですし……。もしもご気分を害されてしまいましたら、申し訳ありませんでした。ですが……そうなるとやはり今のわたくしでは、妹たちから頼まれた『おつかい』は達成出来ないということになりそうですね。少し、残念です……」
言葉ではそう言いながらも、悲しそうに沈んでいる彼女の表情。それが、簡素なローブの上からでもわかる、なまめかしいボディラインと合わさることで、背徳的で蠱惑的な未亡人のような色気さえ生み出している。彼女の肉体の稜線を目で追うだけで、堪えきれないほどの快感が店主の全身を支配する。
きっと並みの人間ならば、その場ですぐさまひざまずいて彼女のことを神と崇めたいという欲求に、抗うことなど出来なかっただろう。店主がいまだに理性を保っていられたのは、彼がこれまで一流の商売人として生きてきたという、プライドがなせるわざだった。
しかし、彼のその矜恃や誇りすらも……。
「ああ、もしもわたくしのこの髪が、金で出来ていたなら、貴方様にも喜んで頂けたのかもしれませんのに……」彼女はそう言って、自分の長い美しい金髪を、手で束ねて見せてくる。髪がまとめられたせいで、ほんの一瞬だけ、彼女のうなじが露出される。「なんて……。うふふ、失礼しました。そんな訳はありませんでしたね」
そして最後の仕上げとして、彼女は店主に対して、いたずらっぽい微笑みを向けてくるのだった。
ただの人間ごときが、それに抵抗など出来るはずもなかった。
「…………ます……」
「このままわたくしの非常識にお付き合いさせるのは申し訳ありませんし、一旦出直すことにしますね。それでは……失礼しました」
彼女はそう言うと、店主に優雅な一礼をしてから、その店を立ち去ろうとする。
「……あ、あげます!」
しかしそこで、店主の裏返った声が彼女を呼び止めた。
「え?」
「あげます! この店の物、何でも……貴女に!」
言葉の順番がでたらめになってしまっていることさえ、店主にはもうどうでもよかったのだ。
「な、何でも、持って行って下さいっ! 貴女の好きなだけっ! 好きな物をっ! ここから!」
「で、でも……」
エアルディートはまた不思議そうに、首を傾げる。
「先ほども貴方様がおっしゃったように、わたくしは『カネ』という物を、持ち合わせておりませんので……」
「い、要りませんっ! 金なんて、貴女からは取れませんっ! っていうか、あげますっ! 貴女に喜んでもらえるなら、金だって、す、好きなだけ……」
彼はその言葉通り、自分の店の引き出しから貯め込んだ売上金を掴むと、エアルディートの前に差し出してしまう。商売人の彼にしてみれば、それは自分の命を差し出すよりも強い服従の態度だった。
「まあ……」
少し驚いたあと、エアルディートは「お優しいのですね……」と言って、微笑んだ。店主にはそれだけでもう充分だった。彼はその瞬間に、一生分の幸福感を味わうことが出来たのだから。
「では、こちらだけ、頂けますか……?」と言って、エアルディートは近くの棚にあった赤い小さな果実を1つだけ手に取ると、本当にその店を出て行った。
店主は、彼女がいた数分程度の夢のような時間をかみしめるように、ただただ、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
それからしばらくして、その店に、常連客の男が現れた。
「おう、オヤジ。調子はどうだよ? 実は、いい儲け話があるんだけどよ……って、なんだこりゃ!? どうした!? 強盗にでも入られたかっ!?」
店の真ん中で放心している店主。右手には現金がわしづかみにされており、こぼれた分が足元に落ちている。ただ事でないことを悟った常連客が、店主の肩を揺らす。
「おい、オヤジっ! 何があったんだよっ!? おい!?」
何度目かの呼びかけのあと、店主はまだうつろな目のまま、やっと返事を返した。
「あ、ああ……お前か」
「お前か、じゃねーよ!? い、一体何があったんだよっ!」
「あの……あれだよな……」
「だから、何だよ! 何でこんなことに……」
「エルフって……いいよな……」
「……は?」
それは、『人間男の亜世界』に新たな性的嗜好が生まれた瞬間だった。
※
アーク・リジカーレ州外れの森の中に、突然ぽっかりと木々がなくなって開けた空間がある。そこは、『妖精女の亜世界』からやって来たエルフの少女たちが潜伏している場所だった。
「ああもうっ! 全然用意が終わりませんわっ! 早くしないと、お姉様が帰ってきてしまいますのにっ!」
『建築家』が忙しく動き回って、大きなテーブルの上にグラスや飲み物の入った木製の容器を並べている。あまりそういうことに慣れていないのか、焦りすぎた彼女はさっきから何度もグラスを倒したり落としたりして、自分の仕事を増やしてしまっている。
すぐ近くには、見上げるほど大きな一枚岩もある。中をくりぬいて火がついた枯れ木の山が置かれているところからして、それは巨大な石窯のようだ。その窯の様子を見ていた『分析家』が、振り返って『建築家』に親指を立てた。
「こっちの準備は、ほとんど完成だよ。スポンジはしっかり膨らんできてる。あとは、用意しておいたホイップクリームを塗って、姉さんが持ってきてくれる『イチゴ』っていう果実を乗せるだけかな」
「手が空いたらなら、こっちの手伝いをしてちょうだいよっ! ああ、めんどくさいったらないわよっ! こんなの、私の『建築家』の職能を使えればすぐに終わるのにぃっ!」
「はは……そんなこと言ってもしょうがないよ。だってこの『亜世界』じゃあ、精霊の力が弱くって、僕らは前と同じようには職能を使えないんだからさ」
「そうですね」
木をくりぬいて作った1人用のソファに腰かけている『研究者』が、無表情に頷く。彼女はその手に、図版入りの本のようなものを持っていた。
「それにこういうのは、楽をしないで地道な方法でやり遂げた方が、意味があるらしいですので……」
「……っていうか」そんなことを言いながら、1人で椅子に座ってさぼっているように見える『研究者』に、『建築家』がいぶかしそうな顔を向けて言う。「そもそも本当に、こんなことをしてお姉様が喜んで下さるんですの? こんな、人間の真似事のようなことをして!?」
「不満があるなら、貴女は参加しなくてもいいんですよ?」
「だ、だって、だってですわよ!?」
『建築家』は、『研究者』が持っている本の図版と、『分析家』が窯で作っている料理に、交互に視線を向ける。
「『特別な人』の『特別な日』に、『ケーキ』や『プレゼント』を送って祝う……なんて。そ、そんなの、いかにも寿命が短い猿たちが考えそうなイベントじゃない!? それを、私たちエルフが真似するなんて、何て言うか……ナンセンスですわっ!」
「ふむ……」
『研究者』は、持っていた本のページをパラパラとめくり始める。
実はその本は、彼女がアーク・エル共和国の知識を担当するアーク・リブラ州の、中央にある巨大図書館に忍び込んで拝借してきたものだ。使用されている文字はエルフの彼女たちがもともと使用していたものとはまるで違うのだが、『研究者』にかかればそんなことは大した問題ではなかったようだ。
「確かに、人間という生き物は私たちエルフに比べたら、とても不合理で不作法で、不粋な猿です」
「それに不潔で不衛生で、きったねーですわっ!」
「それ、全部おんなじだよ?」
『建築家』の横やりや、それに対する『分析家』のツッコミも気にせず、『研究者』は続ける。
「ですが……そんな猿たちの中には、時として、私たちが思いもしなかったような面白いことを考える者がいるようなのです。不思議なことにね……」
そこで彼女はページをめくる手をとめて、持っていた本を閉じる。そしてその表紙に目を落として、彼女には珍しく、少しだけ微笑みを浮かべた。その本は、どうやら子供向けの絵本のような物らしい。そこには人間の文字で、「たのしいたんじょうび」という意味の言葉が書いてあった。
「『サプライズのバースデーパーティー』なんて、余りにも理不尽で不条理過ぎて、私たちでは絶対に思い付けなかったイベントです……しかしだからこそ、とても面白い……。私自身、不本意にも何だかワクワクしてしまっているのですよ……」
「そ、それは、そうかもしれないですけど……」
言葉を詰まらせる『芸術家』。きっと彼女も『研究者』と同じ気持ちなのだろう。こんな風にエアルディートを祝うこと、そして、その準備をしている自分自身の今の状況に、胸をときめかせているのだ。
「本当に、不思議だよね……」
『分析家』も、2人の気持ちに同意するように言う。
「少し前の僕らなら、人間のやることなんかに、こんなに興味を持てなかった。僕たちの興味は全て姉さんに向けられていて、それ以外はどうでもよかった……なのに」
「今は、人間や、自分たち以外の者たちが考えることにも、興味を持てるようになっている……。自分と姉様以外のことを知ることで、私たちの姉様への愛、そして姉様の私たちへの愛に、更なる深みを与えてくれる……そんな気がしているのです」
『研究者』は、自分が椅子にしている大木の後ろの方に視線を送る。その地面には、不思議な模様の魔法陣が書かれていた。
実はそれも、『研究者』が人間の施設に忍び込んで得た知識をもとにして書かれたものだった。しかもその魔法陣があったのは、本と同じアーク・エル共和国ではなく、その隣国のアカシア帝国だ。今までに、七嶋アリサに対して何度か使用されてきたものだ。
「この『亜世界』に来てからの姉様は、いつも、『何かが不足した』ような、『寂しそうな』お顔をされていました……。それが一体どういう意味なのかは、私たちには分かりませんが……そんな姉様を放っておくことは、出来ません。私たち妹が姉様に出来ることはこれぐらいなのですから……」
「うん。姉さんなら、きっと喜んでくれるよね……。この、僕らからの『プレゼント』を……」
「ふ、ふんっ! 貴女たち、どうかしてるわっ! 『私たちの亜世界でお姉様が最後に会った人間』が、なんだって言うのよっ!? そんなやつ私は全然興味ないし、お姉様だって、きっともう忘れちゃってるに決まってますわっ! だから、『お姉様をもう1度そいつに会わせてあげる』なんて、そんなこと何の意味もなくって……」
1人反発する態度をとる『建築家』。しかし、他の2人はそれがみえみえの強がりであることに気付いていた。
「ま、まあ、ここまで来たらしょうがないから、今回は貴女たちの顔を立ててあげなくもないけど……」
「そうですね……」
と、そのとき。森の中から、小さな影が飛び出してきた。
「たっだいまなのーっ!」
それは、宇宙から帰って姉たちと合流していた、『宇宙飛行士』だ。
彼女は心底楽しそうに、両手を翼のように左右に伸ばしながら、『建築家』たちの間を駆け回る。
「もおすぐなのぉ! もおすぐ、お姉が『おつかい』から、帰ってくるなのーっ!」
「ま、マジですのっ!? ちょっと待ってよっ! まだ私、準備終わってないですわよっ!?」
「あと5秒で、ここにくるなのぉーっ!」
「はあっ!? あ、あと5秒!?」
「おっと、もう時間がないね」
「やれやれ……」
「お姉がくるなのぉーっ! お姉と一緒に、遊べるなのぉーっ!」
「ちょ、ちょっと『宇宙飛行士』っ! なんで貴女、そんなギリギリになるまで教えなかったのよっ!? それじゃあ貴女をお姉様の見張りに行かせた意味が、ないでしょーがっ!」
「お姉と一緒に『ケーキ』食べるなのぉーっ!」
「だ、だから、貴女……」
「ほら、『建築家』。もう準備はいいですから……早くこちらに……」
椅子から立ち上がる『研究者』。テーブルの準備を慌てて仕上げようとする『建築家』。そんな彼女の手を『分析家』が引いて、3人の妹たちが一列に並ぶ。
そしてその列に、周囲を走り回っていた『宇宙飛行士』も加わったとき……。
「お待たせしました。えと……少しアクシデントがあって、貴女たちにお願いされたものは、1個しか手に入らなかったのですが……」
ちょうど森の中から姿を現したエアルディートに対して、4人は満面の笑みを浮かべながら、声を揃えてこう言ったのだった。
「お帰りなさいお姉様! お誕生日、おめでとうございます!」




