01'''
その日の朝、私はエア様に会わないように少し迂回をして『亜世界樹』の根元までやって来ていた。
「でみ子ちゃんの部屋へ」
エレベーターに行き先を告げると、幹にゆっくりと「うろ」が出来上がっていく。
改めて考えてみると。それが『研究者』じゃなく、「でみ子ちゃん」という私が勝手に付けたあだ名でもちゃんと動作するっていうのは、ちょっとすごいことのような気がする。だって、名前がないっていうこの『亜世界』じゃあ、「でみ子ちゃん」っていうあだ名だって、私が来るまでは存在しなかったはずだし。そもそも『今日』の私は、そのでみ子ちゃん本人にまだ会ってさえいないんだから。
きっと、このエレベーターには木の精霊だけじゃなく心の精霊も使われていて、アナの職能みたく、私が行きたい場所を心を読んで察してくれているんだろうとは思うけど……。ちょっと、「どこでも××」的な秘密道具感あるな。
そんなことをとりとめもなく考えながらそのエレベーターに乗り込み、私は『3周目』にでみ子ちゃんに言われた通り、彼女の部屋へと向かっていた。
今は、『4周目』の朝。結局前回も、私はエア様を守ることは出来なかった。
あの夜アナと別れたあと、朝になるまで私は空を見上げて、何かが起こるのを待っていた。でも、いつまで待っても宇宙飛行士の宇宙船どころか、隕石や流れ星1つ降ってきたりすることはなく…………それにもかかわらず、朝になってエア様の部屋に行ってみるとやっぱり彼女は死んでいた。左胸に太い木の棒を突き立てられて、完全に息絶えていたんだ。
それじゃあ、宇宙飛行士犯人説も間違っていたってことだろうか? まだ見たことのない第3者が犯人なんて、あり得ないってことなんだろうか?
そうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。
例えば、もしも宇宙飛行士が『今日』、すなわち私がこの『亜世界』にやって来る日よりも前に、宇宙から戻ってきているなんて可能性はないだろうか? つまり彼女は既に今、この『亜世界』のどこかに潜んでいるっていう可能性は……。
それなら、いくら『今日』の夜に私が空を見張っていても、宇宙飛行士の姿が見つかるわけがない。むしろそうやって私が上にばかり注意を向けている間に、彼女はこそこそと地上を隠れて、誰にも気付かれないようにエア様を殺した……。
いや。
それでも結局、宇宙飛行士が過去のいつかの時点で宇宙から帰ってきた時に、アナに見つかっていなければおかしいような気がする。だって警備員的な役割のアナは、毎晩風の精霊で『亜世界』中をスキャンして、この『亜世界』に何か異変がないかを調べているんだ。だから、「今までいなかった人がいつの間にか宇宙から帰ってきている」とか、「誰にも気付かれないように潜む」なんてことは、そう簡単には出来ないはずなんだから。
じゃあやっぱり、犯人は宇宙飛行士じゃない? それとも私は、何かを見落としているんだろうか? 宇宙飛行士が、何か私の裏をかくようなすごいトリックを仕組んでいるとかで……。
私が今、でみ子ちゃんのところへ向かっているのには、『3周目』に彼女に「来い」って言われたからの他に、そういう色々なことについて彼女と相談したかったっていう理由もあった。
エレベーターの扉が開く。
すると、いつも通りの家具のない簡素な室内に、椅子に腰かけたでみ子ちゃんの姿が見えた。
「……ほう」
私を見ても、彼女は軽く右の眉を上げただけ。私とは初対面のはずなのに特に取り乱すこともなく、それどころか、その一瞬である程度の状況は理解出来てしまったようにさえ見える。さすがだ。
更に彼女の理解を助けるために、私は自己紹介をした。
「あ、あの! 私、今日この『亜世界』に転送されてきた、『異世界人』です! いきなりここに来ちゃって驚かせちゃったかもだけど、それは何も、でみ子ちゃ……研究者ちゃんに敵対する気があるわけじゃないんだ。実はエア様……この『亜世界』の『管理者』様の身に、今大変なことが起きてるんだよっ!」
さすがに『4周目』ともなると、自己紹介も少しは慣れてきたと思う。
信じられないくらいに頭がいいでみ子ちゃんに一体何を説明する必要があって、何を説明する必要がないのかを、私はなんとなく分かってきていたんだ。
「私は、今のこの状況が『亜世界樹』の計算しているパターンの1つだってことを理解していて、しかも、それまでに経験したパターンの記憶を、次のパターンまで持ち越すことが出来るの!」
突然部屋に入ってきて、訳の分からないことをわめき散らす女。もしも私がそんなやつに出会ったら、怖すぎてその場から逃げ出しちゃいそうだけど……。でみ子ちゃんは何度も小さく頷きながら、私の話す言葉を興味深そうに聞きいっていた。
「今はその『4周目』のループに入ってるんだけど……実は、これまでの3回は全部、最後にエア様が誰かに殺されちゃってるんだ。だから私とでみ子ちゃんで協力して、エア様を殺す犯人を探そうって話になってて…………!?」
でも、そこで少し驚くことが起きた。
なんと、それまでどんなときでも椅子に腰かけたままだったでみ子ちゃんが、突然立ち上がったんだ。
「そ、そ、それで……『3周目』のときにでみ子ちゃんが、『エア様に会うより前に自分に会いにこい』って言ったから、それで私……って!? え? え?」
しかも立っただけじゃなく、少しずつこっちに向かって近づいてくる!?
「ちょ、な、な、何っ!?」
「……」
サイズが合っていない彼女の白衣は、歩く度に部屋の床とこすれて音を出す。手が完全に隠れてしまっている両腕は、萌え袖がぷらぷらと左右に揺れている。
無言で近づいてくるその様子は、いつものクールな感じと合わさって何だかちょっと怖いくらいだ。私は彼女から距離をとるように、徐々に後ずさってしまう。
「な、なんでこっちに来るの!? なんで何も言わないの!? ちょ、ちょっと、ねえ!? ねえってばっ!」
ついに私は壁に追いやられ、でみ子ちゃんもそんな私から10センチもないくらいまで体を寄せてきていた。さっき私が部屋に入ってきたときのエレベーターの口は、もう完全に閉じきってしまっている。後ろには逃げ場はない。彼女の甘い吐息が、私の顔にかかる。興奮して荒くなった私の息も、きっと彼女にかかっている。
え? なにこれなにこれ? どういうこと? どういうこと? どういうこと? どういうこと?
だ、だってこんなの、少女漫画とかアニメとかでしか見たことないようなシチュエーションだし……そんでそのシチュエーションって言ったら、たいていイケメンが、ヒロインの女の子に迫ってるようなシーンで……。
ドン!
でみ子ちゃんの右手が、白衣の袖ごと私の顔のすぐ左側の壁に突き出された。
こ、これってまさか……。腕に邪魔されて、左側からの退路を絶たれた私。しかも、でみ子ちゃんの顔がだんだんと私の顔に近づいてきてて……!?
「で、でみ子ちゃん!? も、もしかして……だから、私に早く来いって言ったってこと!? でみ子ちゃんって、もしかして私に、そういう……」
彼女の顔は本当にすぐそこまできている。彼女のよく整った顔が……真っ白くて瑞々しくて、触ったら気持ち良さそうなほっぺたが……ほんのりピンク色のぷにぷにの唇が、私に近づいてくる。
もう、あと数センチで顔と顔がくっついちゃいそうな……。私の唇とでみ子ちゃんの唇が、接触しちゃいそうな……。
「い、いや、その……ちょっと……。困るってば……そ、そういうの、私、ほんとに……」
抵抗しようとするけど、全身から力が抜けてしまって、それが出来ない。いつの間にか、恐怖心は胸の奥の方から沸き上がってくる別の感情にかき消されて、なくなってしまっている。
ど、どうしよう……。
私、「そういうの」じゃないのに……。「そういうの」なんて、分からないはずなのに……。理性では拒絶してるはずなのに……でも、理性じゃないところでは……。
ゴクリ。自分の唾を飲む音が、驚くほど大きく聞こえる。
ゆっくりと、でみ子ちゃんの唇が開いていく。口の中の唾液が糸を引いて、艶々と輝く。
「もう、我慢できないのです……」
「そ、そんなに私のことを……? で、でも私…………そういう、女の子同士なのは……ちょっと……あの……」
そして彼女は、挑発するような瞳を私に向けながら、こう続けた。
「トイレへ……」
……?
……はい?
彼女の声に反応して、私の背後の木の壁がゆっくりと「うろ」の口を開けていく。
あ、あれ……?
「ちょっと、失礼しますよ」
でみ子ちゃんはそう言うと、壁に寄りかかっていた私をどかして、その「うろ」の中に入っていく。すると、その「うろ」の口がゆっくりと閉じていって、やがて彼女の姿は見えなくなって……。
でみ子ちゃんの部屋に、私は1人残されてしまった。
「えー……っとー……」
すぐには何が起こったのか理解できなくって、間抜けな顔でその彼女が消えた壁を見ている私。
さ、さっきのって、『亜世界樹エレベーター』だよね? って……ってことは、でみ子ちゃんが言ったのはエレベーターの行き先ってことで……。つまり、でみ子ちゃんはエレベーターで「トイレ」に行こうとしてたってことで……。
あー、はいはいはいはい。そういえば彼女、行き先を言う前に壁をドーンって触ってたもんねー? うんうん。あのエレベーターってー、壁とか床とかに触って目的地を言わないと動かせないからー………………って。
で、で、で、で、でみ子、てっめぇーっ!!
紛らわしいことすんじゃねぇーっ! い、い、いきなり壁ドンみたいなことするもんだから、なんか勘違いして……変な気分になっちゃっただろぉーがぁーっ! さっきのドキドキ、返せやぁーっ!
※
はあ、はあ、はあ……。
恥ずかしさと、胸の奥に沸き上がっていたよく分かんない気持ちのやり場に困って、ひとしきり暴れまわった私。八つ当たりで、さっきのでみ子ちゃんとは別の意味での「壁ドン」をしまくったせいで、手は真っ赤になってしまっていた。
ってゆうか……。
よく考えたら、私が怒る必要とかないしね……。ただ、でみ子ちゃんがいつもみたく私をからかってきた、ってだけなんだから、普通にさらっとスルーしとけばよかったんだよ。何で、こんなに熱くなっちゃってんだろ……。これじゃまるで、私が何かを期待してたみたいな……。
いやいやいやっ! なに変な事考えてんのよっ!? 何かを期待? そ、そんなわけないしっ! だってそれじゃ、私が女の子のことを……。
「ご期待に沿えなかったようで、申し訳ありませんでしたね?」
「うわあっ!」
気が付くと、私のすぐ後ろにでみ子ちゃんが立っていた。
彼女の後ろの壁には、エレベーターの穴が開いている。いつの間にか、彼女はトイレから帰って来ていたらしい。
「も、戻ってたのっ!?」
「不思議なことを言いますね。そりゃ戻りますよ。戻らない理由がないでしょう? だってここは、『研究者』の部屋なんですから。部屋の主の私が不在では、『亜世界』の機能に不全が生じてしまいます」
しれっとそんなことを言い放って、すたすたと部屋の中央にある椅子へと戻っていくでみ子ちゃん。私はさっきのことを思い出して、またちょっと腹がたってくる。
「って、ってゆうか! 一体私に何の用なの!? 私、でみ子ちゃんに『なるべく早く来い』って言われたから、こうやってエア様に会わないようにここに来たんだよっ!? だから、さっきみたいな変な事してる暇があったらさっさとその用事っていうのを……」
「用事?」
「え……」
そこで、彼女は45度に首を傾げて見せた。明らかに、私のことをバカにしている感じだ。
「一体何の事でしょうか? 私には意味不明です」
「は、はあ!?」私は思わず声を荒げる。「でみ子ちゃんこそ、何言ってるのよっ! 自分で言ったくせに忘れちゃうなんて……」
「忘れていません。元から知らないのです。だって、それはそうでしょう? 『3周目の私』が貴女と約束したことなんて、『4周目の私』が知るわけないじゃないですか?」
「あ」
そこで私も、やっと気が付いた。
「頭脳が不自由な貴女には理解しづらいかもしれませんが……私たちは毎周毎周、毎パターン毎パターン、記憶がリセットされているんです。だから、『3周目の私』が何を考えていたかなんて、もう誰にも分らない。当然、『私』にもね。まあ、『アガスティア』なら多分知っているでしょうけれど……『アガスティア』のメモリーに記録されている情報は誰にも理解することが出来ないということは、さすがの貴女でももう知っているでしょう?」
「あー……うん……」
今までさんざんでみ子ちゃんにバカにされてきたけど……今回ばかりは、私の方が間違っていた。そうだ、そりゃそうだよ……。
『3周目のでみ子ちゃん』に「次のパターンに会いに来い」って言われたからって、そんなことを『4周目のでみ子ちゃん』が知ってるわけがない。というか、そんな風に「次のパターン」のことを約束すること自体が、そもそもあり得ないことだったんだ。
ってことは……。
「私、またでみ子ちゃんにバカにされたってこと……? ああもう、ほんといい加減にしてよぉ……」
青すじをたててこぶしをプルプルと震わせるほど、そのときの私は怒りが溜まっていた。でも、『3周目のでみ子ちゃん』への怒りを目の前の『4周目のでみ子ちゃん』へぶつけるわけにもいかず。かといって、彼女も同じでみ子ちゃんなわけだから、全く無関係ってわけでもないわけで……。
爆発しそうなそんな複雑な思いを何とか抑えて、私はまわれ右をして、彼女に背を向けた。
「おや? どちらに?」
声をかけてくるでみ子ちゃんに、振り返らずに答える。
「いや……用がないんだったら、私、一旦エア様のとこに戻るよ。今頃あの人、私のことを捜してくれてるかもしれないし……」
本当なら、私としてもでみ子ちゃんにいろいろと聞きたいことはあったんだけど……。ちょっと今の精神状態じゃ無理っていうか。正直、でみ子ちゃんにムカつき過ぎちゃってて、まともに会話できそうもないって言うか。
多分私、ちょっと彼女に期待しちゃってたんだと思う。『3周目』に彼女が、「何か手を打たなければ」なんて言ってくれて……それで、今私たちが抱えている問題が一気に解決するんじゃないかって、期待しちゃってたんだと思う。
だから、その期待を裏切られて、彼女のことを信頼してた自分がバカみたいに思えて、余計に彼女のことがムカついちゃってたんだ。
「じゃあねー。でみ子ちゃん、またねー」
そして私は壁に手をかけて、エレベーターを起動するために行き先を言おうと……。
「地上……」
「待ってください」
でも、そこをでみ子ちゃんに呼び止められた。
「何よ……」っていうかこの娘、ホントにいつもいつも、こういう変なタイミングで話しかけてきて……絶対わざとやってるでしょ。「だから、もういい加減に……」
抑えたはずの怒りが抑えきれなくなってしまいそうで、軽く舌打ちなんかしながら振り返る。
すると、彼女が……。
「確かに『3周目の私』の言ったことは、『4周目の私』には分かりません。でも、だからと言って『今の私』が貴女に用がないということにはならない。だから、このまま貴女を行かせるわけにはいきません」
なんて言いながら、こっちを見ていたんだ。
「ま、またあ……そんなこと言って、どうせまた、何かバカにするようなことを……」
「実は私は今、貴女に話さなくてはいけないことがあるのです。そして貴女は、その私の話をどうしても聞かなければならない。だってこれは、現在のこの『亜世界』において最も重要な話なのですから……」
「最も重要って……そ、それって、まさか……」
「ええ。それはもちろん、姉様の殺害に関わること…………つまり、犯人の正体が分かったのです」
「え……」
私には、その言葉をすぐに信じることは出来なかった。
「ま、マジでー……?」
だって、今までさんざん彼女にバカにされてきて……。さっきだって、『3周目』のでみ子ちゃんにからかわれたことが判明したばっかりなのに、この上更にそんなあり得ないことを……。
でも、どういうわけだか私は、今の彼女は嘘なんかついてないような気がした。今回ばかりは冗談なんかじゃなく、彼女は本当に、エア様を殺す犯人を知っているって気がしたんだ。……なんとなくだけど。
「は、ははは……」
思わず、苦笑いを浮かべてしまう私。
だって、もしもそれが本当のことなのだとしたら……それって凄すぎるよ……。
今のでみ子ちゃんは、ほんの数十分前に私に会うまでは何も知らなかったはずなんだよ? 今、この『亜世界』で起きていることも、そもそもエア様が殺されてしまうってことさえも。なのに、私の適当な説明を聞いただけで、あっという間に「犯人の正体」にたどり着いちゃったの? そんなの、『研究者』っていうか、もはや『安楽椅子探偵』……いや、それ以上だよ。
「ほ、本当に……? 本当にでみ子ちゃんは……犯人の正体が分かっちゃったの?」
胸の中から嬉しさがこみあげてきて、声が震えてしまう。
だって、これで本当に犯人の正体が分かるなら……エア様はもう、死ななくてよくなるってことなんだもん。今まで何度やっても助けることのできなかったエア様を、私がやっと救うことが出来るってことなんだもん。今までのでみ子ちゃんへのムカつきが帳消しになってしまうくらいに、私は彼女のことを尊敬し始めていた。
「ですから、さっき『分かった』って言ったじゃないですか? 1度言っただけでは不満ですか? さすが、頭脳と胸が不足している方は物分かりが悪いですね? 不憫に思います」
「いやいや、胸は関係ないでしょうが……」
全く。アキちゃんとこの娘は、隙あらば私の貧乳をイジってくるな……。
でも、今はそんなことでいちいちムカついたりはしない。反論している間も惜しかった私は、彼女のイジりを適当に流して、話を進めてしまう。
「で? で? 犯人の正体って、誰? 私は誰を捕まえておけば、エア様は死なずに済むの?」
「それは……」
でみ子ちゃんの台詞が私の耳に届く時間さえも惜しむように、彼女に近づいていく私。そんな私を、でみ子ちゃんは白衣の袖に隠れた右手を突き出して制止した。
「そ、そ、それは……?」
「……」
でも、なぜかそれからでみ子ちゃんは黙ったままだった。痺れを切らして、私はすぐにまた彼女へとにじり寄る。
「ね、ねえ? でみ子ちゃん、早く教えてよ? ねえ? そんなにもったいぶらないでよ……ねえってば」
「もったいぶる……?」
「ねえ? でみ子ちゃん、誰が犯人なのかを……」
意味が分からない、というように少し首をかしげてから、でみ子ちゃんは「ああ」と何かに気付いた。
「そうか、失礼しました。これでは分かりませんでしたね?」
そう言って、彼女はこちらに突きだした右手の萌え袖を、少しだけまくって見せる。袖の中に隠れていたのは、真っ白ですべすべな彼女の手……というより、「ピンと伸ばした人差し指」だ。そして、その指が向いている方向は………。
「え……」
「どうしました? 知りたかったのでしょう? 犯人の正体。だから……これがその正体ですよ」
え? え? えーっとお……。
自分の後ろを振り返ってみる。もちろん、そこには誰もいない。
つまり今のでみ子ちゃんは間違いなく、「私の方を指さしている」ってことで……。
それからでみ子ちゃんは、自信に満ちた声でこう言った。
「姉様を殺す犯人、それは…………『エイリアン』の貴女です」




