14
企みを込めた私の提案に……
「あぁん? 引き分けぇ?」
「う、うん……出来たら……とかでいいんだけど……」
怪しむような目を向けているビビちゃん。そんな彼女を誤魔化すように、ついつい私は思ってもないようなことを言ってしまう。
「出来たら」なんて嘘だ。私は何としても、この策略を成功させなければいけない。今選べる唯一の手が「引き分け」なんだから、「引き分け」を勝ちにする以外に、私に残された道はない。
でも、ビビちゃんは……。
「さてはお前…………イカサマしようとしてやがるな?」
そんな私の考えを、見抜いているみたいだった。
「え……」
「このターンで俺が3000点以上賭けたら、引き分けどころか、お前は絶対に負ける。それはもう、変えようのねー決定事項だ。……にもかかわらずそんなことを言い出したっつーことは、何かコスズルい手を考えついたとしか考えられねーな」
ば、ばれてる……。瞬間、頭の中を絶望が支配した。
ビビちゃんの言葉通り、私は実際に、イカサマをしようとしていた。
だってしょうがないよ。今はもう3000点未満しか持っていない私にしてみれば、正攻法でいったら引き分けさえも無理なんだから。だから当然、私はイカサマを使おうとしていたんだ。
だけど、それもばれてしまった以上はもう無理みたいで……。
「……いいゼ」
「え!?」
私は思わず、大きな声を出してしまった。
「お前の言う通りにしてやるよ。このターン、引き分けになったらお前の勝ちでいいゼ」
思いもよらない彼女の返答。
自分で提案しておきながら、正直私は、ちょっと慌ててしまう。
「ほ、本当に? 本当にいいのっ!? だ、だってそんなことをしても、ビビちゃんには……」
「ふ……」
彼女は小さく笑って、「じゃあ、このままでいいのか?」と言う。イカサマの可能性には気付いたはずなのに、どういうわけだか私の提案を受けてくれたんだ。
「い、いやっ! ぜひっ! ぜひっ、そ、そのようにしましょう!」
無駄にかしこまった言い方になってしまって、バカみたいな私。でも、とにかく彼女の気が変わらないうちに、ゲームを先に進めてしまいたかった。
「さ、早速、お互いに魔力値を賭けよっか!? ね?」
「おう」
「じゃ、じゃあ、このターンは私が先に賭けちゃおっかなぁー!?」
「あ?」
調子に乗った私を、ビビちゃんが睨み付ける。
「…………」
私の思惑をうかがっている様子の彼女。その、私をじっと見つめている綺麗な緑色の瞳には、不思議な魔法でもかかっているみたいに、ゾクゾクと背筋が震える感じがする。もうしばらく見られていたら、我慢できずに策略の全てを話してしまいそうだ。でも、結局は彼女が、「好きにしろよ」と了解してくれたので、そうはならずにすんだ。
そして今までのターンとは順序を変えて、今回は私が先にアル君に「賭け」した。
「はい、やったよー! つ、次は、ビビちゃんの番だね!?」
私は言いながら、グラスの上に置いた手をどける。
「ああ……」
イカサマを見つけようと、ビビちゃんはそこまでの私の一挙手一投足を厳しく見張っていた。でも結局何も怪しいところは見つけられなかったらしい。無言で、アル君のグラスの上に手を置いた。
そしてその次の瞬間には、異変に気付いたようだった。
「……てめえ」
さっきよりもずっと厳しく、ギロリと、私を睨みつける彼女。
でも、もう遅い。私の「イカサマ」は、その時点ですでに完了していたから。
「あ、あれ? どうしたの? 魔力値の『賭け』をしないの、ビビちゃん? そ、それとも、もう終わったのかな? だ、だったら……」
「……やりやがったな?」
「な、なんか、問題でもあった?」
凄みをきかせてくるビビちゃんに、折れるわけにはいかない。もしも「イカサマ」に気付いた彼女が、私を非難してきても、私はこれを押し通さなければいけない。さっきも考えた通り、私はこのゲームに負けるわけにはいかないし……それに。
私は確かに「イカサマ」をしたけど、ゲームのルールは、破ってないんだから。
ビビちゃんは手を小さく震わせて、アル君のいるグラスから手を離さない。私は、そんな彼女に釘をさすように言う。
「言っとくけど、ビビちゃん。そのグラスを持ち上げてアル君の首輪を見たら、その瞬間に『賭け(ベット)』の時間は終わったってことだからね? その後から何を言ってももう遅いし、あとは、『ディーラー』のアル君が出す結果を受け入れるんだよ?」
「……くそっ」
そんなことは、私に言われなくても分かっているのだろう。彼女は吐き捨てるように言う。でも、その言葉は私に対する嫌悪感というより、この状況になってしまった自分への怒りのようでもあった。
そして彼女は、諦めたように、ゆっくりとグラスを持ち上げた。
キ? キキ……?
グラスから現れたアル君は、そのとき完全に油断していたようだった。これまでみたいにどちらかに駆け寄ったりせずに、人間みたいに分かりやすく、ぽかんとした顔をしていた。まるで、まだ自分の出番がやってくるなんて思ってなかったみたいに。
当然だ。
不透明のグラスの中にいたアル君にしてみたら……まだ、私たちのどちらかが「賭け(ベット)」の最中だと思ってたろうから。だってこのターン、私もビビちゃんも、アル君には1点も『承認』をしてなかったんだから。
「……くっ」
いつまでたっても、アル君はテーブルの上から動かない。どちらも賭け点は0点だったから、勝者が判定できないんだ。
つまり、引き分けだ。
「え、えと……これって、そういうことだよね? つまり、さっき約束した通り、このターンの勝者は私……で、いいんだよね?」
「……ああ」
その言葉を聞いて、やっと私は胸をなでおろすことが出来た。私の「イカサマ」は見事に成功して、それを、ビビちゃんも認めてくれたってことだから。
「このターンでは2人とも魔力値は1点も賭けてないから、マイナスはなし。そんで、勝った私はサイコロの目の6000点をもらえる、ってことだよね」
「そう、だな……」
「じゃあ私、『彼女』から魔力値を『返して』もらってくるね? だって今は、私とビビちゃんは当然として、アル君でさえ魔力値は0だから、このままゲーム続行なんかできないから……」
そう、つまり。
2人の魔力値を0にする。それが、私の「イカサマ」だった。
実は私はさっき、自分が賭けをする番のときに、アル君の首輪を通して、『彼女』に合図を送っていたんだ。その『合図』を確認した『彼女』は、私とビビちゃんの魔力値を全て『否認』した。その結果、私たちの魔力はどちらも0になってしまっていて、アル君に『承認』をしたくても、出来ない状態になっていたんだ。(私たちはお互いに指輪と首輪を外していたから、ビビちゃんが実際に『否認』されて魔力値を失ったのは、彼女がアル君のグラスに手を置いた瞬間だろうけど)
もちろん、私の「イカサマ」に協力してくれた『彼女』っていうのは……。
「行かなくていい……」
部屋を出て『彼女』の元に行こうとする私の背中を、ビビちゃんが呼び止めた。
「やられたゼ。お前には、完全に一本取られたゼ……」
「で、でも、こんなの、ただの『イカサマ』だよ? むしろ、ここからがお互い本気の勝負だし……」
「いいや。俺はもう、ゲームを降りるゼ。ゲームの勝敗は、俺の負けでいい」
「え?」
突然の敗北宣言。
「ま、マジ……?」私は思わず、絶句してしまう。「……だ、だって今の私の勝ちがあっても、まだ私はプラス6000で8899点。ビビちゃんの方は相変わらず1万点で、差はだいぶ縮まってるけど、まだビビちゃんの方が勝ってるんだよ? 流石に2度もこの手を使う訳にもいかないし。まだ、勝負は分からないでしょ? ど、どうして、そんなこと言うの?」
「ふん。このゲームの勘所がもうお前にバレちまった以上、そんな点差なんか速攻で追いつかれちまうに決まってるぜ。こんな小賢しい手を思いつくようなお前に、俺が勝てるわけねー。俺はお前と違って上品で純情で、心根が真っ直ぐだからな」
ちょっと……それだと、私が下品なひねくれ者みたいじゃんか……。
悔しいけどちょっと否定できないところもあったりして、複雑な心情になる。そんな私に対して、ビビちゃんは言った。
「お前、とっくに気付いてやがったんだな? 俺が、アウーシャから魔力を分けてもらってたのをよ」
「……うん」
そうだ。
遠い異国からやってきたビビちゃんが、5000点もの魔力値を持っていた理由。そして、さっきの私の「イカサマ」が成功した理由。それは、アウーシャちゃんだったんだ。
私はこの『亜世界』に来てから今まで、アウーシャちゃんが魔力値をどのくらい持ってるかってことを、本人からも誰からも聞かなかった。でもそれは、当然のこと。だってそもそも聞かなくても、最初から私は知っていたんだから。
それは、ピナちゃんが私に『承認』のことを教えてくれていたときのことだ。ピナちゃんは部屋にいたアウーシャちゃんを呼んで、自分の魔力値を、アウーシャちゃんに譲渡するところを見せてくれた。思い返してみると、あの時にアウーシャちゃんが付けていた指輪は水色だった。つまり、アウーシャちゃんの魔力値は0だったんだ。
ピナちゃんの話では、アウーシャちゃんは大き目の宗教の巫女をしていて、その中でも結構重要なポジションにいたらしい。同じように宗教を代表しているコルナちゃんが4000点の魔力値を持っていたのに、アウーシャちゃんの魔力値が0なんて、普通に考えたらどうしたっておかしい。でも、同じように5000点持っていることがおかしいビビちゃんがいることで、私は、その2つのおかしさを解決する1つの仮説をたてることが出来たんだ。
アウーシャちゃんが、魔力値を全部ビビちゃんに渡している……って。
自分の魔力値を全部他人に渡しちゃうなんて、相当なことだ。
その理由がどうしてなのか? 友情とか信頼からくるものか、それとも、脅迫とか何かの弱みを握られているのか……。詳しい事は、あえて私は聞かなかった。(宗教上の理由で嘘を言えないアウーシャちゃんに、自分の好奇心だけで余計な質問をしたくなかった)
でも、そのことに気付けたからこそ、私はアウーシャちゃんと、ある契約を結ぶことが出来たんだ。
「私、実はビビちゃんに会いにここに来る前に、アウーシャちゃんと会ってたんだけどさ……そこで、彼女と約束したんだ。『もしも私が合図を送ったら、私とビビちゃんの魔力を全部否認して』ってね」
「なるほどな……」
ビビちゃんと私が話をするというイベントが、そんなに簡単にすむはずがないことは分かっていた。初対面から「襲撃」してくるような彼女のことだ。私たちの魔力値の差なんかお構いなしで、いきなり勝負を挑んだりしてくるかもしれない。魔力と魔力をぶつかり合わせた、マジなバトル展開が繰り広げられちゃうかもしれない。別に、自分がいくら傷ついたとしても一向に構わなかったけど、彼女を傷つけたりするのは絶対にいやだ。必要もないのに、女の子とケンカなんかしたくなかった。
だから、そうなってしまったときの被害を最小限に抑えるために、アウーシャちゃんに頼めば、いつでも2人の魔力値を0に出来るような状況を作っておいたんだ。(まさか、彼女がこんなゲームを挑んでくるなんて思ってもみなかったけどね……)
ビビちゃんは、そんな私の企みをあっさりと理解してくれたみたいで、特に驚く様子もなく言う。
「あいつは……アウーシャはああ見えて、なかなか油断のねえ奴だ。例えばお前が、合図と同時に『俺の魔力を全部否認しろ』って言っても、多分あいつはウンとは言わなかっただろうな……。俺の魔力値が0になって、お前の魔力値が1万5千のままの状態なんて、あいつは多分許さなかったはずだゼ」
「そう、かもね」
「だからお前は、『一旦自分の魔力値を全部アウーシャに承認して、それをもう一度自分に承認し返して』もらっておいたんだ。そうすることで、俺とお前の魔力値の全ての所有権が、アウーシャの物になる。つまりあいつは、いつでも俺とお前の魔力値を同時に0にすることが出来るようになってたんだ。……アウーシャに送った合図っていうのも、多分、魔力値のやり取りだろ? 1点とか2点とかの魔力値をアウーシャに『承認』しておいて、アル君に賭けをすると見せかけて、それを『否認』したんだ。そんくらいちょっとの魔力値なら、赤い光はほとんど分かんねーくらいしか出ねーしな」
魔力値は、『承認』するときはその相手を見れるくらいの距離にいる必要があるけど、『否認』するときは、相手がどこにいても出来るらしい。
最初に説明してくれたときのピナちゃんは、『否認』は「好きなタイミング」で出来るって言った。もしも相手が魔力値を持ち逃げ出来たりしたら、それは「好きなタイミング」で取り返せることにはならない。つまり、『否認』をするときに相手の距離や状態は無関係ってことだ。
だから私はアウーシャちゃんに合図を送れたし、アウーシャちゃんも、私とビビちゃん(あと、私たちがアル君に『承認』した分)の魔力値を、一気に全部『否認』することが出来たんだ。
賭けの順番については、もしも、ビビちゃんが私に先に賭けさせてくれなかったとしても、アウーシャちゃんがアル君の魔力値を全部『否認』してくれたはずだから、アル君は「勝者に対する6000点の商品を渡せない」=「勝者はいなかった」っていうこじつけをするつもりだった。
でも、思いのほか全ての展開が上手いこと進んで、私の策略通りの結果になったわけだ。うーん……でも、むしろ上手くいきすぎ? まるで、ビビちゃんが私の策略に気付いていて、協力してくれたみたいな……。
ま、まあとにかく。
これが、私がやった「イカサマ」の全てだったんだ。
「く……くく……」
「?」
そこで突然、ビビちゃんが肩を揺らしだした。
私はよくわからなくて、キョトンとしてしまう。
するとやがて……「くくっ。やっぱお前は、小賢しいやつだ……。敵に回したくねーゼ」と言った。それで私は、彼女が笑っていたんだということが分かった。
お?
「でも、味方にするのも、それはそれでしんどそーだけどな」
おお?
「まあ、どちらにしろ退屈はしなそーだゼ……」
お、おおおー?
な、なんかビビちゃんが、ちょっと頬を赤らめている? 今までの、ツンツンした感じからは考えられないような、可愛らしい感じになってる……?
こ、これは……何かしらのフラグ的な物が……立った的な感じになってないかい? こ、ここから、ビビちゃん攻略のルート的なストーリーが……。
「とりあえず、座れよ。茶くらいなら、出してやるからよ」
席を立ったままだった私にそう言って、キッチンの方に行こうとするビビちゃん。
「あ、ありがとう!」
部屋に入った時のことがあるから、余計にうれしさが強調される。なんだか一気に彼女と距離を縮められた気がして、今の私は、遠慮せずにそれを受けることにした。
しばらくして、彼女はキッチンから今度はちゃんとティーポットと2つのグラスを持ってくれた。そして、
「あ、あとよ……ゲームに負けたし、約束は果たさなきゃだよな……」
そんな風にまた更に頬を赤くして、モジモジとし始めた。
か、かわええなあ……。
だんだん、彼女に対する恐怖はなくなっていって、あとに好意だけが残っていくことに気付いた。
正直、ゲームに勝った約束なんて、もうどうでもいいんだよね。だってアウーシャちゃんから魔力値をもらっているってことは、もう認めてもらったし。それ以上、彼女のプライベートなことに質問とかするのは、流石に失礼な気がするし……。
あ、でもでも。せっかくだからコイバナとか、しちゃう? 一国の王女様とお茶を飲みながら、ガールズトークとか……きゃー、ヤバイ何それっ!? 楽しそーっ!
そんなことを、考えちゃってたんだけど……。
そこで。
「ほ、ほらよ……もう、お前の好きにしろ!」
え?
赤らめるどころじゃなく、もはや顔を真っ赤にしたビビちゃんが、そんなヤケクソな感じで私に向かってドレスのスカートをめくり上げようとしていた。プルプルと、手と体を震わせているビビちゃん。丈の長い緑色のドレスのすそから、健康的な少女の細い生脚が現れ始めてて……。
「び、ビビちゃん、何してるの!?」
「ああんっ!?」
真っ赤な顔でキレながらも、ゆっくりとスカートを上げる手は止めなくて……。
「や、約束だっつっただろっ!? お前がゲームに勝ったら、お前に俺の生脚を舐めさせてやるって……」
はあ……?
「だから、好きにしろって言ってんだよっ! は、早くしろよっ! 誰かがきたら、俺がお前と同じ変態だと思われるだろっ!」
いやいやいや……。
「か、勘違いすんなよなっ! これは、生脚フェチの変態のお前に負けたから、仕方なくだかんなっ! こんなこと、アカネにだって、やらせたりしねーんだからなっ!」
どんなツンデレだよ……。
っていうか、私に対するそのヤバい勘違い、まだ続いてたのかよ……。
「ちょ、ちょっとビビちゃん……な、何言ってるの? ゲームに勝ったら脚を舐めさせて、とか……そんな約束、してなかったよね? あと私、前にも言ったと思うけど、生脚フェチじゃなくってね……」
「い、いいからっ! さっさと舐めろっていってんだろっ! いつまでもこんなことさせてんじゃねーよっ!」
「いや、舐めませんってば……」
「てっめえぇーっ! 脚を舐める前に、まずは、恥ずかしがってる俺を存分に楽しもうって魂胆かよっ! ふ、ふざけてんじゃねーぞっ! どこまで変態だったら気が済むんだよっ!」
あれ……? あれれ……?
さっきは、ちょっと友達同士になれるかと思ってたのに……。
縮まったと思ったビビちゃんとの距離が、ものすごい勢いで広がっている気がするぞ……?
私がどれだけ説明しても、完全に私のこと、生脚フェチだと思い込んじゃってるし……。もう、その勘違いは正せないの? 私、このまま彼女の中では変態だと思われてなくちゃいけないの?
それだったらもういっそ、ホントに彼女の脚を舐めてやろうかな……って、なんでだよ……。
余りのショックと無力感で、だんだん全てがめんどくさくなってきちゃった私。ただただ、立ち尽くして乾いた笑いを浮かべることしか、出来なくなっていて……。
しかもその上……。
タイミングが悪いことに、そこに更にめんどくさいヤツまでやってきて……。
「ひゃうぅぅぅ……な、七嶋アリサ様ぁ? さ、さっきのは……だ、大丈夫でしたかぁ? わ、私、ちゃんとご命令通りに、出来てましたですかぁ…………って……び、び、び、び、びぎゃぁぁぁぁっ! お、お2人とも、な、な、な、何してるんですくわぁぁぁぁっ!」
「あ、アウーシャっ!? こっち見んじゃねーっ! 今俺は、こいつに言われて、仕方なく脚を舐めさせてやってるところで……」
「ちょ、ちょっとビビちゃんっ!? 言い方が、ヤバすぎる感じなってるからっ!」
「は、はあぁぁぁうううぅぅ……。女の子のスカートを無理矢理めくらせて、脚を舐めるとか……な、な、七嶋アリサ様はさすがですぅぅぅ! やっぱり私が見込んだお方ですぅぅぅ! ど、どうかぁ……私にも同じ仕打ちをぉぉ……罵りながら、お好きなところを舐めまわしてくださいぃぃ……」
「違うからっ! 私にそんな趣味なんかないってばっ!」
「アウーシャ、てめーはどっか行ってろよっ! これは、俺とこいつの問題だゼっ! 俺が先に、こいつに舐められなくちゃいけなくって……」
「はひぃぃ……待ってますぅぅぅ! 七嶋アリサ様が舐めてくれるまで、ずっとずっと、待ってますからぁぁーっ!」
ああ……。
どうして、こんなことに……。
人と人とが気持ちを通じ合わせることがどれだけ難しいのかということを、私はそのとき、嫌というほど思い知らされたのだった。




