第三話
朝食を終えて、片付けを一通りした後、シャキシャキと音を立てて、ハサミで新聞から記事を切り取り、今日の分を整理する。いつも通り机の半分程度の量になった。
ふむ。と顎に手を当てて、切り取った記事を立って眺める。
これは最近始めたのだけれど、ただ切って貼るだけでは、マンネリ化しそうだと思ったので(飽きたという訳ではなく、なんとなくである)その日切り取った記事に、順序を付けることにした。基準は決めずに、その日の朝に読んだ中で、一番にコレだな、と感じたものから、順に三つ程度振り分ける。これがなかなか楽しくて、ぜひオススメしたい。
うーん、と首をひねって唸ったり、腰に手を当てたりしながら記事を選んでいるけれど、一番はすでに決めていて、手に持っていた。それでも机の周りをぐるっと歩きながら考えて
「これと、これかな」
とひょいひょいと記事を拾い、少し離れた所に置いておいた。順位のつけられなかった記事は、袋に入れて、切り取った新聞の上に置いて、昨日の分に重ねて置いた。部屋の隅にある新聞紙が材料のオブジェが、自分の腰あたりまで高く出来上がっている。そろそろ処分を考えないといけない。
さて、と踵を返し、机に向かう。
ペタペタと一番に決めた記事を貼る。この日は、とある竜が子どもを産んだことを取り上げた記事にした。ページの半分が子どもの写真で埋まっていて、印象が強かったことが決め手になっている。
という事だけではなく、竜というのは、長寿な生き物で、子どもが産まれたなんて事は半世紀に一度あるかないかくらい、珍しい出来事ということが一番かもしれない。新しい生命というのも、神秘的で素晴らしいと思うし。
切り貼りが終わってノートを本棚に戻し、一息ついた頃には、太陽はすっかり目覚めていて、暖かい陽を部屋に送り込んでくれていた。
だいたいこの時間になったあたりに、扉を叩く方が見えるのだけれど、今日はまだ来ないようなので、読み物でもして、のんびり待とうと、もう一度本棚に足を向けた。ところでコンコンコンと、ノックと声が聞こえた。
「竜医さーん、いますかー」
はーい、と返事をしながら扉へ歩き、手を掛ける。
お待たせいたしました。
私の竜医としての一日が始まります。