06
部屋を出た後。
しばらくして、突然いなくなった私のことを探してくれていたピナちゃんと合流出来た。その頃には、さっきあった出来事のショックもちょっとは落ち着いていて、私は元通りの自分を演じることが出来るようになっていた。
「災難でしたね……。彼女の名前は、ビアンキ・ビアンカです。でも彼女自身はあまりその名前を好きでないらしく、自分のことは『ビビ』と呼ぶようにと言っています」
「あ、うん。仲間っぽい人たちも、彼女のことをそう呼んでた」
私から一部始終を聞いたピナちゃんは、苦笑いしながらさっきの彼女のことを教えてくれた。ちなみに、実はそのビアンキ・ビアンカさんは私の2コ下の15歳らしいので、親愛を込めて、私は彼女のことを「ビビちゃん」と呼ぶことにした。……その年下に、さっきシメられそうになったわけなんだけどね(もしも本人が怒ったら、私もビビ様って呼ぼう)。
「でもさ……ほんとにびっくりしちゃったよ。だってあの娘いきなり私のこと拉致して、メンチ切ったりしてさ! あんなかわいいドレス来てるくせに、中身完全にヤンキーじゃん!」
「ふふ。私たちはもう慣れましたけど……やっぱり最初は、驚きますよね?」
「私、絶対殺されるーって思ったよ!? 一体、何であんな娘がアカネの幹部に……」
途中まで言って、私は口を閉じる。
だって、いくら自分がさっき彼女に怖い目に合わされたからって、こんなあからさまな陰口を言うのはよくないと思ったから。……もしもうっかり彼女の耳に入っちゃったりしたら、今度こそ自分の命が危ないし。
そんな私の思惑を知ってか知らずか、ピナちゃんはちょっと微笑んでから、とんでもないことを言った。
「ちなみに彼女は……ここから海を渡った遥か西に位置する、ビアンカ王国という大国の第一王女です。ビアンキ・ビアンカとは、ビアンカ王国の言葉で『高貴の中の高貴』を意味する、もっとも気高い称号だそうです」
「え……?」
「まあ要するに、彼女は『プリンセス』というわけですね。実際、彼女の胸にはビアンカ王家の証である鷹の紋章が、消えることのない焼き印として刻まれているそうです」
「ええええええぇぇぇぇーっ!」
私は、さっきの下っ端の2人が逃げて行ったときなんか比較にならないくらいに、あんぐりと口を開けて驚いてしまった。
い、いやいやいやいやっ!?
あの、どっからどう見てもヤンキー少女だった彼女が、プリンセス!? 王女!? ないないない! あの娘がプリンセスだったら、私だって高貴なお嬢様でしょっ!?
「やっぱり、信じられませんか?」
当然そうですよね、という感じでピナちゃんは私に言う。
いや、そりゃそうでしょうよっ!? 信じられるわけないよっ! あんなの、ただのヤカラでしょうがっ!?
さっきの気づかいの心はどこかに行ってしまって、言いたい放題の私。でも、正直それはしょうがないと思う。だってあのビビちゃんが……一人称が「俺」の女の子が……プリンセスなわけないじゃんっ!
「まあこれ全部、彼女の自称なんですけどね」
「……ほ?」
そこでまた、わけわかんない事を言うし……。プリンセスが、自称?
「あの娘が、本当は何者なのか……。それは実は、私たちもとても気になっていることなのです」
「え? じゃ、じゃあ……あの娘って実は、王女様じゃないの? 嘘をついている、ってこと?」
「はい……。それが、先ほど私が七嶋さんに言いそびれてしまった事なのですが……」
と、そこまで説明をつづけたところで、ピナちゃんの説明はまた遮られてしまった。なぜなら、お屋敷の廊下を歩く私たちの間に、別の娘が割り込んできたから。
「ひ、ひゃううぅぅぅ……あ、あ、あ、あのぉ……な、七嶋アリサ様ぁ……。失礼しますですぅぅぅ」
「え?」
ピナちゃんと話に夢中になっていた私は、話しかけられるまで彼女の存在に気付かなかった。彼女……つまり、さっきピナちゃんがアカネの幹部だと言っていた3人のうちの1人。指輪のレクチャーのときにピナちゃんに協力してくれた、胸元を強調した服を着たエロメイドが、目の前に立っていたんだ。
「はわわわわぁぁぁ……あ、あのぉ……」
何かに怯えるように、プルプルと体を震わせている彼女。それと同時に、メイド服の胸元からはみ出そうなたわわな「ブツ」も、プルプル揺れている。てっめえ、自慢かよ……。
無意識の内に、さっきのビビちゃんばりに彼女をにらみつけてしまっていた私に、ピナちゃんが紹介してくれた。
「ああ、ちょうどよかった。七嶋さん、改めて紹介しますね? こちらの彼女はアウーシャ・ディー・ローサ。アカネ様の幹部の1人です」
「はひぃぃぃ……あうぅぅぅぅーちゃ……あうウえちャ……あ、アウーシャって、呼んで下さいですぅぅぅ……」
初めて見たときから、常に生まれてたての小鹿のように震えていた彼女だったけど……まさか自分の名前まで噛むとは……。アウーシャちゃんは、女の私でも庇護欲くすぐられちゃう感じの、放っておけないタイプなのかもしれない。私の中で、彼女の好感度がちょっとだけ上がった。
「そ、そ、そ、そ、それが気に入らなければぁぁ……メス豚とか呼んでも結構ですぅぅぅ……」
……いや、ただの変態かな? 一瞬芽生えた彼女を応援したいという気持ちは、あっという間に吹き飛んだ。
「そ、それか……クソ女とか、性奴隷とか呼んで下さってもぉぉ……。む、むしろ、そう呼んでもらえた方がぁぁ……」
「あなた、もう下がっていいですよ」
彼女の扱いに慣れているらしいピナちゃんは、ぞんざいな感じにそう言って、アウーシャちゃんを置いて先に行こうとした。でも何故か彼女は、私たちの前から動かないでもじもじと腰をくねらせている。よく見ると、両手を後ろに回して何かを持っているようだった。
「あ、あうぅぅ……あ、のぉぉ……」
「ですから、もう用は済んだと言っているのです。そこをどきなさい、アウーシャ」
彼女の後ろ手のことに気付いていないらしく、ピナちゃんの感じは変わらない。見ていられなくて、私はアウーシャちゃんに助け船を出そうとした。
「ちょ、ちょっと待って? 彼女、何か私たちに用があるんじゃあ……」
でも、彼女は……。
「ふひぁぁぁ……も、もっと言って下さいですぅぅぅ……」なんて言って、口からよだれを垂らしていた。
……よし、もうこの人無視しよ。
「もっと……もっと罵って下さいですぅぅぅ……。邪険にして下さいですぅぅぅ……」
私の好意を見事に台無しにしてくれたメス豚ちゃんのお望み通り、私も彼女を置いて、ピナちゃんと一緒にさっさと先に進もうとする。そこでようやく、アウーシャちゃんが後ろに回していた手を出して、隠していた物を見せてくれた。
「あ、あの、あのぉぉ……えとぉ……な、七嶋アリサ様を、歓迎したくてぇぇ……あ、あたしぃ……クッキーを作ってみたんですぅぅぅ……えへ……へへぇぇぇ……」
彼女が出したのは丸くて白い普通のお皿。そして、その上に乗った黒い塊だった。複雑に入り組んだ形は、まるで固まった溶岩みたいで……とても美味しそうには見えない。
「こ、これが、クッキー……?」
「は、はいぃぃぃぃ……。い、一生懸命、愛を込めて作りましたぁ……うふゅっ」私に流し目を送るように言うアウーシャちゃん。「も、もちろん……よかったらなんですがぁぁ……」
「う、うーん……」
私の知っているクッキーとは明らかに違っているその物体に、私はちょっと怖気づいてしまう。まさか、食べられない物は入ってないだろうけど……。
「アウーシャ、変な物は入れてませんでしょうね?」
私の気持ちを代弁するようなピナちゃんの言葉を、アウーシャちゃんが強く否定する。
「だ、だ、大丈夫ですぅー! 今回は、私の体液は入ってませんんんーっ!」
こ、今回は、って……。前回までは、どんな体液が入ってたんだろう? ちょっと……どころじゃなく、私は完全に恐怖を感じ始めていた。
でも。
「え、えへ……えへへ……」
期待を込めたまなざしで、私が食べるのを待ってくれているアウーシャちゃんを無視するのは、さすがにちょっと忍びない。彼女はさっき、「私を歓迎したい」ってことも言ってくれていたし……。
結局私は、持てる限りの全ての勇気を総動員して、なるべく嫌々な感じにならないように取り繕って、目の前の塊を1つ取った。
「え、うっそー? 私を歓迎してくれてるの? うわー、うれしいなー! じゃあ、1個いただくねー?」
そして、それを口の中に放りこんだ。
一口噛んだ瞬間に、カリッという小気味いい食感と、ドロォっていう気持ちの悪い舌触りが広がっていく。味は、あんまりしない。匂いも、特にはない。
ただ、全身の力が抜けていって……全ての悩みから解放されたようなポカポカした気分になって、リラックス感があふれてくるだけで……あ、あれ……?
目の前の景色が、あいまいになっていく。廊下や壁や、ピナちゃんやアウーシャちゃんの輪郭が溶けていく。それは次第に、サイケデリックな色が混ざり合った前衛芸術のようになって……。『亜世界』間を移動するときに私は何度も似たような感覚を味わってきていたからか、それが、自分が気絶しそうになっているせいだと分かった。
夢のような心地の中で、2人の女の娘の声が、うっすらと聞こえてくる。
「あ、あなた!? やっぱり何か、変な物を入れたんじゃないんですかっ!?」
「ひゃううううぅぅぅ!? そ、そ、そ、そんなはずないですぅぅぅー! 前にピナさんにすっごい怒られたからぁ、あ、あたし、今回はすっごく気を付けて作ったのでぇぇぇ」
「嘘を言わないで下さいっ! だったらどうして、七嶋さんがこんなことになっているのですかっ!?」
「ほ、ホントですぅぅぅ! 変な物なんて、入ってるわけがないんですぅぅーっ! だ、だってだって、今回使った材料は、今もここに、全部持ってて………あ……」
「ど、どうしたのですかっ!?」
「す、す、すいませぇぇぇんっ! 材料、そもそも入れてませんでしたぁぁぁぁっ! 砂糖と小麦粉と卵を、入れ忘れちゃいましたぁぁぁぁ……」
え? じゃあさっき私が食べた物って、何……?
私が頭の中でかろうじてツッコミを入れることが出来たのは、それが最後だった。
それ以上は、もう誰の声も聞こえず。何かを考えることもままならず。まるで雲になってふわふわと空中を浮遊しているような曖昧な気分の中、
「まったく……これだから巨乳のやつは……」
なんてことを考えていた。
※
「う、うう……」
次に気がついたとき、私はどこかの部屋のベッドの上だった。
ベッドの周囲は、薄手の白いカーテンで囲われている。さっきアカネの部屋で豪華な内装を見ていたからか、最初はそれが、お嬢様とかの寝室にある天蓋かと思った。でもよく見てみると、そのカーテンは天蓋にしてはちょっとみすぼらしい作りだったし、ところどころ汚れもついている。
どうやらそれは、単純に部屋の中を仕切っているパーティション的な物のようだ。その証拠に、カーテンを少しめくってみると隣にもう1つ別のベッドが見えた。この部屋は結構大きいみたいだから、同じようなベッドはまだ他にもありそうだ。
同じ部屋の中に何個もベッドがあるってことは、つまりここは学校の保健室、あるいは、病院の病室のような役割の部屋なのかもしれない。
「ああ、気が付きましたか?」
カーテンを開けて、ピナちゃんが現れた。気を失ってしまった私を、彼女がここまで運んできてくれたのだろうか? 私は、ベッドから体を起こす。
「あ、あの……」
「大丈夫ですか?」
「え?」
「無理をせずに、まだ横になっていていいですよ?」
「あ……えと、もう大丈夫そう。さっきみたいに頭もくらくらしないし……うん、全然平気」
「すいません。私がついていながら、こんなことになってしまって……」
ピナちゃんは、申し訳なさそうに顔をうつむかせている。
「あの娘は……アウーシャは、いつもこうなのです。こうなることは予想が出来たはずなのに……七島さんを、危険な目にあわせてしまいました」
「ああー。じゃあやっぱり、アウーシャちゃんのクッキーのせいだったんだね? 私が気を失っちゃったのは……」
さっきのやり過ぎなくらいのどじっ娘っぷりを思い出して、私は大げさに笑ってしまう。
「も、もーう。うっかり材料入れ忘れただけで、食べたら気絶するようなクッキー作っちゃうとか……勘弁して欲しいよーっ! せめて、人に勧めるなら自分で味見して大丈夫だって分かってからにしてほしいよねっ!? って、それだとあの娘、自分のクッキーで体壊しちゃうかー。あははー……」
でも。
笑っているのは私だけで、ピナちゃんの方はあんまりそういう雰囲気じゃない。なんか、「笑い事じゃないよ」って感じの深刻な顔で、私のことを見つめていた。
「七嶋さん、笑い事じゃないですよ……」
実際、言われちゃったし……。
「もしかしたらあなたは、あのクッキーで命を落としていたかもしれないんです。そのことを、ちゃんと理解してください」
「え、えー?」
それを、彼女流のジョークかと思って、私はまた笑って返そうとした。
「な、なにそれー? いくらなんでも、クッキーじゃ死なないってばー! まさか彼女だって、わざと変なクッキー作るはずもないし……」
でも、ピナちゃんが静かに首を振って、「わざと……作るかもしれません」と言ったところで、私はもう笑顔を続けることは出来なくなった。
「え……?」
「やはり、七嶋さんには伝えておかなければいけませんね。あの幹部たちについて……」
彼女はそれから、誰かいないか警戒するように、動きを止めて周囲の気配を探る。そして部屋にいるのが私たちだけなことが分かると、今までよりも声のトーンを落として、その続きを話し始めた。
「先ほど、七嶋さんにこの『亜世界』のシステムについての話をしたとき、アカネ様の部屋にいた3人。あのアカネ様の3幹部は、元々はこのお屋敷とは無関係な集団に属していました。彼女たちは今から2週間前に、前『管理者』様の呼び寄せられてこのお屋敷にやってきたのです」
「2週間前……」
それは、アカネがこの『亜世界』にやって来た時だ。
意外と3幹部がここまで来てから日が浅いということに、私は少し驚いた。
「この『亜世界』では、『管理者』は『遺言』によって決定されます。そのルールに基づき、前『管理者』様は1年ほど前にご自分の死期を悟ったときに、次の『管理者』様を選ぶ方法を決定されました。つまり先ほどアカネ様から説明してもらった通り、『別の世界から召喚する』ということを、文書として残されたのです」
……ということは、『遺言』と言っても必ずしも言葉で伝えなければいけない物でもなく、私たちの世界の遺言書みたく、文書に残す形でも有効らしい。
「……しかし、前『管理者』様の『遺言』は実はそれだけではなかった。亡くなってまもなくしてから、私たちは、彼女がもう1つの『遺言』を残していたことを知りました」
「え? もう1つ?」
「実は前『管理者』様は、自分の『遺言』によってこの『亜世界』に召喚される者……つまりアカネ様のために、協力者を選んでいたのです。この『亜世界』のことを何も知らない次の『管理者』を、手助けして欲しい。幹部となって彼女を支えて欲しい……という内容の手紙を、お屋敷の人間が知らないうちに送っていたらしいのです」
「あ、その手紙の宛先があの3人なんだね?」
「ええ」
なるほど。その手紙を受け取ったから、あの3人は今、アカネの幹部をやっているわけだ。……正直、もうちょいマシな人選はなかったの、って思わずにはいられない。
「彼女たちはそれまで、それぞれ別の団体に属していました。しかも3人とも、その団体で相当の実力者……」
「え、実力者? まじ?」
あの、お姫様コスプレしたヤンキーと、メイドコスプレしたエロ娘と、ハロウィンコスプレした変な人が、何かの団体の実力者? それって、どんな変態集団なの?
「……実力者を、自称しているのです。先ほども言った通り」
念を押すようにピナちゃんはそう言った後、彼女たちそれぞれが所属しているという団体についても教えてくれた。
「ビビが、ビアンカ王国の第一王女を自称しているのは、先ほどの通りです。ビアンカ王国と私たちは、これまで、お互いに存在を知っているだけで、ほとんど交流はありませんでした。そこで、2週間前に彼女が現れたときに、私たちはビアンカ王国に密偵を派遣したのですが……。その報告によると、まさに今、王国ではビアンキ・ビアンカ王女が神隠しにあったと言って大混乱になっている状態なのだそうです。ビビの話を信用するならば……王国の厳しい戒律に嫌気がさした王女が、前『管理者』様からの手紙を受け取ったことをきっかけに勝手に亡命した。それを知らない王国の者たちは、彼女が神隠しにあったと思っている……となるのでしょうが、実際のところは分かりません。もしかしたら、彼女こそが本物のビアンキ・ビアンカ王女を誘拐し、それに成り替わってここにやってきているのかもしれない。私たちは本物の王女の姿を知りませんし、これからそれを知ることも出来ないでしょう。もしも今、かの国とろくな信頼関係を築けていない私たちが、王国に対してビビの話をしたり、ビビを送り返しでもしようものなら……私たちが誘拐犯だということにされて、王国はここに攻め込んでくるかもしれませんからね」
た、確かに、あのヤンキーが王女様というのはちょっと無理がある……。だって王女様っていうのは普通、もっとおしとやかで落ち着いてるものだよね? いや……でも逆にああいうアナーキーな感じの方が、1周回ってそれっぽいってことも?
「それからアウーシャ……。彼女は、この地域で古くから信じられているトリヴァルア教という宗教の、神官をしていた娘です。トリヴァルアは宗派が複雑に枝分かれしていて非常に信徒が多い宗教ですが、彼女はその中でも原理主義的意味で高位の存在で、一部には、彼女をあがめる者たちもいるくらいです。ちなみにあの特徴的な服装には、宗教的にとても重要な意味があるのだそうです」
ま、まじかよ……。あんなエロい恰好の神官がいる宗教ってどんなだよ……煩悩湧きまくりじゃん。
「そして、3人目のあの黒い布の中身ですが……」
ピナちゃんはそこで、少し顔を曇らせる。
「彼女の名は、コルナ。最近この地方で暗躍している、黒狼教団という新興宗教の教祖の娘です」
うわ……。
「正直その教団については、私はあまりいい噂を聞いたことがありません。自分たちの教えに反する者を虐殺したり、自分たちの内部の人間さえも、教祖に逆らえばすぐに粛清されるとか……。信徒の数自体はそれほど多くはないのですが、その危険性から、私たちの間では邪教として扱われています」
ハロウィンでもないのにあんな格好してるから、ちょっと怖いなとは思ってたけど……想像以上にヤバい人だったよ。新興宗教とか、自分たちの教えに逆らう人を粛清とか。それって、黒い布じゃなくって、白い三角の布被ってる人がやるやつじゃん……。
アカネの幹部が、思いのほかにいろんな経歴の人たちで構成されているということを聞かされて、私はちょっと怖くなってきた。
「前『管理者』様は、彼女たちのように立場が異なるものたちの意見を聞くことで、アカネ様が公平に『管理者』業務を行えるようにしたかったのでしょう。彼女たちの方も、『管理者』に取り入ることで、自分たちの所属する集団を更に大きくすることが出来る。利害が一致していて、お互いの監視が正常に機能しているならば、彼女たちはアカネ様にとって大きな助けとなったでしょう。私も、彼女たちを信頼することが出来たと思います。…………しかし、今はそうではない」
「え? そ、そうなの?」
「はい……なぜならば」
ピナちゃんは、重い口調で続けた。
「ある事情により、私たちは知ってしまったのです。あの3人の中に確実に1人、嘘をついている者がいるということを」




