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第八話
「ところで、これからどうするつもりなのかな?いや、僕の見積もりでは、大体2週間もあればすっかり完治する予定なんだ。記憶のことは置いておいてね。それまではここの患者ということになるから、ここにいてもらうよ」
とニコニコした顔で言い、私は「はぁ……」と曖昧に返すことしかできなかった。確かに治ったあとの事は考えてなかった。
もし記憶が戻って、本来在るべき所へ戻れるならそうしたい気もするけれど、戻らなかった事も考えると、早々に返事をするのは難しかった。
即決で「じゃあ治ったら出ていきますね」とは言えない。今のところ行くあても、辿り着く場所もないのだから。
私は「……すみません、もう少し考えてからでもいいですか?」と申し訳なさそうに(本当に申し訳ない)言うと「それもそうだね。少しの間だけれど、ゆっくりしていくといい。よろしくね」と承諾してくれた。