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百合する亜世界召喚 ~Hello, A-World!~  作者: 紙月三角
chapter05. Alisa in A-priori World
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07

 そんなわけで。

 私はその後も、エア様に『亜世界』の色々なところを案内してもらった。彼女の残りの妹ちゃんたちも全員紹介してもらえたんだけど、その人たちもさっき会った3人に負けず劣らず、個性的な人たちばっかりで……。私はその日本当に、楽しい時を過ごすことが出来たんだ。

 っていうか……エア様が最初にちゃんと説明してくれなかったもんだから私、知った時に結構驚いちゃったのだけど。実は、今現在この『亜世界』に住んでいる妖精って、「エア様」と「その妹ちゃんたち」だけなんだそうだ。

 つまり、


 『管理者(アドミニストレーター)』のエア様。


 『建築家(アーキテクト)』のアキちゃん。


 『農業家(アグリカルチャリスト)』のアグリちゃん。


 『錬金術師(アルケミスト)』のけみ子ちゃん。

 それから、


 『研究者(アカデミック)』のでみ子ちゃん。


 『分析家(アナリスト)』のアナ。


 『芸術家(アーティスト)』のあーみん。


の7人が、この『妖精女の亜世界』に住んでいる妖精の全てだったんだ。

 それ以外のエルフや、エルフ以外の妖精ももともとはいたらしいんだけど、大昔にあった自然災害や食糧危機、種族間の抗争のせいでみんな絶滅してしまって、結局今はエア様たちだけになっちゃったんだって。

 エア様曰く、「システムというのはある程度機能を絞り込んだほうがよく回る」、「世界を回すうえで本当に必要な機能というのは、実はそれほど多くない」ってことらしくって……。

 この『亜世界』の生存者が今の人数になったのは、妹ちゃんたちが生まれてから200年後の、今から800年くらい前からだって話なんだけど。その800年間、エア様たちは今の7人で、何不自由することなく健康で楽しい生活を送ってこれたらしい。話のスケールが、デカいんだか小さいんだか……。

 あとそれから、『亜世界樹』の機能が完成したのも、その800年前くらいからって話らしかったけど……。その辺の話は、正直聞いてもよくわからなかった。



 それにしても、今日1日のことを思い返してみると、本当にいろんなことがあったと思う。

 私の気持ちは、いろんな人に会っていくうちにジェットコースターみたいにぐるぐると変わって、この『亜世界』に来たときと今じゃあ、私はもう別人みたいだ。

 最初、この『亜世界』にやってくることになったときの私はひどく落ち込んでいて、とても辛い気分だった。自分はこんなところに来ちゃいけない人間だ。自分みたいな人間は、きっとこの『亜世界』のみんなのことを傷付けてしまう。だから、手遅れになる前に私は自分で自分のことに始末をつけなくちゃいけない…………なんて、自暴自棄になっていた。

 でも、ここの『管理者』のエア様は、そんな私のことを優しく歓迎してくれた。私がここに来たことが喜ばしいって言ってくれて、妹ちゃんたちにも紹介してくれた。皆も私のことを歓迎してくれて……。あんなに散々言ってたアキちゃんだって、結局最後には私のために、ちゃんとした部屋を作ってくれたしね。

 この『亜世界』の皆のおかげで、今じゃあ私の落ち込んだ気持ちもだいぶ楽になっていた。

 私は、ここにいてもいいのかもしれない。もしかしたらこんな私でも、ここでだったら他人を傷つけずに生きていけるのかもしれないって、思うことが出来たんだ。


 だけど。

 私はそれから、すぐに思い知らされることになった。

 自分のそんな考えが、ただの甘い夢でしかなかったってことを。



   ※



 次の日。アキちゃんが作ってくれた立派なベッドの上で、私は久しぶりに気持ちのいい朝を迎えることが出来た。『亜世界樹』の幹をくりぬくように加工して作られたその部屋は、まるで新築の家のような、木のいい香りがしている。木組みの窓の外では、可愛らしい小鳥たちが枝に留まっている姿が見えて、モーニングコール代わりの楽し気な歌まで聞こえてくる。

 暑くも寒くもない、ちょうどいい気温と湿度。窓から差し込む柔らかい光が、照明設備のない室内に射し込んでいて、その反射光が私の体をほのかに照らしている。まるで、窓際に女の人が立っているところを描いた有名な西洋絵画の中に迷い込んだみたいだ。

 誰にも何も強制されることのない、安らかな朝。


 そんな雰囲気に浸るように、目を開けてからしばらくはぼうっとしていた私。でも、それからようやくベッドから重い腰を上げて、活動を始める。隣の部屋にいるエア様に、朝の挨拶をしようと思ったんだ。

 そして部屋を出て、エア様の部屋に入って……そこで、彼女が口から血を流して死んでいるのを発見した。


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