第四話
そろそろ私について自己紹介でもしておこうかなって思う。もし誰かがこの本を手に取って、目を通した時、私というシルエットが思い浮かばないままで、お話が進んでしまうし、主人公が(自分の事をこう言うのは変な感じがするけれど)どんなキャラなのか知っておいてもらうと、興味が出てくるんじゃないかなって。
その逆に、なにも伝えないまま進めて、主人公を具体的にしないままでも、いくつもの私が見えて考えられて、それはそれで面白いんじゃないかなって思う。そういう心理学があるらしいけれど、今は名前が出てこない。
それなりにもったいぶって引き伸ばした自己紹介だけれど、本当に申し訳ないことに自己について紹介できることは限られている。
というのも、まず私はこの世界樹にどうやって来たのかを思い出せない。思い出せないと言うより覚えていない、知らないと言った方が正しいかもしれない。
紹介出来ない事を書いていても話が進まないので、進むことを書いていこうと思う。
まずは世界樹について。
どれくらい広いのかはわからない。
…………いや、初っ端からわからないで始めてしまって本当に申し訳ないのだけれど、世界樹について知られている事の方が少ないと言われているらしいので、とりあえず私は世界樹についてわからない。
ということをわかってもらえるといいかもしれない。
続けます。
世界樹の下には世界がある。
私は行ったことがないのだけれど、というか見たこともない。ぶっちゃけ見えない。
家が世界樹の外側に位置しているので、見通しはいいはずなのだけれど、下はただただ白い雲が広くどこまでも続いているだけで、これといってなにかが見えるわけではない。
書物によると、下の世界は、この世界樹に負けず劣らず広く広大な大地が広がっていて、海という大量の水が流れていたり、山脈という高く積もった土の塊があるらしい。
見たことはないけれど。
あと紹介できそうな事といえば、住んでいる大半は竜の一族で、その中に、ほんの人握りだけペットや家畜として、ヒューマンという種族がいることくらいかもしれない。
大雑把にざっくりとしか説明が出来なかったけれど、今のところは、世界樹について、そこんとこだけ頭に入れておいて頂けるといいかもしれない。